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地方自治体を「計画地獄」から救え!

私が尊敬し、公私ともに親しくさせていただいている霞が関の官僚の方が、現在規制改革に取り組んでおられ、法律で地方自治体に策定が義務づけられている各種計画について、策定を求めることをやめる、複数の計画を統合しての策定を認める、計画の内容を簡略化する、などの改革を進めておられることを知りました。

地方自治体で仕事をしていた者としても、これはぜひとも進めてほしいと思います。都道府県、そして地方自治体も、国の計画も参考にしながらそれぞれ独自の計画を策定することが求められているのですが、とにかく計画だらけ。私も民間から県庁に来たときには、何でこんなに計画を策定することに時間を費やしているのか、と感じました。役所はまさに「計画地獄」です。

民間であれば、経営計画とそれを達成するための予算計画というシンプルな構造。その先は、どうやって予算を達成するかの戦略と実行こそが大事。ただでさえ人も足りず忙しい役所の職員が、計画づくりに翻弄され、作り終わったところで疲れ切っている、という感じになっています。

そして、民間の予算と役所の予算の言葉の違いも違うな、と役所に入った時に率直に思いました。民間の予算とは、まさに達成すべき計画。予算の策定が終わると、自分に売上達成目標などのコミットメントが課されます。これに対し役所の予算は、策定したらあとはそれをこなしていくもの。しかし、本来、それだけでは十分ではありません。予算で決めた事業を執行して、どこまで住民のために成果を挙げられたのかが最も大切ですが、その政策評価の分野は、計画策定にくらべて極めて少ない時間しかかけられていないのが実情です。

話を計画に戻します。特に多くの計画作成を求められるのが、健康福祉の分野。たとえば、地域医療計画、保健計画、障害者福祉計画、介護計画など、法律によって計画が定められていますが、受益者、病院、医師、看護師、福祉施設・職員、地域コミュニティなど、一つの法律や計画に納まらない多様なステークホルダーが存在しており、しかもそれぞれの計画が密接に関連しているので、計画間の調整も非常に手間がかかります。さらにやっかいなことに、各計画が開始時点、計画期間(3ヵ年や5ヵ年、長いものだと10ヵ年)が異なります。

日本全国津々浦々、都道府県および市町村レベルの自治体で、とてつもない数の計画が作られ、そこに膨大な時間が費やされています。これを省力化して、成果を出すためにエネルギーを費やし、その結果を検証し次に生かしていく、というサイクルに変えていく必要があります。

そのためには、国が法律を変えて、どうしたら地方自治体の現場のパフォーマンスが上がるのかの観点から、計画策定に関するポリシーを大胆に見直していくことが求められると考えます。

霞が関が法律に基づいて作った国の計画を作りますので、地方自治体の側は、それに基づいて直接施策を作れば足りるということもかなりあるでしょう。一方、地域の特性に応じ、計画の内容を国のモデル計画と異なるものにする必要がある場合、また国の計画に付加する必要がある場合のみ、その箇所のみ独自の計画を策定する、ということで済むようにすれば、計画の実施やその評価に多くの時間を充てることができることでしょう。

もちろん、そもそも計画を作らずともよいものについては廃止する、また、複数のステークホルダーが関連する計画については、省庁や部局間の垣根を越えて、国の計画そのものを統合するなど、根本から見直すことが何より大切です。

そして、これもデジタルですべて管理し、全国の地方自治体が異なる内容に書き換えた箇所や付加した項目を、霞が関が容易に把握できるようになれば、今後の国の計画の見直しも、地域の実情や時代の変化を踏まえた現実的な形で行うことがスムーズになると考えます。

より少ない労力で、最大の成果をあげるため、国レベルでの改革や工夫が求められると思います。ぜひ、今進めようとしている改革を実現させ、毎日全国で苦労しながら真面目に頑張っている地方自治体の職員の皆さんを「計画地獄」から救ってほしいと思っています。

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