雑にレビュー「ブレイキング・バッド」
あらすじ
ローン組んで新居を購入しちゃった上に、高校に通う息子がいる中で妻が二人目の子を身ごもったという人生において金がアホほど必要になりそうなシチュエーションで肺ガンを患ってしまい、余命が後二年もないと宣告されてしまった冴えない化学教師ウォルター・ホワイト。教師業のほかに洗車のアルバイトなんかをやっているものの、病気のせいで咳が出続けるわ、倒れるわで仕事どころじゃない。
そんな中、麻薬取締局(DEA)で働く義弟のハンクから「メス(覚せい剤)の製造現場を強襲するから見学に来ないか」と誘われ、なんとなくついていくことに。そこでウォルターは、かつての教え子であったジェシー・ピンクマンがDEAの目を掻い潜り、ラボから脱出し、逃走する瞬間を目にする。その晩、ウォルターは身を潜めるジェシーと接触し、驚愕の提案を持ちかける。
「私と組まないか?」
かくして、ドラッグビジネス初心者の冴えないジジイが化学の知識を引っ提げ、麻薬の世界へと「道を踏み外す(Breaking Bad)」物語が始まるのだった・・・。
(若干のネタバレを含む)キャラ紹介
ウォルター・ホワイト
今作の主人公。普段は真面目でやさしい化学教師。しかし…いったんドラッグビジネスに身を染めると「メス製造きもちいい…リスペクトちょうだい」と溢れ出る承認欲求でマフィアやジャンキーからお金と尊敬の念をおねだりするハイゼンベルグに大変身!
ドラッグと金にまみれた世界の悪役たちに虐げられる被害者として視聴を続けていると、途中で感情移入できなくなるが、道を踏み外す過程で彼が物語の「悪役」に変わってしまったと捉えると割としっくり来るようになる。
ブライアン・クランストン氏の知略に富んだ傍ら、わがままで自己承認欲求に塗れてる惨めな死に際のおっさん演技がうますぎる。
ジェシー・ピンクマン
かつてウォルターが抱えていた生徒の一人で、メス作りにおける相棒。ウォルターとつるむことで様々な不運に見舞われる可哀そうな青年。
仕事をこなす中で時折言い合いになったりするけど、互いに気にかけあい、ピンチの時は真っ先に心配をし合う。ウォルターとはソウルメイトのような仲である。(途中ウォルターを殺そうとしたりウォルターに殺されそうになったりするけど)
裏の世界で生きることとなるが、その実、ナイーヴで繊細。どこか憎めないジャンキー青年である。物語が進んでいくうえで多少の成長は見せるものの、数々の凄惨な出来事を経た後でも青臭さが拭いきれないため、若干の違和感を覚えるが「人として変わることを要求される辛い立場で、どうしても変わり切れない人間」であることが彼のチャームポイントであり人気の理由ともいえるのかも(適当)
スカイラー・ホワイト
ウォルターの妻。常に顔が怖い女性。
最初の数話はガンの夫を健気にサポートする妻の鑑だが、それ以降はバチバチにウォルターと喧嘩し合うだけの女になる。ウォルターがクズ男なので仕方がない。
序盤はヒスを繰り返して若干ウザくなるけど、ウォルターの裏稼業がバレてからは資金洗浄を行う上でうまい立ち回りをしていたり、裏稼業が周囲にバレないための嘘エピソードを綿密に考えていたりと、案外頼りがいのある女性であったということが判明する。
別の男との浮気シーンが生々しくて気色悪い。
ソウル・グッドマン
胡散臭いCMを打ち出し、ウォルターが住む町でも顔が知られている弁護士。裏では犯罪者を相手に仕事を請け負ってがっぽり設けている。
口が上手く、巧みな話術で相手を説き伏せる詐欺師タイプで、違法に得た金のマネーロンダリング指南や、身代わりとして投獄される人材の手配、罪人の弁護などをこなして、ウォルターとジェシーを何度もサポートする。裏側の勢力における唯一の良心。
あくまでもサブキャストなのだが、本ドラマにおける大人気キャラの一人。こいつが主役のスピンオフ「ベター・コール・ソウル」もネトフリで公開されており、こちらも面白い。
ボブ・オデンカーク氏による三枚目演技が光る。
グスタボ・フリング
別名ガス。表の顔はフライドチキンのチェーン店「ロス・ポジョス・エルマノス」を経営する凄腕マネージャーであり、警察や団体への慈善事業も行う聖人。裏の顔はアメリカ南西部一帯の麻薬市場を牛耳る冷徹無比なドラッグマフィアボスの一人。
高品質なメスを製造するウォルターと手を組むようになり、自身が出資している洗濯工場の地下に製造した大規模な麻薬製造工場で働かせる。互いに気を許すことはないものの、良好なビジネスパートナーという関係を築いていた、はずだが・・・。
他のドラマ・ゲームにおいても、とにかくミステリアスで考えの読めない参謀役が様になり過ぎるジャンカルロ・エスポジート氏の演技が今回もマッチしている。ブレイキング・バッドにおけるベスト悪役といえばこの人。
ベター・コール・ソウルにも当然出演
ハンク・シュレイダー
麻薬取締局(DEA)に務めているウォルターの義弟。デブ。
陽気な性格でウォルター一家や職場の同僚達からも慕われており、相棒のゴメズとは常にふざけ合いながら行動しているが、ひょうきんな一面とは裏腹に悪を許さないという信念は人一倍強く、持ち前のカンの鋭さでドラッグを取り巻く巨悪を暴いていく。
誠実で病弱な自分の義兄がドラッグ市場をブイブイ言わせている張本人であるとは気づかず、ハイゼンベルグの影を根気強く追いかける。
キャラの描き方的に、裏社会の恐ろしさを思い知らせるため序盤~中盤で「見せしめ的に殺されるキャラ」なのかと思いきや、死亡フラグを折りまくって終盤まで大活躍を見せる。表側の世界で生きるキャラの中でのMVP。
(若干のネタバレ含む)感想
一度踏み入れたら最後、そのままズブズブと沈んで抜け出せなくなり、踏み込んだ当人だけでなく周囲の人間も巻き込むタチの悪すぎるドラッグ蟻地獄に嵌るジジイを見るエンターテインメント。
「ガンで余命宣告された俺が化学の知識を活用してドラッグビジネスの世界で無双する」というなろう系みたいな話(雑)で面白く、盛り上り所が多くあって引き込まれた。出るキャラ全員が印象に残り、それだけ一人一人の演技に力が入っていたんだろうなあと思わされる。
しかし、中盤はシリーズモノ洋ドラ特有の悪い面も目立っていた。物語を面白くするわけでもなく、その後の展開に大きな影響を与えるわけでもない不必要なストーリーやスローペース過ぎる間延びした展開が挿入されてしまい、シーズン3あたりで怠さが勝って間が空く事もあった。
メスを製造するラボにハエが入り込んで、「異物混入いくない!」と言うことで1エピソード分ずっとそのハエを退治するためだけに末期患者のジジイとジャンキーのにいちゃんがあたふたしてるのを見せられた時にはふざけんなとも思った。
ストーリー全体の起・承・転・結のそれぞれで設けられたアウトラインはドチャクソしっかりしている!・・・けど、それらを繋ぐ間のプロットについてはあまり考え込まれてない感があり、リアルタイムでドラゴンボールZを見ていた少年少女はこんな気持ちだったのかなあと思わされた。(たぶん違う)「こう始まってこう終わる」ところを考えるのはいいんだけど、その間をどのように描くかをきっちり考えて欲しかった。(素人の戯言)
正直途中まで「なんでこんなに評価が高いんだこのドラマ?」と疑問を持ちながら惰性で見続けていたが、そこは数多くの賞を取ったドラマ。後半は怒涛のストーリー展開で追い上げて、気が付けば休日が無くなっていた。
耐え忍ぶ期間はあるが、最終的には価値のある体験になると思うので余裕のある方は是非見てほしい。見続けて良かったと思えたドラマの一つである。
個人的には1シーズン分くらい無駄な話があった気がするので、端折れるところは端折って5~6シーズンくらいに収めたらとても良かったんじゃないかなと思う。
・・・もともと9シーズンの予定だったってマジ?
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