似合う髪型を見つけるために必要なのは、まず引き算する事ー佐藤友美さん『女は、髪と、生きてゆく』ワークショップ
佐藤友美さんの『女は、髪と、生きてゆく』出版記念ワークショップに参加した。
一言で言うと、カウンセリングであり、セラピーだった。
この本はヘアライターとして実績を積まれてきたさとゆみさんの、髪型についての知識の集大成のような本であり、美容院でのオーダーの仕方が根本から覆るような本だ。
その内容を実践的なワークに落とし込み、「自分に似合う髪型」が見つかるワークショップが先日、朝日新聞デジタルのウェブメディア「かがみよかがみ」の主催で行われたので参加してきた。
①黒歴史の洗い出しと、本音で答える「理想の髪型」
最初は隣同士でペアを組み、「これまでで一番黒歴史だった髪型は?」という質問に答えてゆくワーク。
私の答えは「学生時代の茶髪プラス縮毛強制時代」。
だれ?って感じ。
当時、癖っ毛で剛毛がコンプレックスだった私にとっては、リーゼのCMのモデルさんみたいなサラサラ茶髪が憧れだった。
でも、今見たらあまりにも似合ってないし、周囲に流されている。
次に、「もし、なんの制限もなかったらやってみたい髪型は?」という質問について自由に書くワーク。
私は迷わず金髪と書いた。
これまで10年以上、染めずに元の黒髪のままで過ごしている。頭皮が弱くて染めるとめちゃくちゃ沁みるし、おまけに剛毛なので、簡単には染まってくれない。美容師さんにも「小野さんの髪は3回くらいブリーチしないと染まらないよ」と言われ、泣く泣く諦めている。本当は上野千鶴子さんみたいな赤髪とか、元でんぱ組の最上もがちゃんみたいな金髪ボブにしたいにも関わらず……。
でも、なんで私、そんなにも髪、染めたいんだっけ?
②髪のことを考えていて、なぜか隠れた願望に気付く
そんな事を考えていたら、第二のワーク。
「他人からどんな言葉で形容されたい?」
「綺麗」とか「可愛い」とか、とにかく出せるだけ、キーワードを出してゆく。
その中から、3つ、特に重要なキーワードを抽出する。
私が出したのは以下の三つだった。
・文章が面白そう
・元気
・生活感がない
このキーワードを見て気づいた。
私!!!!
めっっっっっっちゃくちゃ疲れてるわ!!!!!!!!!!!
この8ヶ月、長年信頼していた編集者さんとの間に色々あり、本当に自尊心が粉々になっていたし、相手から言われた嫌な言葉、された嫌な事がぐるぐるフラッシュバックして、涙が止まらず、本当にしんどい毎日を過ごしていた。もう本当に、何度も死のうかと思ったし、こんな事人生にあるのか?ってぐらいに傷ついた。
なんて言うか、本当に色々大変だったのだ。
今の自分はようやく回復しつつあるけど、それでも、これまでの緊張と我慢が一気に解けたぶん、しわ寄せのように疲れがドッと出てる。
もう、1週間くらい何もせずに寝たい。何にも考えたくない。原稿の事とか全部ほっぽり出して寝たい。
本当に疲れてる。やばいほど疲れてる……。
ダメじゃん!!!!!!
なんでこんな疲れてんの?私!意味わかんない!疲れてる場合じゃないじゃん!やりたいことも書きたことも死ぬほどいっぱいあんのに!!!!!!!
ああ、だから私、髪、染めたかったんだ。
やばいほど疲れてるからこそ、周りからは元気に見られたい。派手な髪の人に憧れるし、強そうで、何があってもへっちゃら!みたいな感じになりたいんだわ!!!
「かがみよかがみ」の編集長の伊藤あかりちゃんに「私も上野千鶴子さんを見習って真っ赤な髪にしたい」とメッセージするぐらいに!
まさか「似合う髪型を発見するワーク」の中で、今の自分が一番求めている物がわかるなんて思いもしなかった。
そんでもって、普段から人に元気そうに見られたいのは、自分の元気さに自信がないからである……。
一人一足の、ガラスの靴が見つかるワーク
髪型について考えるとき、私たちには考えるべき事が多すぎる。
長さは?髪質は?料金は?どの美容師さんに切ってもらう?綺麗にも見られたいし、可愛くも見られたい、元気そうにも、信頼されるようにも見られたいし、仕事のできる人間に見られたい、あ、でも彼氏にはもちろん可愛く思われたい。
色はどうする?ブリーチは?パーマは?トーンは?縮毛はどこに????
カットの技術が進化した今だからこそ、選択肢が無数にありすぎて、私はだいたいいつも、その中で迷子になっていた。
さとゆみさんのワークは、そうした無数の選択肢のなかで、必要ないものを引き算し、どうしても必要なものだけを教えてくれるワークだった。
まるで、散らばった無数の靴の中から、シンデレラのガラスの靴をすっと差し出されたような気分だ。
"なんで多くの選択肢に惑わされるの?
あなたに合うのはこれでしょ? " って。
さとゆみさんは
「みんな、どんな自分になりたい?とか悩みは?とかいきなり聞かれても、答えづらいよね。でも髪の事を挟んだら、なりたい自分について話しやすいし、髪の悩みについて話すことで、そこに宿ったそれぞれの人生の課題とか思いが解きほぐれることもある(意訳)」
ということをおっしゃっていた。
「髪は女の命」って言葉は古いけど、確かに、自分自身とイコールではないものの、ずっと人生をともに過ごしてきた唯一無二での存在であるからこそ、何かが宿るんだろうなあ。
会場ではさとゆみさんに相談しながら泣き出してしまう方もいたりして、すごかった。終わった後の、参加者の皆の満足そうな顔が印象的だった。
ワークショップの宣伝には「髪について悩んでなくても、とりあえず元気になりたい人は来て」と書いてあったけど、まさしくそんなワークショップだった。
一年の終わりまでには、まだ半月もある。それを鬱々としたまま過ごすなんて勿体無い。私には生まれつき与えられた素晴らしい髪と、なりたい姿があるのだ。
とりあえず、寝よう。寝たいだけ寝て、元気になったら、髪を染めに行こう。
ありがとうございます。