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寄る辺ない僕らの"居場所" をめぐる物語ー『メゾン刻の湯』コミックス上巻が出ました。

メゾン刻の湯(ポプラ社)のコミカライズ版「メゾン刻の湯」上巻が角川さんより発売しました。


漫画は瀬田一乃さんです。

絵を拝見した瞬間、「この方にお願いしたい!」と思ったほど、美しく繊細な絵を描かれる方です。

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人物の表情が巧みで、特にアキラさんの、憂いを含んだ、何かありそう〜な感じのする色っぽい見た目、マヒコのちょっと頼りないんだけど芯が一本通った好青年ぶりが大好きです。

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私は最初にコミカライズを瀬田さんにお願いした時に、瀬田さんなら、きっと登場人物の心のヒダまで読み取って描いてくれるだろう、と思っていました。

まさにその通りでした。

小説では描写されていない、登場人物の細やかな感情の動きまでを、見事な精度で絵にしてくださっています。


また、基本的にストーリーは、原作に沿って描いていただいているのですが、

瀬田さんがオリジナルで考案してくださるエピソードがとても素晴らしく、原作者として毎回、初めて読む物語を手にする気持ちでネームを見させていただいています。

特に、前半の目玉(?)とも言える、蝶子さんのオリジナルエピソード。

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蝶子さんは、いわゆる "ハーフ"(マレーシアと日本のミックス)で、女であること、混血であることゆえの社会からの偏見の眼差しに苦しんでいる、という設定なのですが(原作でも、実は丸々1章使って蝶子さんのエピソードが語られるはずだった……が、文字数の関係で泣く泣く削ることに)、

その彼女の葛藤と、刻の湯に来てからの成長を、瀬田さんが見事にオリジナルのエピソードとして物語に昇華してくださいました。

"ハーフ" と呼ばれることのみならず、現代の女性が生きる上で感じやすい、「女性であること」ゆえの困難や「見た目」がもたらす偏見について、真摯に描いてくださり、私としても読んでいて共感して思わず涙ぐんでしまいました。


「メゾン刻の湯」の物語は、瀬田さんが加えてくださったこのエピソードによって完成されたと言っても過言ではありません。

エピソードだけでなく、毎回、瀬田さんが挟まれる、オリジナルのセリフや会話がとても楽しみです。

瀬田さん、また漫画化にご尽力くださった編集者さん、ありがとうございます。

ウェブ連載、物語は後半戦に入っております。

最新話(第6話)はこちらから読めます。

コミックス上下巻の「メゾン刻の湯」、どうぞよろしくお願い申し上げます。



ありがとうございます。