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「選挙で誰が当選しても、私たちの生活は変わらないのでは?」という問いに答えました


「誰が当選しても、私たちの生活は大して変わらない」

私もそう思っていました。若い頃は「政治は何をやっても変わらないし、人生を変えるのは自分なんだから自分が頑張ればいい」と選挙に行きませんでした。

だからあなたのいうことはよくわかります。


確かに、都政とか国政とか、大きなスケールの選挙になると「自分とつながっている」感じがしなくて、行っても無駄な感じがするかもしれません。


この話の前にまず、杉並区の話をしますね。


杉並区では2022年に区長選挙がありました。

その時に立候補したのが無所属新人の岸本聡子さん。対するのが現職で自民系の田中良さん。

その時争点の一つになっていたのが西荻窪駅前の道路拡張含む街の再開発です。

私は荻窪に6歳から14歳、西荻窪に14歳から24歳、阿佐ヶ谷に35歳から37歳の計20年間住んでいたので杉並の街並みには思い入れがあるんです。だから西荻駅前の道路の拡張に関しては気になってはいたけど、それもぼんやりしたもので、どうせまた次期区長も自民系の現職の田中さんだろうなーと思っていました。


そんな時に突如、話題になったのが東京女子大の学生さんによる区長候補者インタビューでした。

候補者3人のインタビューを一字一句端折らずに書き起こしたものです。


大手メディアが掲載しない候補者の人となりや公約に対する姿勢が全部赤裸々に公開されていて(多分、インタビュアーが学生さんということで各候補者気を抜いていたのでしょう)、これを読まなければ知り得なかった情報も多々ありました。

もし時間があったら読んでみてください。それぞれの人柄の違いが露骨に表れていて面白いです。


当然、これは大変な話題になりました。

これを読んで投票先を変えた人も少なくなかったはずです。

私はそれまでぼんやりとしか投票先について考えていなかったのが、これを読んで岸本さんに投票することを決めました。


でも現職は強いしなあ、無理かなあ、と思って、投票日の翌日に阿佐ヶ谷の駅前のマッサージ屋でマッサージを受けていたら、聡子区長が186票差で当選したというニュースが入ってきました。


186票差!


たった186票。でも新人の候補者が現職を打ち破ったんです。


もしこの186人が「どうせ投票なんかしても意味ないよ」と言って棄権して(選挙に行かないのは自分の権利を放棄することなので棄権です)しまっていたら彼女は当選しなかった。


一人一人の票は小さいです。でも私はその時、確実に1票の価値を、1票が政治を変える、人やまちの暮らしを変えることを認識したんです。



そこからはちゃんと選挙に行くようになりました。


岸本さんの当選を経て杉並区政は変わりつつあると思います。

まず、区議の女性議員の割合が飛躍的に伸び男女5:5になりました。岸本さんに背中を押された女性が多数立候補して当選しました。

議会に多様性が生まれたというのは大きな変化です。

外国人住民への日本語学習支援や生活相談、障害者支援の強化、また杉並区でもパートナーシップ制度が実現しました。

都市計画に関しても、計画の策定過程で住民の意見を反映させる仕組みが整備されました。

前区長の時よりも風通しの良い区政になったと思いますし、区議会の平均年齢が若くなったことで活気づいたように思います。


あとは小さな例ですけど手持ち花火が公園でできるようになったとか、そこに暮らす人たちにとってはささやかだけど嬉しい変化が続いています。


多くの変化はスケールが小さく、直接自分とは関係ないじゃん、と思うようなものかもしれません。


けど、そのスケールの小さい変化が積み重なってゆくと、確実に暮らしとか住み心地みたいなものは変化する。


また、その小さな変化こそがそこに暮らす自分ではない誰かにとっては人生を大きく左右する要素になりうるんです。


例えば、私は今回の都知事選で蓮舫さんに投票しました。なぜかというとそれは色々あるんだけど(水道の民営化に反対してるとか、プロジェクションマッピングに48億円かけるのをやめると言っているとか)、中でも、各人の公約の中で上位3人で同性婚に賛成している人は蓮舫さんだけだったというのも大きいです。

私はシスジェンダーの既婚者なので、何でお前、当事者でもないのにって思うかもしれません。都知事選だから同性婚関係ないだろと思う人もいるかもしれません。

私がそのトピックに注目する理由は、私にはレズビアンのカップルの友人がいて(もちろん入籍してません。現行の法律では出来ませんから)その人たちが今、子供を作ろうとしているんですね。でもなかなか出来ない。で、病院で不妊治療を受けたいけど、不妊治療って高いんです。で、都が不妊治療の補助金を出してるんですけど、これが「入籍した男女カップルに限る」ってなってるんです。だから彼女たちは対象外で受けられません。

もし蓮舫さんが当選したら、同性婚は無理でも不妊治療の対象を男女カップルのみから同性カップルとか、あるいは独身にまで広げてくれるかもしれない。これは願望です。でも、最初から「同性婚に反対です」って言ってる候補者とそうでない人では後者の方が可能性がある。子供を持てるかどうかって年齢のこともあるから早めに不妊治療を受けたら子供を持つ確率が上がる。それによってこのカップルの運命は変わるかもしれないんです。

リーダーである都知事が「いろんな人がいるよね、独身で子供産んでもいいし同性カップルがいてもいいよね、そこで行政が差をつけちゃいけないね」って思ってるのか「いや、結婚は男女でするもので、子供は ”伝統的に正しい” 家族のもとに生まれるものだ。そういう人しか支援しない」と思ってるかどうかで、その人たちの人生が大きく変わるかもしれない。

そうやって、(関心のない人には直接関係のない)小さな小さな行政上の変化が誰かの運命を大きく変える事があるんです。

介護福祉だってそうですよね。介護サービスが万全に受けられれば介護によって仕事を辞めなくても済む人が出るし、保育園がたくさんあって預ける場所に困らなければ仕事を続けられるお母さんもいる。

こうやって書くと、政治が関係してるのって大部分が、自分の意志以外に運命を左右されやすい立場的に弱い人たちなんですね。

そうした人が、政治を動かすリーダーの視界に入ってるかどうかって大違いなんです。



今回の都議補選でも、足立区は立民新人の銀川裕依子さんが約760票差で当選しました。

760くらいだとちょっとリアルな感じになってきませんか?

760人の人が「どうせ投票なんかやっても意味ないよ」と言っていたらこの人は受からなかったわけですから。逆に落ちた榎本二実子さんや自民陣営は「もう少し投票を呼びかけていれば」と悔しがっているかもしれません。


都知事選の何百万票、何十万票という数字を目にすると「なんだ、何やっても変わんないじゃん」と思うかもしれません。ただ、国政も都政も区政・市政も連綿とつながっていて、そこでの勝敗が大きな政治を動かすことにつながってくるんです。小さな変化が大きな変化を呼んでくるんです。非常にゆっくりですけど。


だから、政治ってそんなに遠いものじゃないし、確実に自分とつながっていて自分の暮らしや人生を左右するものなんです。


例えばあなたの好きなお店が近所にあるとして、その店が再開発でなくなるかも、となったら嫌じゃないですか?

その時に再開発に賛成の候補者と反対の候補者がいて、競り合ってたらあなたはどちらに関心を寄せますか?


政治ってそれぐらいのラフな、普段着のことなんです。でも、それがすごくそこに暮らす人にとっては重要なんです。保育園が駅前に一個できるかどうかでそこに暮らすお母さんたちにとっては死活問題だったりする。


だから政治って大事なんですよね。大きな政治の話じゃなくても、街とかそういう単位のね。


多分今あなたが「政治に関心が持てない」「誰に投票しても無駄」って思っちゃうのは、私含め上の世代の責任なんですよね。フランクに政治について話す空気を作らなかった。政治がガラス張りになっておらず、情報も手に入らない。マスコミも報じないし、「ナントカ党が」とか政党の話ばかりでプレイヤー個人について知る機会が少ない。誰に投票してもまあ変わらないよねという空気が漂っている。

もし上記のインタビューサイトみたいなのがどの選挙でもちゃんと作られて、みんなが読むようになったら変わると思うんだけど、それがなかなか難しい。

だからあなたが「投票しても無駄、何も変わらない」と思ってしまうのは当然だと思います。

なんですけど、もし身近なところで選挙があった時に(住んでる区とか市とか)「この人のこの公約が達成されたら、自分、もしくは身近な人たちの誰が幸せになるか?」と考えてみると少し違って見えるかもしれません。自分含め身近な人たちが幸せになったり不幸になったりする。それを基準に考えると、ちょっと選挙に行く意味みたいなのが見えるかもしれない。

それで「何も変わらないよ」と思うならその人たちの公約があなたに刺さってないんだと思う。でももし「この人の公約はいいな」と思ったら投票してあげると、当選しなくても「これだけの声があるよ」ということは社会に示されるし、当選した人もそれを受けて作戦を変えるかもしれない。政治というのは人気取りゲームなので、現職も人気が集まる公約を掲げたいものだからね。「あ、今回はギリ当選だったぞ、この公約が人気あるみたいだぞ、そしたら次回これ取り入れるか」ってなるかもしれない。

だから投票って大事だし、意味があるんです。


こんな感じです。


ありがとうございます。