おいしい姿勢・音・手触り・味と匂い・見え 補足

■『アフォーダンス-新しい認知の理論』1994 佐々木正人
『ギブソンは、脊椎動物は五種類の知覚システムをもつとした。一つは大地と身体との関係を知覚するためのシステムで、他のシステムの基礎となる「基礎的定位付けシステム」である。それ以外に「聴くシステム」、「触るシステム」、「味わい-嗅ぐシステム」「視るシステム」がある。感覚器官をもとにした古典的な分類である「五感」では、多様な知覚体験を説明できない。だから私たちは「第六感」などという神秘的な「感覚」の存在を仮定せざるを得なかった。しかし「五」という数には意味がある。それは、「感覚器官」の種類の数ではなく、「環境への注意のモード」の種類と考えるべきなのである。』(佐々木)
注意のモードは能動的なものであり、従来の受動的な知覚イメージを脱する必要がある。

■『包まれるヒト―〈環境〉の存在論 (シリーズヒトの科学 4)』2007 佐々木正人
『やはり、すべてのつながりは、自分自身の安心できる定位の場から始まるのだと思います。一番基本的なことですが、それが「世界とつながる」ポイントです。』(野村寿子)
脳性麻痺の方などのリハビリ用の椅子を作っている氏は、姿勢を矯正するようなこれまでのつくり方ではなく、姿勢をサポートをしながら人間が椅子との関わりあいの中で安心できる姿勢を探っていくようにつくり方を採用する。椅子の利用者は椅子に定位の場を見つけることでさらに周りの環境との関わりを拡げていく。これは後で述べる痛みから遊びの文脈への転回に安心できる定位の場が必要であることを示している。

■『レイアウトの法則 -アートとアフォーダンス』 2003 佐々木正人
コーヴァリエーションはギブソンが知覚系を構成する5 つのシステムの関係を名付けたもので、複数の知覚系が関係を持ちつつ同時に変化して、それが一つの意味のありかを特定する情報になるような関係である。たとえば炎は音や熱や匂いや光などが共変した一つの情報である。建築を一つの知覚系だけで考えるのではなく、さまざまな関係性のもとで考えることも必要であろう。

■感じる機会 2002 オノケンブログ
『いつからか、人は目に見えるもの、はっきりと証明できるもの意外は信用しなくなってきたように思います。人間の感じる力が退化していくのではないかと危惧することはないでしょうか?』
『便利なことは、ある意味で快適なことではありますが、それは与えられることが多いゆえ、じっくり考えたり感じたりする機会を奪ってしまいます。』
『光や色、音、匂い、感触などを感じることによって得られるものはたくさんあります。音や匂いがある記憶を呼び覚ます、という経験は誰にでもあると思いますが、そのような機会を失いつつあるように思います。そのほかにも、動物の本能に驚かされるように、人間にもさまざまな感じる力があると思います。僕を含め、その力を無駄にして生活していることが多いのではないでしょうか。それはたぶんもったいないことのような気がします。』(太田)
この時考えていたのは、まさに知覚の能動性についてであろう。また、もし知覚の能力が環境によって衰えるのであり、それがもったいないことなのであれば、そこには次の世代への責任があるはずである。

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