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フェディバース (Fediverse) ことはじめ

ここ最近「フェディバース (Fediverse)」という言葉を聞かないでしょうか。聞きませんか、聞きませんよね…。しかし目下進行中のTwitterの大騒動も手伝って、いま徐々に盛り上がりを見せている分野なので、これを知っておけば大丈夫。なことをまとめます。

まったくもって知らないよ。という人にも極力分かるように、の説明ですので細かなところは端折ったり、平易化していることはご了承ください🙇‍♂️。



「分散型」SNS

いまの世の中、Twitter・Facebook・Instagram・TikTokなど、挙げればキリがないですが数多くのSNSが存在します。

これらは「中央集権型」と言われる仕組みのもので、管理者はTwitterだったらX社のように1つで、良くも悪くもその中央管理者の意思決定でやりたい放題に出来てしまいます。また、各SNSとの繋がりはなく独立したシステムです。

それに対しフェディバースに属するサービスはその多くが「分散型」と言われます。

マイクロブログのMastodonは、Twitterのように中央管理者が持つ1つのサーバーで動いているわけではなく、インスタンスと呼ばれる小さなサーバー同士が接続された構成で運用されています。

Mastodonを1つの「国」・インスタンスを「都市」と考えると分かりやすいでしょう。しかし、サーバーを運営する管理者は各インスタンスにそれぞれ存在しているものの、国王に相当する中央管理者は存在しません。

そしてMastodonの開発者は1ユーザーとして、あるいは管理者を兼ねるかたちで、思い思いのインスタンスに所属してMastodonに参加しています。

機能追加・削除やアップデートの方向性など、Mastodonという国としての方針決定は、開発者で形成されるオープンソースコミュニティにおいて議論と同意が必要となっており、なので1人の管理者や1人の開発者の一存でMastodon全体の改変が急に勝手な形で起こることはないわけです。

極めて民主的ですね!


Threadsは分散型?

では最近になってMeta社が始めた「Threads」は分散化SNSなのか。というと、答えはNOです。なぜかというと、分散化SNSとは前述のとおり中央管理者の存在しないしくみであり、サーバーの管理やサービス仕様を全てMeta社が決定するThreadsは該当しません。

ただしThreadsは近い将来での「フェディバース」への参加を表明しており、その点が他のSNSとは一線を画す動きと言え、大きく注目されています。


フェディバースとは

語弊もありそうですがごく簡単に言ってしまえば、フェディバースとは「つながりを約束したサービスの集合体」で、全体で1つの世界として考えると良いかと思います。TwitterやInstagramなど、これまでの既存サービスやSNSはそれぞれが別の世界という位置付けです。

TwitterやInstagramでは、それぞれに参加したユーザーは、それぞれのユーザーの投稿を見たり、コメントしたり、いいね!等してやりとりすることが出来ました。

しかしTwitterユーザーがInstagramユーザーとやりとりすることは出来ません。なぜなら別のサービスですからね…。


それがフェディバースに参加したサービスを利用すると、こうなります。

はい。異なるサービス・SNSのユーザーともやりとりができます


自身がMastodonに参加をしているとして、仲の良い友達や気になる人がMisskeyという異なるSNSを利用していたとします。

これまでの常識では、じゃあ自分もMisskeyに参加して友達と繋がろう。という発想になると思いますが、フェディバースではサービスを越えてユーザーをフォローし合うことが可能です。

  1. MastodonでMisskeyのユーザーをフォローすれば、

  2. MisskeyユーザーがMisskeyに投稿した内容を

  3. Mastodon上の自分のタイムラインで見ることができ、

  4. コメントやいいね!もできる。

つまり自身はMisskeyに参加してわざわざアカウントを作らなくても、友達や気になる人のアカウントと繋がれるわけです。

これにより、

  • 使いたいわけでもないサービスやSNSにアカウントを作る必要がない。

  • あちこちブラウザやアプリを切り替えて見まわりに行く必要がない。

  • (繋がってさえいれば)告知したい内容を1度投稿すれば他サービス・SNSのユーザーのタイムラインにも流すことができる。

などなど、ユーザーの利便性は計り知れません。1つのメインアカウントさえあれば良いわけですから。


フェディバース参加サービス・SNS

では、いまフェディバースに参加しているサービスやSNSはどれほどあるのだろうという点ですが。ユーザー数の規模が小さく細かなものまで挙げ出すと数知れません。

「Fediverse」- ウィキペディアより

代表的なものとしては

  • 💬 Mastodon / Misskey
    Twitterと同様のマイクロブログ。テキストや写真・ビデオ・投票など多くの投稿フォーマットをサポートする。

  • 📷 Pixelfed
    Instagramと同様の写真・ビデオに特化したSNS。

  • 🎵 Funkwhale
    SpotifyやSoundCloudなどに類似した、音楽・音声特化SNS。

  • 📹 PeerTube
    YouTubeと同様のビデオ配信特化SNS。

あたりかなと思いますが、ここに近い将来 ThreadsTumblr などインフラ規模やユーザー数の大きなサービスも参加してくるわけで、大きなうねりのようなものを感じています。


メインのサービス・SNSは何を選択したら良いのか

汎用型のサービス・SNSがおすすめ

いろいろ種類があるので選択に迷ってしまうところですが、個人的にはマイクロブログを選ぶのが無難ではないでしょうか。

ではなぜマイクロブログなのか?と言えば、「テキスト・写真・ビデオ・投票etc… など、サポートする投稿フォーマットが多い」ことが理由です。

フェディバースでは「サービス・SNSを越えて繋がれる」ことは先に説明しましたが、各サービス・SNSごとに独自の特色があります。

例えば「Pixefed」は写真・ビデオ特化型のSNSで、写真とビデオの表示に関してはそれ専用にインターフェースやサービス設計がされていますが、逆に言えばテキストや投票、将来サポートするかもしれない新しい投稿フォーマットについてはサポートをしてくれない可能性が高いということです。


  • PixelfedのユーザーはMastodonのユーザーをフォローすることは出来るが、Mastodonユーザーが投稿したテキストや投票フォーマットの投稿をPixelfed上では見ることは出来ず、見られる投稿は写真とビデオのみ。


  • MastodonのユーザーはPixelfedユーザーの投稿をMastodon上で制限なく閲覧が可能。


ということから、メインにするのは汎用型であるマイクロブログが最適と思います。いまでしたらMastodon・Misskeyですが、今後は先に挙げたThreadsも大きな選択肢の一つとなり得そうです。

ただ、もしもMastodonで気になるユーザーがいるが、その人の写真・ビデオの投稿だけ追いたい。ということであればあえてPixelfedからその人をフォローして、Pixelfedを「コンテンツフィルター」のように利用する使い方もなくはありません。


採用するプロトコルにも注目

サービス・SNSを越えて繋がれるフェディバースの世界ですが、「繋がる」ために必要な約束事として「プロトコル」と呼ばれる取り決めが存在します。

テキストや写真などの各種投稿フォーマットやコメント、いいね!など、タイムライン上で表示したり・機能させるために使う「データの形式・やりとりの方法」をあらかじめ決めておけば、

あとは各サービス・SNSがその取り決めに従って設計すれば、他とのデータ連携をしやすくなるわけです。それがプロトコルです。

現時点でもっともサポートされているプロトコルが「ActivityPub」なのですが、繋がれるのはActivityPubをサポートしたサービス・SNSのみです。

Twitterの後継とも目されている分散型SNSの一つにBlueskyがありますが、実はこのBlueskyはAT Protocolという独自のプロトコルを採用しています。そしてActivityPubとAT Protocolには互換性がないため、他と繋がることが出来ません。

ではなぜ独自のプロトコルを採用したかと言えば、「プロトコルの設計として自分たちのものの方が優れている」という判断からで、AT Protocolに参加するサービスを増やしていこうという算段の様子です。

実際に優位性が認められる設計になっているのは確かのようですが、参加するサービス・SNSが少ないのであれば将来性の部分ではすこし疑問が残ります。

そしてAT Protocol以外にもマイナーなプロトコルを採用するものも少なくないので、フェディバースで「繋がる」ことを前提とするのであれば、どのプロトコルを採用しているかも大事になってきます。

個人的にはなんだかビデオのVHS・ベータマックス戦争の再来のようにも思えてきた…。


で、結局どれがいいの?

さまざまな思想と哲学とイデオロギーが存在するので、どのサービス・SNSが最強じゃい。は決められそうにないのですが、あくまで個人的な意見としては、今後フェディバースの看板役者になり得るのはMastodonかThreadsではないかと。

Threadsは分散型でなく中央集権型なのがネックですが

  • ユーザー数の規模が(既に)段違いで大きく、そのため話題・趣向も豊富で気の合う人を見つけやすそう。

  • Instagramとの連携ベースのため既にフォロー・フォロワーの関係にある人が多く安心感があり、Threadsにより写真・ビデオ以外の新たなコミュニケーションが生まれそう。

  • Meta社の開発力。

  • Meta社が運用するだけあったインフラの強さやセキュリティ設計の高さが魅力。余程のことがない限り落ちたりすることもないだろう。

  • ニュースや政治を奨励しない。

というメリットがあり、ActivityPubのサポートでフェディバース参加後は一気に主役に踊り出そうな期待感があります。

ですが、中央集権的なデメリットもあり

  • どこかのタイミングで広告を(うんざりするほど)差し込んできそう。

  • スパム・詐欺・フィッシング。

  • 「トレンド」とかいう悪意の温床システムに蝕まれそう。

  • ユーザーには伏せた上でMeta社の恣意的なコントロールが入りそう。

という懸念も持っていたり。

どう転ぶかは正直わからないのですが、フェディバースをより盛り上げるには巨大なプレイヤーとユーザーの流入というのは必要なわけで、その意味では今のところ歓迎の気持ち。

自分はと言えば、将来的にはアプリの選択肢が多く優秀なものが多いMastodonの利用を主軸にしつつ、MastodonからThreadsのユーザーをフォローする形に行き着いていそうな気がしています。

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