マガジンのカバー画像

ドットコム起業物語~蹉跌と回生のリアルストーリー

39
90年代終わり。いまや伝説となったビットバレーに飛び込み起業した20代の青年がバブルの波に翻弄されながらも楽天へと企業売却するまでの、蹉跌と回生のリアルストーリー。 起業におい…
運営しているクリエイター

#資金調達

第8話 大志満とジェントルマン

←第7話 ネットバブルはパーンと破裂したのですが、実際には、瞬時にリセットが起きたという訳ではありませんでした。事業活動の現場と、株式市場の動きには、やはりタイムラグがあるようです。 どうしてそうなるか、ということを振り返りますと、 タイプA 祭りの終わりを察し、さっと引き揚げる人 タイプB 祭りが終わって、片付けに時間がかかる人 タイプC 祭りが終わったことに、気づかない人 大まかには、この3タイプの事業プレイヤーが世の中に存在して、レイヤーのように重なってい

第9話 ビンテージデニムの男

← 第8話 当時の、日本のベンチャーキャピタル(VC)業界は、昨今の姿に比べれば、少し滑稽な状況だったのかもしれません。 普通に考えれば、VCも金融サービスなので、行動原理はおおかた同じ。であるはずなのですが、まだ業界が勃興期で経験不足だったということもあったのでしょう、誰もかれもが外資ファンドのように手仕舞い。または、賢く引き締めをした訳ではありませんでした。 実際には、投資といいつつ、融資のような感覚(と、手法)で業務にあたられていた、オールドスクール派のVCも多か

第10話 遥かなるバレー

← 第9話 そんなこんなで、後ろ髪を軽く引かれつつ、アイシーピーさんからの出資オファーはお断りしました。 こうなると、いよいよタイプCの投資家を巡ることになります。 タイプA 祭りの終わりを察し、さっと引き揚げる人 タイプB 祭りが終わっても、片付けに時間がかかる人 タイプC 祭りが終わったことに、気づかない人 お会いしていたのは、地方関係、銀行関係、公的資金関係の投資機関だったと思います。 徐々に訪問先のオフィスは狭く、汚くなり、やれたスーツ姿の担当者が増え、我々

第11話 センター街の亡霊

← 第10話 2000年8月。全取締役の給与はゼロになりました。 この給料支払いストップの現実が、持ち前の闘志に火を注いだのか、創業メンバーの佐藤さんが、がぜん動きだします。 おっのぽーん、こうなったら、死ぬ気で営業っすよー。 ガシガシ広告で売上つくるしかないですわよー 彼女は、別に帰国子女でもないのに、言葉遣いとリアクションが日本人離れした長身ビジネスウーマンです。 「ちゃんと俺のことを社長と呼べ」と心の中で思いながらも、言い出せないほどの圧(失礼、熱量)を持つ女

第12話  将軍との邂逅

← 第11話 ふと、オフィスで顔を上げると、高めのヒールを履いて、さらに長身となった、戦闘モード全開の佐藤さんが目の前を塞いでいました。 おっのぽーん。広告、売れましたですわよー。 ぬほほほ。 プロトレード 社に、はじめて売上が立った瞬間でした。どうやって売ったのかは今もって謎ですが、できたてのウェブサイトのバナー広告が、いい値段で売れたのです。インプレッションとか、クリック単価とか、ちゃんと割り出したら、ありえない金額で。 ここで、「優秀な部下が成果をあげ、してやっ