森鴎外『舞姫』の考察: なぜ相沢は豊太郎の帰国をエリスに話したのか?

簡単な推理により、相沢に悪意や特別な意図がなくともごく自然に話す流れだったと分かります。3つの事実と1つの仮定をするだけです。

本記事では、既存の解釈に左右されず、色眼鏡なしで作品に何が書かれているかをみて考察します。

⬛事実
・相沢と腹をわって話をしたとき豊太郎は相沢の忠告に従いエリスと別れることを約束した
・天方大臣に豊太郎は一緒に帰国すると約束した
・帰国を約束してからすぐ、豊太郎は「何週間」も目覚めなかった。
⬛仮定
相沢が忙しくて会えず(※)、豊太郎はエリスとの関係を断つのは止めると相沢に伝えられずにいた。
(※ ロシア行きを相沢からでなく天方伯から直接に前日に聞いて知ったという状況からの推測)
⬛推理
豊太郎が目覚めない(事実)

相沢、天方伯らは豊太郎に連絡がとれない。いつ一緒に帰国するかの計画が立てられず困る。

相沢に家まで行って調べるよう天方大臣が指示を出す。

相沢がエリス宅を訪ねる。豊太郎がなかなか目覚めないことを知る。

相沢は、回復したらすぐに連絡するようにエリスに頼む。というのも、豊太郎とは一緒に帰国する予定で帰国計画をはやく立てたいから。

エリスは豊太郎の帰国予定を相沢の口から聞いて初めて知り驚く。どういうことなのか相沢を問い詰める。

相沢は自分の認識をそのまま話す。
この時点での相沢の認識は
 「豊太郎は日本に帰る。エリスとの関係は絶ちきる」

以上により、自然に導かれることが分かる。

⬛おことわり
本記事は、相沢に特別な意図が絶対にないといっているのではない点にご注意ください。必要ではない、と示しています。