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おいしい移動 ~あらゆる場所に同時にいる

知覚は今見ている世界の単一の写像ではなく、見回す、歩きまわる、見つめるなどの情報抽出の過程による恒久的なものである。

また、探索的移動によって動物は環境に定位できるという。それは、地形の鳥瞰図を意識の中に獲得するというよりは、環境内の不変項の抽出を通じて「あらゆる場所に同時にいる」ような知覚を得ることである。(その中で、現時点で見えるものは自己を特定する。)

つまり、移動は生きていくための情報を得るための重要な要素であり、これまで書いてきたことと同様に、そこに意味や価値が見いだせた時には、それをおいしい移動と呼べるだろう。

また、「あらゆる場所に同時にいる」ような知覚を得ることによって、実際にそこに行かずとも意味や価値を見出だせるようになると思われる。例えば、見上げた先に居場所や動線がちらっと見えるような、建築の構成にわくわくすることがあるが、これは環境に定位できたからではないだろうか。(このことを場所のチラリズムと呼んでいた。) 

さらに、この定位の感覚は社会的に共有される可能性があり、「そこに住んでいること」といった場所への愛着やその共有の礎になるように思われる。(このことは後で再度述べたいと思う。)

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