はじめに(なぜBIM化へと舵を切ったのか、と、なぜこれまで踏み込めなかったのか)

2019年6月末に、VectorWorksをそれまでのFundamentalsから2019 Architectへと変え、BIM化へと舵を切りました。
その後、一つの物件を実施図面をまとめるために試行錯誤をくりかえし、とりあえずは一つのルーチンができたのでそこで考えたことなどを覚え書きとしてメモしていきたいと思います。

なぜBIM化へと舵を切ったのか

BIM化(今のところは2D作図から3D作図への手法の変更と言った方が正確かもしれません)へと舵を切った一番の理由は、設計業務の省力化・効率化を図り、検討の時間をより多く取りたいということでした。

一人で設計事務所をしていると、仕事が集中し実施設計の時期が重なると、図面化その他の”作業”に時間を取られてしまい、案そのものを検討しブラッシュアップしていくための時間がどうしても不足してしまいます。(当然、図面化の作業の中にもブラッシュアップのためのきっかけがたくさん潜んでいるのですが、それは別の議論として残しておきます。)

今までも、検討は3Dを中心に行っていました。
3Dを立ち上げて、その中をウォークスルーで何度も行き来しながら気になったところに変更を加える。それをまたウォークスルーしながら確認する。ということの繰り返しを中心に設計を前に進めていたので、ある程度の段階で頭の中にはほぼ全体が見えていて、そのかなりの部分は既に3D化されていました。
なので、それを2Dの図面に変換することは作業としての意味合いが強く、できれば省力化を図りたい部分でした。

その部分を効率化することが今の業務形態には必要不可欠との判断から、BIM化へと舵を切ったのです。

これまでBIM化へ踏み切れなかった訳

しかし、それに不安がなかったわけではありません。

これまでも、BIM化へと舵を切ることはいつでもできたはずですが、踏み切れなかったのにはいくつか理由・不安材料がありました。

不安その1.金額に見合った見返りがあるか。・・・BIM化をすすめるにはそれなりの金額のソフトウェアと、それなりのスペックのハードウェアが必要です。果たしてそれに見合うだけの効率化が図れるかどうか、単純にそういった不安が一つありました。

不安その2.設計内容が縛られないか。・・・BIM化による効率化を進めることは、ソフトウェアに身を委ねることとも重なります。ソフトで対応できないがために設計内容が縛られてしまうのではないか、という不安が大きくありました。それまでは、設計内容が縛られてしまうことを嫌って、意識的にVectorworksを汎用CADとして利用していたので、ソフトウェアの機能に身を委ねることはCADに対する姿勢を根本的に変えることでもありました。

不安その3.ブラッシュアップのためのきっかけを失わないか・・・上の方でも書きましたが、2D図面化は作業的意味合いが多い、とはいえ、その中で気づき、案をブラッシュアップするきっかけを得ることも多く、その作業をカットすることはその機会を失うことになるのでは、という不安がありました。検討の時間を確保するために効率化したのが、検討の質が下がっては本末転倒になってしまいます。

不安その4.図面表現の質が低下しないか・・・東京で修行していた頃、最初の担当案件ではCADの利用を禁止され、フリーハンドで図面を書くことを強いられました。その中で先の太さの使い分け等、図面表現としてどういうことに注意しないといけないか、を叩き込んでもらいました。その後、CADで図面を書く際も、建築を作りあげるための情報ツールとして、どういう表現が見やすく、また間違いが少なくなるか、を考え続けて来ました。しかし、BIM化へと舵を切った時に、果たして今まで考えていたような図面表現が可能なのだろうか、自分たちのメインの成果物、図面の質が低下しないだろうか。という不安が大きくありました。

これまでは、主に、これらの不安要素があったため、BIM化に踏み切れなかったのですが、周囲の同業者の動向や時間的な現状を考えると、これはもう踏み込んでみて考えるしかない、と思い、えいやと舵を切った次第です。

長くなったので、次回へ続く。


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