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焼きそばの果てしなき旅【その67・北海道美唄市かどや訪問記】

2022年9月、北海道美唄市に行って参りました。焼きそばの御縁が深く繋がって、北海道美唄市地域おこし協力隊のご尽力で僕のソロライブとトークショーを開催してくれたのだった。おかげさまでライブは大変に盛り上がった。楽しんで戴けたようで何よりです。ご来場くださった皆様、開催に関わってくださった皆様、ありがとうございました。

角屋のやきそば

北海道美唄市と云えば角屋のやきそば角屋のやきそばと出会ったことで僕は焼きそばの世界に思い切り深く入り込むことになった。そして更にこうして美唄市にまで旅することが出来た。更に更に工場見学までさせてもらうと云う機会にも恵まれた。感謝感激雨霰。好天には恵まれましたが。

炭鉱メモリアル森林公園

まずは旧三菱美唄炭鉱施設跡地である、炭鉱メモリアル森林公園を案内してもらった。大正12年に立坑が作られ、昭和初期には三菱鉱業全炭鉱の中でも第1位の出炭量を誇った。昭和47年7月に閉山。その跡地は今はこうして森林公園になっている。

炭鉱メモリアル森林公園

美唄炭鉱常磐台竪坑櫓(たてこうやぐら)。地下170mの水平坑道まで人員や資材を揚げ下ろしするための立坑に設けられた建造物。坑道はそこから更に深く続き、地下1500m以上にも達した。

炭鉱メモリアル森林公園

現在の常盤台は無人の森林であるが、最盛期にはこの周辺だけで4万人もの人達が暮らしていたと云う(ちなみに現在の美唄市の人口が2万人程度)。ここに繁華街や学校や住宅が居並んでいたとはとは全く想像がつかない。過去の炭鉱の栄華は完全に自然に飲み込まれている。説明を聞いても実感がない。そしてこの炭鉱で好んで食べられていたのが角屋のやきそばだと云うことである。美唄の人は角屋のやきそばを炒めたりせずに、袋に入ったのをそのまま囓って食べる。炭鉱に従事する人達が手を洗わずともそのまま袋から食べられる利便性を愛した名残であろう。角屋のやきそばの特殊性はこの炭鉱から始まっているのだ。

炭鉱メモリアル森林公園

以前は人が多かったので熊は出なかったそうだ。今は自然の攻勢と共に熊も人里近くまでやって来るようになった。ここへ来る途中にあるアルデピアッツァ美唄の敷地内にあった保育園も、熊の出没が増えたことから閉園となった。自然の逆襲であるのか。色々なことを考えた。

有限会社角屋

そして念願の有限会社角屋訪問と相成った。土曜日曜は工場が稼働していないので月曜日に伺った。ここがあの角屋のやきそばの生まれ故郷である。感無量。

有限会社角屋

工場内部には入れないが、窓の外からやきそばを袋詰めにしている作業を眺めることが出来た。全て手作業。雇用促進のため機械化は控えていらっしゃるとのこと。とても素晴らしいことであると思う。手際よく袋詰めされていくやきそば。いつまででも眺めていられる。

出来たての角屋のやきそば

袋詰め前の段階の出来たての角屋のやきそばを戴くと云うレアな体験をさせてもらった。この段階では麺にソースがしっかり沁み込んでいない。袋詰めして、時間が経過して、充分に麺にソースが沁みてこその角屋のやきそばであると云うことだ。

出来たての角屋のやきそば

ウマウマウー。地域おこし協力隊の方も一緒に試食したが、これじゃないなぁやっぱりソースが沁み込んでないとなぁと云う感想を話しておられた。いや、これはウマイと思う。角屋のやきそば歴2年ほどの初心者にも程がある初心者の僕に云わせればこれはこれでウマイ。ソースが沁みていないので麺の食感が少しパキパキとしている。慣れ親しんだ方には申し訳ないが、余所で富士吉田うどんブラボーとか長浜ラーメンベタナマでとか放言している僕には大変にインパクトのある出来たてなのであった。ソースの香りもヴィヴィッドで広がりがある。もちろん特殊性には欠ける。これぞ角屋のやきそばであると云うプッシュはない。でも出来たてには出来たての好さがあると思った。こんなこと云ってると嫌われちゃうかしら。すみません。でも大変に貴重な体験をさせてもらった。ありがとうございました。

札幌駅の安田侃作品

そして角屋のやきそばを地元の皆さんがどう食べていたか、色々なお話を伺うことが出来た。その中でも一番心に刺さったのは、常温にしてそのまま食べろと云うことだった。現在は冷蔵されて売られているが、以前は菓子パンなどと並んで常温で陳列されていたとのことである。僕は最初炒めて食べて、次にそのまま食べた時は冷蔵庫から出して冷えている状態だった。確かにそうか、昔は冷蔵なんてされてないよね。ナルホドナルホド。それをやってみようと思って札幌駅を歩いていたら売店で角屋のやきそばが売られていた。これをこのまま東京にまで持ち帰れば丁度良いくらいに常温になっているのではないか(お店で保冷剤を入れてくれたが持ちは1時間程度とのこと)。なので札幌駅で買って持ち帰った次第。角屋のやきそばに僕と一緒に旅をしてもらった格好だ。

常温の角屋のやきそば

果たして、家に帰ったら角屋のやきそばは見事に常温になっていた。何度も食べているが常温と云うのは始めてである。イタダキマス。

常温の角屋のやきそば

ウマウマウー。ソースの香り、いやこれはもう角屋のやきそば全体が醸し出す香りであろうが、今までで一番広がりや奥行きのある香りであった。最初に炒めて食べた時に感じたニッキの香りに加えて、様々な要素、特に小麦粉の香りであろうか、これに大きく包まれるような感覚を覚えた。これは全国、いや世界中のどこを探しても似たもののない唯一無二の味わい。ふと、工場見学の前に訪れた炭鉱メモリアル森林公園周辺の自然の匂いを思い出した。森林と風と太陽の匂い。僕にはそれが同じもののように思えて仕方がなかった。味わいの中で旅の全てが繋がったのだ。

かどや

この御縁に何度でも感謝を申し上げたい。ありがとうございました。また必ず美唄を訪れます。その日まで皆さんどうぞお元気で。そして焼きそばの果てしなき旅はまだまだ続きます。


末永くがんばりますのでご支援よろしくお願い致します♫