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大分で見る日本列島形成史

(佐伯-津久見-臼杵-佐賀関-国東)コース
2023年11月11日(土)から

                  温泉マイスター 佐藤由理

【Stop 2: 秩父帯 網代島周辺】
網代島は大分県津久見市日代地区の50メートルほど沖合、干潮時には陸地につながる、周囲約400メートルの小さな無人島です
今回のバスツアーでの網代島の見どころポイントは大きく2つです。
①網代島では地球の歴史の中で1番大きな生物大量絶滅から環境が回復していく状況を記録していると言われている岩石を観察できる 
②網代島のチャートからは約2億4000万年前に地球に降ってきた「宇宙塵」が見つかっていて、その宇宙塵は形がほぼ完全なものとしては現在のところ世界最古と言われている。

☆網代島のチャートと付加体堆積物

図 1:付加体の仕組み(網代島パンフレットより)

 チャートは、シリカ(二酸化ケイ素)の殻を持つ放散虫というプランクトンの死骸が深海底で降り積もってできたもので、主成分はほぼガラスと同じです。非常に硬く、石包丁や火打ち石として使われていたこともあります。チャートは4000~5000mの深海で堆積するため堆積速度は非常に遅く、1000年間で数ミリと言われています。長い時間をかけて堆積したチャートは、海洋プレートに乗ってゆっくり移動してきて、大陸プレートにぶつかってはぎ取られ、大陸の端にくっつきます。これを付加体堆積物と呼びます。チャートの他に、ハワイのような海底火山やその周りにできるサンゴ礁も同じように移動してきます。津久見のセメント鉱山、秋吉台や平尾台の石灰岩はこのようなサンゴ礁からできたものです。

ペルム紀末の大量絶滅からの回復の記録
 地球の歴史ではこれまで5回生物の大量絶滅があったと言われています。 よく知られているのは5回目の隕石による恐竜の絶滅です しかし最も大きな大量絶滅はペルム紀の末に起こったとされていて、網代島のチャートはその絶滅直後の約2億5000万年前~2億年前の「三畳紀」に堆積したものです。

図 2:大量絶滅はいつ起きたか(網代島説明板より)

 大量絶滅の影響で多量に供給された生物起源の有機物は黒色頁岩になりました。このような黒い堆積物は海中の酸素が不足し微生物が有機物を分解できなかった証拠と言われています。島の鳥居の少し手前で数メートルの黒色頁岩の塊が観察されます。そこから海の方向に進むとチャートの色が最初は黒から、緑、紫、赤へと変化します。この色の変化が、時間が経つにつれ海中で生物活動が復活し酸素が増えて環境が回復した記録だと言われています(網代島では地層は陸側が古く海に向かって新しくなります)。
チャートの赤色は、海中の鉄分と酸素が反応して酸化鉄になったものです。
この大量絶滅は温暖化が原因の一つと考えられていて、現在の地球環境について考える上でも重要な地層です。

黒色頁岩
黒色のチャート
紫・赤色チャート

☆宇宙からのからの飛来物の記録:宇宙塵と巨大隕石衝突の記録(オスミウム)
 宇宙から降ってくる隕石のうち、直径が1ミリ以下のものを宇宙塵と呼びます。隕石は地球の大気圏に入ると燃えて流れ星や火球などと呼ばれます。大きな隕石は落下後に発見されて話題になりますが、小さな宇宙塵は肉眼では見つけることはできません。そんな小さな宇宙塵が保存されるのが堆積速度の遅いチャートです。網代島のチャートからは2億4000万年前の宇宙塵がほぼ完全な形で約300個も発見されており、完全な形で見つかっている宇宙塵としては今のところ世界最古とのことです。
 また、網代島のそばの地層からは、およそ2億1500万年前に、直径3.3~7.8kmの巨大隕石が地球に衝突した証拠が発見されたと2013年に発表されました。これはオスミウムという元素の同位体分析によって判明しました。この隕石は、三畳紀末の大量絶滅に関係するのではないかともいわれています。同時期に形成された巨大なクレーターとしては、カナダ・ケベック州の直径100kmのマニクアガンクレーターがあります。
 地球への隕石の落下の時期や量を研究することは、地球や太陽系の生成の研究をするうえでも重要です。網代島はそのための重要な研究フィールドです。

<参考資料>
2億4000万年前の流れ星のカケラが眠る網代島で、太古の地球を感じる旅へ | edit Oita エディット大分 (pref.oita.jp)

網代島|津久見市観光協会のホームページへようこそ!! (tsukumiryoku.com) 

2億1500万年前の衝突は直径が最大で8km弱の超巨大隕石だった - 九大など | TECH+(テックプラス) (mynavi.jp)



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