見出し画像

シニアマイスター 佐野勇

シニアマイスターになるための「温泉に関するレポート」です。

『温泉スタンプラリー』が、別府八湯温泉道の特徴と温泉の魅力発信にどう貢献しているのか整理してみたいと思います。
                   シニアマイスター 佐野勇

【全国の様々な温泉スタンプラリー】
 日本の温泉地。昭和の時代は、大型観光バスで大挙して温泉旅館、ホテルに泊まり宴会を楽しむ団体予約客で盛況していました。
現在、平成から令和の時代、団体客は一部インバウンドの入り込みで活況を呈するものの実質個人客にシフトし、旅行取扱窓口からインターネットによる個人注文が大勢を占めています。温泉地に拘りを持った、いわゆる有名温泉地、歴史、景観、温泉の質、宿を楽しむ、料理を楽しむ、味わう嗜好となり、「こだわり」趣味性の高い趣であるところに変わってきました。シャッター街の閑古鳥、廃墟と化したホテルが寂しい温泉地、一方、強烈な個性と温泉地挙げての企画でおもてなし活況をいまだに呈しているところもあります。
温泉スタンプラリー。これだけで温泉地は活況となるとは思えない。少し調べてみると、九州から北海道まで同様な企画が存在します。

『別府八湯温泉道』別府八湯と言われる、浜脇、別府、亀川、紫石、鉄輪、明礬、堀田、観海寺の八地区。この八湯を紹介するガイドブック、温泉本(500円)というものがあり、別府市内の書店、コンビニで購入できます。
別府には約2300の源泉、約150湯が紹介されています。その中から88の地元湯、温泉旅館、ホテルなど88箇所湯めぐりして、スタンプを収集し、別府市役所観光協会内の別府八湯道事務局に申請すると(8湯毎600円、88湯達成では2000円)、『名人』などの称号を頂けるお遊び企画なのですが、はまる人達続出。この88は、四国のお遍路さんの88巡礼から来ているもので「修行」に例えています。温泉は楽しむもの、のんびりするもの、また健康につなげるものと捉えられがちですが、「修行」といった観点で人の気持ちを奮い立たせるものです。湯遍路と呼び、湯の道を究める、そして、ただのスタンプ帳ではない、「スパポート」である。
もう、いちいちネーミングがうまい。耳に残りワクワクする仕掛け。参加するにあたり、まず温泉スタンプ帳を買うことから始まります。別府駅観光案内所、事務局などで購入します(100円)このスパポート(語源はパスポート)12×9㎝程度の小さな赤いスタンプ帳。これは、どこに売っているのと、問合せが多いとのことなので、温泉本とセットで販売がお客様にとって最善ではないでしょうか。事務局にてご検討いただきたいです。
さて、88カ所を収集できるパスポートサイズのスタンプ帳は全国を見渡しても『別府八湯温泉道』と九州温泉道のみ。他の地区で存在したらぜひとも教えていただきたい。希少なのです。現在はスマホでもスタンプ収集ができます。簡単にまとめますと、スタンプラリーのシステム、ネーミング、お客さんの好奇心、達成感をくすぐる名人認定制度など湯めぐりを心から楽しめる要素が詰まっているのです。これは、全国に波及するであろうし、実際にこれを手本にほかの温泉地で取り組まれています。更にリピーターが必ず発生するわけです。1日で88湯は物理的に無理ですから。何度も何度も別府に訪れなくては88湯目指す湯遍路さんは満願成就しないわけです。その何度でも訪れたくなる魅力がそもそも別府にはあります。
なんと言っても「湯けむり」の景観と山に海に、そして街と田舎が共存し、若い世代からお年寄りまで楽しめ癒される、そんな温泉地です。それを更に盛り上げるこのスタンプラリーの企画は全国の先頭を走る素晴らしいものです。実体験した、88湯達成した人は、令和2年9月時点で9409代までいるそうです。10000人(第10000代名人)まであと600人弱です。事務局に問合せたところ日本中47全ての都道府県に名人がいるとのことです。スタートは、2001年3月25日から始まりました。2020まですでに19年間も続くスタンプラリーが他にあるでしょうか。これは凄いことです。全都道府県に88湯名人が存在するのです。こんな全国に波及するスタンプラリーは他にないでしょう。全都道府県に、強烈な別府ファンがいることの証明です。

更にこの全国に在住する名人がインフルエンサーになっているのは間違いないことです。温泉ファンは、温泉マイスターその他温泉ソムリエ、温泉観光実践士、バルネオスペシャリスト、温泉観光士、などの講習・勉強会など、またオフ会などで情報を共有し発信しています。最大なのがこの別府の発信力ですね。個性に富んだSNSで発信される内容は、温泉の場所、営業時間、料金、泉質、などの特徴から、個別に湯めぐりマップを作成される人がいますし、アテンド情報をたくさん発信しています。しかし、単にネット検索した場合は、トップには旅行運営予約サイトがずらりと並び個人の発信はまず登場しません。圧倒的に旅行サイトが占有しています。コアな情報は、絞り込んで個人の検索次第ではありますが、別府の情報量は圧倒的です。
百聞は一見に如かず。例えばYou Tubeで「別府温泉」と検索すれば別府のPRに圧倒されます。別府市の『別府温泉おもてなし再開』全CMフルバージョンなどご覧いただくと、本当に街を挙げておもてなしの気持ちが熱く伝わってきます。こんな一生懸命な温泉地他にないですね。別府温泉に行きたくなります。
さて、同様な湯めぐりスタンプ帳は、3つから8つのスタンプ帳が多いのです。というかスタンプ帳ではなく、「スタンプ台紙」です。こんな小さな、“ちっちゃな”スタンプ帳は日本中周っても別府のみです。小さいから無くしそうです、だから大切にします、それによって別府への思いは大切にされるわけです。九州全土をめぐる『九州温泉道』これは、大分別府に収まらず、九州全土で88湯を巡り、「泉人」に認定されるものでこちらもすでに、第2236代まで泉人に認定されています。

 石川県は、能登半島の最奥の地、『珠洲温泉銭湯道』は、スタンプ台紙に8カ所で1巡。これで「名人」に認定され、これを11巡(枚)しますと、「銘人」。そして88巡まで達成すると「永世カリスマ」と認定されます。和歌山県、奈良県、大阪府をエリアとする紀伊半島、熊野古道、修験者の地から因んで、『紀泉温泉修験道』では、同じくスタンプ台紙に8カ所のスタンプで1巡。名人。これを11巡(枚)して88となり『先達』と命名されます。北海道の『ニセコ温泉湯めぐり名人』では、これまた同じくスタンプ台紙に8カ所のスタンプで初段名人、二段名人となっていきます。
東京、こんな大都会でも『東京銭湯1010』約500の銭湯のうち同様に26銭湯達成で風呂認定、88銭湯達成で「銭湯湯遍路達成者」として認定制度があり多くの人が都会でも銭湯スタンプラリーを楽しんでいます。
草津温泉では、湯もみを「熱乃湯」で1回体験するとスタンプを押印していただけます。5回この湯もみを体験すると『免許皆伝』として認定されます。これもお客さんのハートをつかむうれしい認定制度です。さらに大型の草温バスタオルがいただけてうれしい限りです。温泉話を別府に戻しますと、【温泉スタンプラリー】でスタンプを集めることは、温泉を巡りひとつひとつ味わうことなのです。また、88カ所制覇してもそれはまだ道半ば。88カ所巡りを100回以上されている達人も存在します。これらは、その個人の自己満足にとどまらず、それを聞いてみて、同じ志で挑戦者が次から次に発生するのです。これにより、大分県別府にとどまらず、温泉マニアの中では、九州から北海道まで熱烈なファンがいます。その方々がまたインフルエンサーとなり別府なら別府の強力な説得力ある宣伝マンになります。ただのスタンプ集めと侮るなかれ。企画者のアイデアで、88巡毎に温泉マニアハートをくすぐる名称が与えられます。名人から永世名人などうまい仕掛けです。所詮、お遊び企画ですが、この企画は温泉地の全国への宣伝、経済効果は計り知れません。この、名称に格付けされ、マニアは更に熱くなります。これが、温泉地の特徴と温泉の魅力発信の原動力になっています。誰かがやってくれる、ではなく、コアなファンたちが魅力をあらゆる情報発信をしています。これが、別府のスタンプラリーからつながる大きな成果となっています。お金を払いスタンプ帳を買い、お金を払って湯めぐりを、お金を払って旅館、ホテルに泊まり、お金を払ってお土産を買い、飲食店で色々、名産のとり天などたくさん購入していただく。その後は、SNSなどで情報発信。なんていい人たち。この様に別府八湯温泉道スタンプラリーの効果は計り知れません。温泉1カ所5百円としましょう。88×500は、44000円。宿泊、交通機関、昼食、お土産など合算すればものすごい経済効果です。単純モデルとして、私の場合、愛知から新幹線往復約35000円、宿1泊としても15000円、温泉巡り代で一〇カ所巡る場合とすると5000円。昼食、お土産など10000円、合算65000円程度はお金を投じています。88ならこれをあと8から9回、およそ60万円程度は市中にお金が回ります。仮に今、9400人を単純に掛けますと、61億円程度が市中に経済効果をもたらしています。19年間で割れば、年3億円のお金が市中に回っています。これは、スタンプラリーに参加している人だけです。参加施設150湯として、年200万程度が1施設に落ちている計算になります。
 リピートしたくなる仕掛け、また根本的な温泉地の魅力、そこに住む住民の温泉愛、もう笑えるネーミングを考える“湯快な人たち”、さらに温泉を学ぶ、これが楽しいと思える企画。今まで温泉を学ぶという概念はそうはないと思いますが、別府は温泉を学ぶことができる、そうです。『温泉マイスター』などの勉強会、著名な先生から直接お話が聞けるのです。こんな素晴らしいことはない。この講座を聞き、スタンプ収集のインフルエンサーたちがまた発信する。素晴らしいコンビネーションです。スタンプで楽しみ、温泉を学び、理想の温泉地であると思います。だから、この別府モデルを先ほどの他の地域の温泉スタンプラリーはみな手本にしています。具体的には、「紀泉温泉修験道温泉スタンプ帳」の中に、紀泉温泉修験道の心得に・・・別府八湯温泉道をモデルに・・・と明記されています。

 紀泉温泉修験道、約600代名人に達し、修験道ファンが増えスタンプ効果は明らかです。お客さんは喜んでスタンプ集め、名人認定制度を楽しんでいるのです。
珠洲温泉銭湯道も同様ですが第281代名人まで、ここは少し地理的にも交通アクセスもなかなか厳しいところですが、地道に地域が頑張っています。交通拠点の金沢駅から鉄道はなく、マイカー、レンタカー、バスなど2時間近くかかります。スタンプを起点に参加温泉施設、その他の飲食店、お土産屋、喫茶店などの施設も参加し地域を知ってもらうスタンプラリーになっています。日本中のスタンプリーはもっとあると思いますが、先例を真似て地域をどんどん盛り上げられるのです。温泉スタンプラリー。見くびらないでください。地域の皆さんが、熱心になれば、特効薬ではないですが必ず効いてきます。別府を見てください。そこにはスタンプをこよなく愛する人たちがいます。

 私は、全国のスタンプラリーの一角しか知らないかもしれませんが、別府88湯の2巡目、九州温泉道の2巡目、珠洲温泉銭湯道の46巡目、紀泉温泉修験道の13巡目、北海道ニセコ湯めぐり名人の4巡目、東京銭湯の62湯まで、草津温泉熱乃湯、湯もみ5回で免許皆伝、「那須塩原温泉の湯めぐり名人」は1巡、湯めぐり達成者に湯桶、缶バッチなど記念商品に認定称号が記載されています。「日本秘湯会の宿」は10カ所宿泊スタンプを集めると1カ所宿泊券を頂けます。「湯めぐりスタンプラリーゆらん」、「三瓶山温泉郷スタンプラリー」、「信州秘湯会」、などは温泉横綱、温泉親方、泉人などの認定証が頂けます。現地に赴き、湯を楽しみ、地域の活性化も意識して旅を楽しみ、その根底は「温泉スタンプラリー」なのです。これだけの数を湯めぐりした人しか見えない世界があります。さて、ここまで自分の実践、調査、担当事務局への聞き取りにより「別紙」の「温泉スタンプラリー特徴比較まとめ」をしたことで、いろいろ特徴が見えてきたので、紹介します。
① 『事務局』
「別紙」の事務局欄をご覧いただくと、市役所、一般社団法人、道の駅、温泉道事務局、民間温泉旅館、民間企画会社、浴場組合、観光協会、旅館協同組合と様々な主体が見えてきました。同じスタンプラリーでも事務局は様々です。別府は市役所観光協会と一般的なところです。
② 『スタンプ帳販売カ所』
スタンプ帳を手に入れなければ始まりません。道の駅で販売、参加施設での販売、書店、観光協会、観光施設、ビジターセンターなどで販売され、これも様々です。別府の特徴は、JR別府駅構内観光案内所と別府八湯温泉道事務局などとなっており、意外にも販売網窓口が狭いです。どこでも買える感がないのは残念です。
③ 『押印』
全国的には、受付窓口、番台で押印いただきます。別府は、おおらかなところがあり、窓口あるいは無人のところもあります(地元湯、共同湯)
④ 『スタンプラリー専用ガイド本』
もう、これは、別府が群を抜いて素晴らしいガイドブックがあります。温泉本。他の地域では、温泉施設の個別紹介冊子、あるいは簡単な冊子、パンフレット、チラシ程度です。
⑤ 『スタンプ帳・押印数』
全国的には、88個も湯めぐりスタンプを押せるような温泉地はなく、だいたい1枚に8~20カ所程度のスタンプ台紙が多いです。温泉県大分別府だからこそ一冊に88カ所も押せるスタンプ帳は、珍しいものです。その名も「スパポート」赤くて、小さくて、可愛いスタンプ帳。
⑥ 『認定制度』
これも全国的に、様々な認定名称があり楽しくなります。圧倒的には、温泉「名人」という名称認定書発行が多いです。これは、皆さんが、お客さんが最も喜ぶ、頑張った証になるものです。他の地域では、温泉カリスマとか、泉人とか、先達とか湯遍路達成者など地域にちなんだ名称がお客さんの心をゆすります。
⑦ 『認定料金』
これは、前述した認定制度の証書および記念商品等の発行手続き費用です。基本的には8カ所巡って、2000円程度支払い認定され、これを8湯毎繰り返し88湯まで目指すパターンが多いようです。一方、岐阜県の民間企画会社が実施する「天然温泉シールラリーゆらん」は、認定費用は一切ありません。この辺は、民間会社の考え方でしょうか、一年毎、シールを集めて、規定数をクリアして申請すれば、温泉横綱などに認定されます。また3カ所1口で豪華賞品が当たる公開抽選会が開催されています。              
⑧ 『対象施設数』
これは、温泉地の規模によりますから、比較というよりは単純な数値となります。絶対値として、東京銭湯は令和2年末現在、500軒程度で温泉と違い人工たるものです。別府は、この一つのエリアで150程度ありますから温泉地の中では群を抜いています。
⑨ 『スタンプラリーの温泉の特徴』
今まで述べてきたことと重複しますが、別府は別府八湯地区に絞った湯めぐりであり、珠洲温泉銭湯道も同様に珠洲市内に絞った湯めぐりです。一方、九州八十八湯めぐり、紀泉温泉修験道、ゆらん、などの様に、いくつかの府県を跨ぐもの、九州全土のような広範囲の湯めぐりもあり、地域の連携、昔からの繋がりのエリアで取り組んでいるものがあります。特徴的なのは、草津の熱之湯の湯もみ体験を五回すると免許皆伝するというのもおもしろいものです。 
⑩ 『全国波及度』           
これは、もう圧倒的に別府が凄いのです。八十八湯達成して名人ですが、この八十八を達成した人、全国47都道府県全てにいるそうです。こんな記録的なスタンプラリーが全国に轟いているものは他にないでしょう。べっぷ、圧勝です。他の地域では、その開催地区の方々がおおむねシェアを占めています。北海道ニセコ湯めぐり名人は、名人18名は、全て北海道の方と聞いています。
⑪ 『地域貢献度』
これについても、別府がスタンプラリーをきっかけに非常に地域貢献につながっています。
名人から名人会が発足し、NPO法人としてしっかり地域に根差してきました。地域の温泉の掃除、お祭り等のイベント参加など地域と密接な貢献がなされています。その他の地域では、まだ地域貢献までは至ってないかもしれませんが、スタンプラリーがきっかけで、各地域の名人たちが、地域の主催者とともに情報発信をしています。とても大きな宣伝マンがいるのです。
⑫ 『スタンプラリー継続年数』
この継続年数、最長は、これも別府が圧倒的です。2001.3.25から何と、19年間継続しています。温泉スタンプラリーで19年間を超えるところがほかにあるでしょうか。すごい数字です。これは、地元の協力、施設、旅館、ホテルの皆様、主催者、そしてお客さんの気持ちが同じ方向でないと続かないと思います。素晴らしい地域のバロメーターではないでしょうか。他の地域で1年、2年で終わってしまうのが悪いわけではないと思いますが何か、連携がうまくいかないのかもしれません。草津温泉の場合ですが、湯もみという伝統があり、それを伝承、体験していただく熱之湯では、もう30年以上前からスタンプ5回で「免許皆伝」をプレゼントしていますが、事務局でも正確にはわからないほど昔からスタンプは取り組まれています。

 ここまで私の視点、私の言葉で「別府八湯温泉道スタンプラリー」の特徴、他の事例との比較など整理してみました。
まだまだ、温泉の道は楽しみながら学ぶこと、知りたいことがたくさんあります。温泉の道、温泉道、スタンプラリーを興味深く極めていきたいと思います。スタンプラリーは今後の発展の一端を必ず担う役割を果たしていくと思います。じっくり地域、主催者、お客さんの3者が上手く共有できると温泉地は素晴らしい地域になると思います。
全国の温泉地が別府を参考にするのも、うなずけると思います。
またどこかの温泉地でスタンプラリーはじまらないかな。温泉スタンプラリー大好きです。

【佐野勇の自己紹介・シニア・マイスターに挑戦した動機など】

【全国のスタンプラリーの比較】
http://www.beppumuseum.jp/senior/sanoisamu_2.pdf





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?