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音声配信における編集【中級編】

音声配信における編集では様々な方法や手法があります。
正解はありませんが個人的な正解を以下に書きます。
この記事が、誰かの指針になれば光栄です。



鉄則

  • 悪い音質の素材は修復できない

  • 手順が増えれば音は劣化する

  • 良い音の環境で編集する

悪い音質の素材は修復できない

極論、これが全てです。
音声配信者がマイクにこだわるのはコレの為ですし、わざわざスタジオに入るのは「いかに良い音質で録音するか」の為です。
トークの内容が冴えていても、いかにトークがグルーヴしていても悪い音質のものはどんなに頑張って編集しても良くなりません。
また話者のうち誰か一人の音質が悪ければそれだけで編集が+1時間程度増えます。

多少の環境ノイズ、ペーパーノイズ、くしゃみ等の生理現象は仕方ありませんが、収録時にマイクに向かって話すときはなるべく良い環境で良い音を残す努力が必要です。
息がマイクに乗ってしまう場合はポップガードなどを使ってクリーンな音を収録しましょう。


手順が増えれば音は劣化する

音を良くするための音源編集と思ってる方も多いかもしれませんが、基本的に音源を修正するほど音は悪化していきます。(切り貼りは除く)

上記の良い環境で収録することとつながりますが、音声音源編集は音質を良くするためではありません
より聞きやすい音に加工するための工程ということを覚えておきましょう。


良い音の環境で編集する

音声音源編集において一番大事なことはいかに良い音が聞ける環境で編集できるかです。
良い音質で音が聞ける環境は以下の通りです。

PC内蔵スピーカー<スマホ内蔵スピーカー<イヤホン<ヘッドホン<<<スピーカー

コレについてはスピーカーの仕組みや、音の特性、電力と電圧と抵抗など説明が長くなるのでここでは省きます。
内蔵スピーカーは基本的にはNGと覚えておきましょう。

イヤホンよりもヘッドホンが優れている理由は再生時の音源と鼓膜の距離感等色々ありますので、興味のある方は調べてみてください。
ここではひとまずイヤホン<ヘッドホンと覚えておいてください。
有線(ワイヤード)、無線(ワイヤレス)に関しては有線の方が確実に音質が良いです。
ワイヤレス<有線

スピーカーについてはスイートスポットという概念があります。

簡単に説明すると、左右のスピーカーが直線的かつ放射状に発する音が重なる場所、かつ各スピーカーから等距離の場所のことです。

引用元: https://av.watch.impress.co.jp/docs/20071219/minfo.htm

スピーカーで編集作業する場合は、スイートスポットに当たる場所に確保しましょう。

また、イヤホン、ヘッドホン共に低音が強調される仕様であったり、高音が強調される物など様々です。
なるべくフラットな音で聴ける装置(モニター)で編集しましょう。



編集手順

  • 不必要な音を削除(標準化)

  • 足りない音を追加(強調)

  • 切り貼り作業

  • 聞きやすく整える(整合)

  • 確認

基本的にはこの順番がベストです。
「この順番を守って編集する」というルールを持つだけで編集時に迷うことが少ないのでぜひ覚えてください。
先に各種手順の考え方を説明します。

不必要な音を削除(標準化)

主に使用するエフェクター

  • ノイズ除去(Noise gate,Noise Reduction等)

  • リバーブ除去(De Reverb等)

まずはノイズなどを取り除きます。
鳥の鳴き声、エアコンの音などの音が発生しているノイズはもちろんですが、空間による反響音もノイズとして捉えましょう。

マイクは音源元(口元)の音を拾っているので、音源以外の環境から発生する音は全てノイズです。
まずは全てのノイズを可能な限り削除し、音源元からのみ発生した音と限りなく近づけていきます。

足りない音を補う(弱化、強化)

主に使用されるエフェクター

  • イコライザー(EQ)

この時点で、さらに音源元から発生した音とさらに近づけていきます。
マイクとの距離や、機器の特性上の問題により音源元から発生した音と、録音後データに差が出る場合があります。

例①マイクと音源元の距離が遠くて低音が拾いきれていない
このような場合はイコライザーで低音域を強化します。(500Hz付近)

例②マイクと音源元の距離が近く笑い声がキンキンする
この場合はイコライザーで高音域を弱化します。(1,000Hz付近)

イコライザーは見慣れない機材な上に、触り方もわからないから億劫になる方も多いと思いますが、イコライザーをかけたからといって音源が壊れるわけではありません。
ほとんどの編集ソフトでは後からエフェクトだけを削除することもできますので、怖がらずにいじって慣れましょう

注意!
ここまでの作業はあくまで「音源元から発生した音に近づける」ための作業です。
過剰な加工をすると後々の作業に影響が出る場合もあります。
また後戻りしたい場合にどこまで戻れば良いかわからなくなる可能性大ですので、過剰な加工は禁物です。


切り貼り作業

ここでようやく切り貼りの作業に入ります。
不要部分を削除したり、音楽を挿入したり。
ここは各番組にめざす形があると思いますので、多くは触れません。
自分が編集する際に良く使うショートカットコマンドなどを覚えておくと、より作業が早くなりますし、編集ソフトによってはショートカットコマンドを自分で編集できるので、必要に応じて設定しましょう。

主要コマンド

  • カット

  • コピー

  • ペースト

  • リップル削除


聞きやすく整える(調整)

主に使用するエフェクター

  • コンプレッサー

  • リミッター

  • リバーブ

  • エコー、ディレイ

最後は音をより聞き心地が良くするための編集作業です。
現在の音声では音源元から発生した音だけの質素な音になっていますので、ここからの作業で色付けをしていきます。

コンプレッサー

コンプレッサーとは小さい音と大きい音の差をギュッと潰してなるべく差を無くすエフェクターです。
急に声が小さくなったり、急に大声になったりすると聞き手がびっくりしてしまうので、コンプレッサーをかけます。
過度に効かせすぎると機械的で人間味が無くなりますので適度に。
喋ってる内容に集中してもらいたいナレッジ系や読み聞かせ系の音声配信にはマストでしょう。

リミッター

リミッターは大声や笑い声でメーターが振り切ってしまった時のために、強制的にメーターを止めるエフェクターです。

リバーブ

一番良く使われるエフェクターです。
お風呂場で声を発生した時のように空間の広がりを演出してくれます。
このエフェクターだけでもかなり聞き心地が変わりますので、全ての音声配信に必須のエフェクターです。
個別収録、対面収録、無指向性マイク、指向性マイク、パラアウト、身体的な声の周波数など、各条件によって設定方法がかなり変わります。

初めてリバーブを使う場合は、リバーブをかけたい音以外は全てミュートにして、色々設定をいじってみましょう。
正解はないので、自分が好みの設定が見つかったら、記録しておきましょう。

かけ方に正解はありませんが、過度に欠けすぎは禁物です。
音源元から発声された音(音像)をぼやかすためのエフェクターですので、極端に設定をいじると音像が崩れます。

エコー、ディレイ

エコーはやまびこ効果を作り出すエフェクターです。
タイトルやコーナーのがなり等で使われることが多いです。
終始エコーがかかっていると音が何倍にも反響して聞きづらくなりますので、使い方には注意しましょう。

また、エコーに似たエフェクトでディレイというものがあります。
どちらもやまびこ効果を作り出すエフェクターです。
エコー → 自然な反響音
ディレイ → 機械的な反響音
上記のように覚えると良いと思います。

ゲイン、パン調整

ゲインとは音量のことです。
話者二人の番組で一人が解説していて、一人が相槌を打っている。
こんな場面で両者の音量ボリュームが一緒だと解説に集中しづらい時があります。
そんなときには相槌役のボリュームを一時的に下げたりなどの音量の上げ下げ調整を行います。

パン調整とは音が聞こえる位置のことです。
話者を左右に別れさせることで空間にその場にいるかのような臨場感と奥行きを作り出すことができます。
L5に振ると少しだけ左のスピーカーから音が発生し、R30に振るとほぼ右のスピーカーからだけ音が発生します。

確認

ここまでの作業が終わったら一度モニター環境を変えて確認作業をします。
モニター環境とは聞いてる音を発生させている装置のことです。
私はいつもスピーカーで編集して、イヤホンで確認作業をします。

スピーカーは音がフラットで鼓膜との距離は空間を通して音を聞いています。
イヤホンは音が強調(自分のは低音が強い)されていて、鼓膜との距離・空間はほぼゼロですので、聞こえ方がかなり変わってきます。

ここでの確認でリバーブなどの空間系エフェクトの効き具合や、パンニングなど、調整の過程でいじったエフェクト類を修正していきます。


まとめ

今回は前回の初級編より少し込み入った編集方法をご紹介しました。
編集ソフトやデータファイルの違いがわからない方は初級編もご覧ください。

音の性質構造や、エフェクターの仕組みなど、細かい説明を省いているので荒削りな説明になっていますが、一番重要なことはアナタが作りたい脳内で再生されてる音を編集で実現することです。
細かいことは編集を重ねていくうちに嫌でも知識がつくと思いますのでまずは自分の編集方法におけるベースを作りことを第一にしましょう。
そして少しでも編集作業の負担が減れば幸いです。

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