かっこいい尾美としのり
いつも大林監督の作品では、どこか親しみがあり、あんまりかっこよ過ぎない、時にクレイジーな役柄が多かった。
「ふたり」では、初めて、かっこいい役柄だった。
というか、私が初めて見たのが、この尾美としのりだったから、最初からかっこいいのである。
千津子の法事で途中、苛立ったように席を立ち、出て行く姿は、死んだ千津子のことをないがしろにして、妹と一緒になった自分が、千津子への想いすら忘却してしまっていたとハッと気づき、罪悪感でいっぱいになったせいだと思っていた。
妹と付き合い、妹しか見ていなくなって、千津子に最初心動かされていた過去があまりにも前世の記憶のように古い扱いになってしまった、そんな自分への苛立ち。千津子の存在すら、忘れていた自分への苛立ち。法事で、遺影と対面して、生身の人間だった千津子が、どこか古い伝説の少女にさせてしまった愚かな自分を、自覚したのだと思っていた。
ところが、桂千穂の当初のシナリオには、千津子への想いがいつまでも忘れられず、妹といつも千津子を比較して、やはり千津子が好きなのだという、引きずりすぎている想いが、彼の中での苛立ちであり、チグハグな妹との関係を自覚して、やり場のない怒りを生んでしまった己への怒りなのだと思わせる描写になっていた。
だとすると、「お姉ちゃんもうそれ以上言わないで」というセリフで成立する。
実加も、姉と比較されていたことはわかっていたんだね。
私の勝手な勘違いだったなあ。
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