手打術新書[うどん打ちの全て]六巻-技術編-麺線操作の章
真のうどん職人は○○○を上げろ。
うどん打ちに必要な理論、技術はここまで読んだ方なら充分磨いていただいただろう。
もううどんは完璧に打てる。そう思っている方のために一つお教えしよう。
うどん打ちにおける到達点とは、満点の生地を製麺することにあらず。何枚もの生地を打った時の最低点の高さにあり。100枚、200枚打った生地の最低点こそが実力を示す。
いかに速く美しく整った生地を作ろうとも、その次の生地がそうでなければ、それが実力だということ。
うどん屋の麺打ちは毎日何十何百とうどんを打つ。
しかし客にとっては目の前の一杯が全て。それが50点ならその店は50点と言われる。厳しいがそれが現実だ。
しかし生地は毎回違う顔を見せる。同じ日の製麺でも、団子をしたタイミング、その後の温度による硬さの変化、ダレ、直前の円盤サイズ形、同じものは二度と打ち台には現れない。
つまり、変わりゆく状況や生地の変化に適応するような判断と微調整する技術が必要だということだ。
「蕎麦は技術、うどんは理論」と言われることがある。間違いではないが誤解を生む極論でもある。
蕎麦はいかに切れやすい生地を切れずに薄く延ばすかという繊細さが求められる。
対してうどんは、グルテンにより切れずに延ばすこと自体は容易だ。素人でも職人が教えればそれなりのものを作る事ができる。運が良ければ満点も蕎麦より早く出せるだろう。
しかし、塩の量、鍛錬熟成、グルテンの状態、蕎麦よりも常に変化する要素が多く、うどんは生物的で科学的な捉え方が求められる。ここに理論と呼ばれる由縁がある。
つまり、蕎麦と違って満点を出せたことがあっても、その後にとんでもない失敗をし、最低点数を出すことがあり得るということだ。
なぜ最高点数ではなく最低点数で見るか。
それはお客さんがいるからだ。
たまたま最低点のうどんを食べたお客さんは、そのお店をその点数で採点する。
真のうどん職人は失敗しても失敗とお客さんに気づかれないレベルのミスに止め、美味いと言わしめる。
ゆえに最低点を下げないために、いかに生地の状態を見極め、適切な処置を行えるか、すなわち「麺線を自在に狙い打てるか」が手打ちうどんの真髄である。
ここからは「自在に麺線を狙い打つ」ための生地適応の方法について触れていく。
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