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CURSEDとかいう謎のゲームシリーズにはまった話

出会い

何かゲームをやりたい気分だけど、わざわざ高い金をかけるのもなぁ…と考え一銭も出さずにプレイできるゲームをSteamで探していた。(貧乏)

その中で特にワイの目を引いたゲームがこちら。

うーん、この2000年代初頭で過疎ってしまった多分クソゲー寄りのフラッシュゲーム感。…良いですねえ。(ド失礼)

幾多ものクリエイター達が「金をとれるクオリティかどうか」を気にせずに数多くのゲームを大量に公開していたフラッシュ黄金期が青春だったおじさんにとってはノスタルジアがビンビンに刺激されるゲームである。

タダより安い物はない。こういうのは適当な気持ちで気軽に始められるし、適当な気持ちで辞めても罪悪感が残らないので、プレイしようとダウンロードしたところ

…なんとこのゲーム、Steam上で続編があることが確認できる。

しかも二作あり、「CURSED 2」に関しては2019年公開、最新作の「CURSED 3」に関しては2022年公開と、超最近の話である。直近で作られた二作については超美麗なグラフィックなのかと思いきや…。

そんなこともなさそう…。

日本ではそもそもプレイしている人がいないようだが、海外ではどうやら極一部でカルト的人気を博している不思議なゲームなようだ。こんな古臭い見た目のゲームなのに(ド失礼)一体どのようにして三作品も作られるのに至ったのか…。

ここから謎のCURSED沼にずぶずぶハマっていくこととなる。

当然と言えば当然だが、日本向けにローカライズはされておらず全編英語なのであしからず(???)

すべてのはじまり「CURSED」

Disaster Squadという小規模のチーム(というかたった一人…?)が作り上げた本作。Flash Playerが「まだ」廃れていなかった2009年にかつてフラッシュゲームとして公開された。

本作は、画面に表示されているものを片っ端からクリックして、アイテムを探したり、調べたり、エリアを移動したりする所謂「ポイント・アンド・クリック」型のホラーアドベンチャーゲーム。ホラーを題材にしたフラッシュゲームあるあるな感じのフォーマットである。

「THE HOUSE」とか「EXMORTIS」とかもそうだったよね…(懐古厨)

謎解きや探索だけではなく、途中で武器や魔法を利用してモンスターと戦う戦闘パートなどもあり、アクションゲーム的側面もある。

ここまでいくつも挙げているスクリーンショットからわかるように、グラフィックはPCに初期で入っているペイントツールで描かれたような荒いタッチで統一されている。レトロゲームリスペクトと呼ぶか手抜きと呼ぶか難しいライン。(ド失礼)しかし、そのタッチで描かれるグロテスクな画はとても凝っており、一度目にしたら二度と見たくなくなる何とも言えない気持ち悪さがある。

大いに褒めるべき点としてゲーム内で使用されている楽曲や効果音があり、個人のゲーム制作者が作曲したとは思えない至高のクオリティとなっている。…それもそのはず、使用されている曲や音の大半は有名な大作ゲームから盗用しているからである。(手放しに褒められない)

プレイしている最中に「これ、あのゲームの効果音やんwww」「これ、あのゲームのこのシーンで流れている奴やんwww」と突っ込みながら楽しむことが出来る。(無料公開で収益がないからなんとかsteamから外されずに済んでいるのかしら…。)

ストーリー

舞台は都会の喧騒からかけ離れた寂れた小さな町。

ジェニファーという少女が町はずれにある廃れた炭鉱に入ったきり、帰って来なくなった為、彼女の父親が主人公に捜索を依頼するところから始まる。

酒場の壁に立てかけてあった剣と盾を携え、主人公は意気揚々と炭鉱へと入っていったが、そこにはこの世のものとは思えない怪物や悪霊たちが蔓延っており、彼を殺そうと襲い掛かってくる。

命の危機にさらされながらも、持ち込んだ武器と炭鉱内にあるアイテムを駆使して探索を進めていくが、道中彼はジェニファーの亡骸を目にしてしまう。周辺は血の海で最早救いようがない状態であった。

更に探索を進めると、まるで炭鉱とは思えない豪華な装飾が施された場所にたどり着く。最近まで読まれていたであろう書物を読み進めたところ、ここが邪神を信奉するカルト教団の隠れ家だったということが判明。

異形の存在、ジェニファーの死、カルト教団。数々の奇妙な体験に主人公は恐れ慄く。

果たして主人公はこの呪われた炭鉱から脱出できるのか…?

総評

「往年のホラー系フラッシュゲームってこういう荒削りな感じだったよなー!うんうん懐かしい!」というノスタルジアを感じるゲーム。ただ、2009年公開であることを考えると、当時の基準でもどこか古臭い感じ。

ホラーフラッシュゲームあるあるだとは思うが、理不尽な初見殺しが多く、何度もジャンプスケア要素のある死亡シーンを目にして、トライアンドエラーを繰り返しながら攻略の糸口を見つけるタイプのゲームなので、徐々にうんざりしてしまう側面がどうしてもある。

また、他のポイント・アンド・クリック型ゲームにも言えることだが、システムそのものと「戦闘」という概念があまり合致しない。その為「この要素いる?」と思わされてしまう。

こういう荒削りな類のゲームは個人的には好物なのだが、ノスタルジアだけで乗り切るしかなく、純粋にゲームとして楽しめるかどうかは人による。ただ、謎解きが得意なプレイヤーであれば約1時間くらいでクリア可能なので、暇つぶしにどうぞという感じ。

そんなにコケにしておいてハマる要素ってのはあるんか…?と、言われるかもしれないが、パッとしない出来のように思える「初代」を終えた上で続編をプレイすることで、CURSEDシリーズは完成されるのだ。

…と個人的には思っている。






前作から怒涛の進化を遂げた続編「CURSED2」

初代CURSEDは2009年にDisaster Squadによって公開されたストーリーやゲームシステムそのものに粗が見られる「ポイント・アンド・クリック型アドベンチャーホラーゲーム」であり、古臭くもどこか懐かしい雰囲気のあるゲームだった。

CURSED 2はそんな前作からなんと10年を経た2019年に公開された作品である。なお、前作同様、フラッシュゲームとしてリリースされている本作だが、公開の翌年にFlashPlayerが廃止されることとなったのは言うまでもない。

基本的にコンセプトは前作と同じだが、UI全般がより洗練されていて、数多くの要素がブラッシュアップされている。

まず、移動に関しては炭鉱内というエリアに制限されていた初代から一転、複数の小エリアに分かれた広大な町を車で移動するシステムが採用され、マップが大幅に広がった印象。

戦闘パートについてはWSADキーで敵の攻撃を避ける要素が追加され、よりアクション的な側面が強化された。また、戦闘を終えると経験値が得られ、各種ステータスに割り振って主人公キャラを成長させることが出来るという要素も追加されている。

武器としては初期から所持しているハンマーに拳銃やショットガン、チェーンソーなどが挙げられ、経験値の振り方次第ではマップ各所に散りばめられた巻物を装備して攻撃魔法も使用することが出来る。戦い方にバリエーションが生まれた。

相変わらずのペイントクオリティグラフィックではあるが、初代よりかは描写を頑張っているし、戦闘が増えたことから必然的に気持ち悪いヴィジュアルの敵がわんさか増えた。

初代CURSEDではファミコン以前のコンソールでリリースされたゲームのサウンドトラックが主に使われていたが、今作ではPCエンジン、メガドライブ、DSといった2000年以降に出たゲーム機の楽曲もふんだんに使われている。盗用は相変わらずだ(?)

ストーリーに関しては前作と同じ世界観上での正統続編として、よりディテールが語られている。また、ゲームの進め方次第で結末が変わるマルチエンディング制が採用されており、リプレイ性がある。

ストーリー

主人公は初代CURSEDで舞台となっていた小さな町出身の青年、この天開司みたいな(?)見た目をした「ランダル」

炭鉱の中で失踪してしまったと思われた親友のジェニファーが無事に戻ってきたあの事件の後、彼は長らくふるさとを離れていたようだが、久々に帰郷することにした。しかし、町全体がやけに静かで異様な雰囲気を纏っており、彼は得も言われぬ違和感を抱いていた。

道中寄ったガソリンスタンドには死体があり、警察へ通報しようにも電話回線はつながらず。ガソリンスタンドを出ようとしたその直後、先ほどまで死んでいると思われていた死体に車を襲撃されてしまう。

明らかに様子がおかしい。不安に思ったランダルはジェニファーの家に駆け付ける。家中探し回っても住人と遭遇することはなく、代わりに怪物たちが巣食っていた。ランダルは持ってきたハンマーを駆使して化け物たちと戦い、何とかして死を免れる。

ジェニファーの部屋に入り、ベッド上に見知らぬ女性が縛り付けられているのを目にする。拘束を解いて話を伺ったところ、彼女の名は「サラ・キャリントン」で、謎のカルト集団によって誘拐されここに捕らえられてしまったとのことだ。

彼女を連れ、一刻も早く家を出ようと試みたが、気が付かぬうちにカルトの一員が既に家に入り込んでいたようで、身を守る前に背後から殴打されて気絶してしまう。奇跡的に命を奪われずに済んだが、ランダルは牢獄の中に入れられてしまう。

サラは、そしてジェニファーは無事なのか。自身が故郷を離れている間、危険な怪物やカルト教団たちが蔓延ることとなったのはなぜなのか。呪われた小さな町に関する数多くの疑問の答えは迫りくる世界の終焉と共に提示されてゆく…。

総評

前作まであった要素全てを底上げしたクオリティとなっており、純粋にプレイしていて楽しかった印象。

前作では無駄に思えた戦闘要素も様々なメカニクスを導入することで単調さがなくなり、ある程度は遊び甲斐があるし、謎解きや探索もダレない程度にもうけられている。ストーリーに関しては若干中二病めいた、一部プレイヤーにとってはクサい・サムいと思われるような内容だろうが、少年の心を持って遊ぶことが出来ればとてもアツい展開と言えるシナリオに仕上がっている。俺はすき。

製作者曰く、初代CURSEDはもともと、友人間で楽しむためだけの用途で作られたゲームだったようだが、公開ののち予想外の人気を博し、PC Gamerというサイトで「Best free games of the week」として紹介されたことがきっかけで本作の本格的な制作を始めたとのことだ。

大衆に認知されているわけではないものの、一部のコミュニティで人気があることを原動力とし、利益を求めることなく心血を注いで新コンテンツを作り上げる。見上げたクリエイター精神だ。(何様)

前作と比較して飛躍的に進化したゲーム内容、ストーリーそのものの規模感もあって、壮大なクライマックスを迎えたかのように思える本作だが、Disaster Squadの創作意欲は止まることを知らず、更にレベルアップした三作目を今度はSteamというプラットフォームで公開することとなる…。






制作者が全てを注ぎ込んだ渾身の最終作「CURSED 3」

初代と比較して大幅のレベルアップを見せたCURSED 2。その三年後に今作は公開される。

元々はフラッシュゲームとして公開されていた「初代」「2」とは異なり、今作に関しては元からSteam上でリリースすることを想定したシリーズ最終作の為、前作から更に想像がつかないほどのボリュームアップを実現している。

主要となる舞台は「遺棄された屋敷の敷地内」に限定されているので、町全体を探索出来た前作からグレードが下がってしまったのかと一瞬思うが、従来までは一つの画角に固定されていた主人公の視点が、今作ではなんと360度自由に動かすことが出来るようになっている。複雑かつ、やりがいのある探索が楽しめるようになった。

上記に加え、かつては1対1の戦闘が個別に発生する仕様だった従来の戦闘システムとは異なり、敵とのエンカウントがシームレスに発生する「探索」「戦闘」間の隔たりのない仕様となった為、予想外のタイミングで複数の敵から前後左右あらゆる方向から攻撃を食らうシチュエーションも起こりうる忙しないゲーム性となった。

なお、前作の戦闘パートで要となっていた回避アクションは今作では不採用。盾(という名のゴミ箱の蓋)で攻撃を防ぎながら、銃や魔法を駆使して敵を倒していくことがメインの戦術となる。

前作まではなかった要素として「武器毎に設けられている習熟レベル」「疲労によるデバフを防ぐための睡眠メカニクス」「ゲーム内処理でしっかり進む時間という概念」「毎日24:00に発生する大量の敵と戦うレイドイベント」「クローゼットやベッドの下などに潜り込んで敵から身を隠すコマンド」「戦闘や探索を有利に進める為のお助け精霊キャラ」などがあり、一つ一つ説明するのが面倒くさいほどの新要素バーゲンセールが行われている。 制作者による尽力が凄まじい。

ここまで来たらBGM盗用もお家芸。AmigaからPS4まで幅広いコンソールで発売された数々のゲームサントラの力を借りることでゲーム体験そのもののクオリティを底上げしている。

CURSED 2の時点で物語のボリュームは凄まじかったが今作はそこから更にスケールがデカくなっている。「怪物が蔓延る謎の炭鉱から少女を救い出そう!」という単純明快な内容の初代CURSEDの物語に幾多もの後付け設定が付与された結果、圧倒的な規模感の物語が描かれることとなった。

ストーリー

邪神マリュスを崇拝するカルト教団の手によって町が崩壊する数か月前…

炭鉱の奥底に「素晴らしい何か」があるという謎の妄想的観念に取りつかれたジェニファーは、町で一番仲の良かった青年ランダルと共に雨が降る中、町酒場の裏にある炭鉱を訪れた。

危険だから入るのは止めたほうが良いとランダルから注意されるが、炭鉱に魅入られた彼女の耳にその言葉が届くことはなかった。炭鉱内に足を踏み入れた瞬間、彼女の記憶は途切れてしまう。

その後、彼女は地下に巣食う怪物に襲われて瀕死状態になってしまい、カルト教団によって魂を引き抜かれ後、抜け殻となった身体は邪神復活のための生け贄として遺体安置所に保管された。

なお、引き抜かれた魂は、彼女の容姿そっくりに化けた怪物の中に取り込まれてしまい、教団を統べる女王として村の人々を大量殺戮する役割を果たす道具として悪用されてしまう。

親友ランダルの活躍により魂は怪物から引き剥がされ、元の身体に戻ることとなったのだが、正真正銘ジェニファーとして再度目覚めた頃には、既に自身の故郷は崩壊してしまっていた。

知らぬ間に町の破壊者として仕立て上げられた可哀そうなヒロイン、ジェニファー。今作の主人公は彼女である。

邪神マリュス企みは阻止され、現在は普通の生活を取り戻したジェニファーだったが、町で起きた出来事に関して気がかりな点がいくつもあり、落ち着くことが出来なかった。

長年マリュスの軍勢と戦ってきた「月の民」とは一体何なのか?
父がその民の一員だったのはなぜか?
自身が生け贄にされることが邪神復活の鍵だったのはなぜか?
月の民が崇めていた月神「ルナ」とは一体何者なのか?

それらの手掛かりを見つけるべく、彼女は父方の祖父母の家を訪ねることとした。自身の起源にまつわる何かがそこにあると信じて…。

今度は呪われた運命を辿る少女、ジェニファーの物語が幕を開ける。

…否、始めから描かれてきた呪いの物語は全て彼女に纏わるものだったのかもしれない。

総評

Disaster Squadの集大成ともいえる今作。

謎解きに時間がかかったり、シナリオを進める為のフラグイベント・アイテムはどこにあるのかと右往左往した時間も多くあったので、プレイする人によって差は出てくるだろうが、グッドエンドを迎える為にかかった時間がCURSED 2は8時間だったのに対して今作に関しては20時間もかかっている。それほどまでにコンテンツが詰まっていたゲームだったといえよう。

前述した様々な要素の追加により「初代」「2」とは雰囲気が大きく異なる全くの別ゲーになっている。いい意味で。

しかしCURSED作品らしさ、エッセンスは謎解き探索パートとストーリーにしっかり残っており、特にストーリーに関しては「壮大な最終作」と製作者自身が謳っているだけあってアツさ(クサさ)に磨きがかかっている。最終局面では男泣きすること間違いなしだろう(誇張)

前作・前々作からもそうだったが、制作者が場面毎に合わせるBGMのセンスが独特なのでそのクセを楽しむのもまた一興。それまでは出せる音に制限があるレトロゲーのサウンドばかりが流れていたのに、レイドイベント時にはDOOM(2016年版)の「BFG Division」が流れてバリバリのメタルサウンドになったりするのには笑っちゃうんですよね。

ただ、それまでとゲームの内容が大幅に変わったことで、これはノットフォーミーかなあ…となってしまった側面も少々ある。

①ゲーム全体の空気感が「ホラー」から「ファンタジー」に変わったような気がする。

②1 VS 多数 という構図の戦闘が頻繁に発生する仕様で「任意のタイミングで銃のリロードが出来ない」「運次第では弾薬が全く手に入らず詰むこともありえる」など、理不尽では?と思うシチュエーションが多い。

③ストーリー&システムの都合上、多数の敵を倒して特定のアイテムを稼ぐ作業を繰り返さなければならない場面があり、若干面倒。

ただ、ある程度の方向性変更はゲームの進化に必要なことだし、全体のプレイ体験を損なうようなレベルの不満ではなく、CURSED 3が良いゲームであることには変わりはない。何の脈絡もない、謎の出会いから始まったこの「CURSEDシリーズ」だが、大変楽しい体験をさせてもらったのでDisaster Squadには感謝。




…余談だが、最近公式が制作秘話のエピソード共有を兼ねたゲームプレイコメンタリー配信のアーカイブをYoutubeにアップロードしているので、興味があったら本作をプレイした後ぜひチェックしてみてほしい。(当然英語)

初代のコメンタリーは約1時間半、2作目は約4時間、最終作は約9時間というハチャメチャな再生時間となっている(?)


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