おいしい構成 補足

■『建築構成学 建築デザインの方法』2012坂本一成, 塚本由晴他
『このような建築の内在的な構造は、比喩的にいうならば樹木が重力や太陽との関係をその成長の原動力としていることと似ている。[…]したがって、樹木の構成にも重力や太陽を媒介した構造―そのために重力や太陽に対して常に実践的でありうるような―が内在化されているのである。これと同様、建築の構成における重力や動線を媒介にした構造は、それを無視してしまえば建築空間が成り立たなくなるがゆえに本質的であり、内在的なのである。』
『したがって、タイプの有効性が建築を分析することに限られてしまう。これに対して、ある構成形式の範囲で繰り返し用いられるものとして説明される建築のタイプは、逆にまだあまり試されていない構成形式の可能性を、形式的な想像力によって開くことができるので、分析のみならず創作的な思考にとっても有効である。また、タイプにおける要素の選択と配列の関係を定形として、要素を変え、配列を変えることで、慣用的な関係を強調、逸脱、あるいは違反し、その階層での構成形式を新たな文脈に位置づけ直すこともできる。これにより全体と部分の関係を不安定にしつつ、新たな均衡状態や緊張関係を見出すことによって、建築の意味作用を活性化することが、構成による修辞である。』(明記はないがおそらく坂本一成, 塚本由晴が関係している文章だと思われる)
構成学を分析だけでなく実践的に設計に用いるためには内在化や逸脱というような、環境との関り合いの文脈に位置づけるような道具が必要であり、それによってはじめて、構成を流動的な設計のはたらきの中に置くことができるようになると思われる。

■『生態学的視覚論―ヒトの知覚世界を探る』 1979(翻訳1985)J.J. ギブソン
ギブソンは動物に意味のある環境を扱う幾何学(生態幾何学)の要素として次のようなものを挙げて、それぞれの生態学的な意味を考察した。【面】地面、開けた環境、囲い、遊離対象、付着対象、部分的囲い、中空の対象、場所、シート、割れ目、棒、繊維、二面角(縁と隅)、湾曲した凸面体、湾曲した凹面体など【地形】路、障害物、妨害物、水際、崖ぶち、踏み台、斜面、避難所、水、火、対象、道具、他の動物、絵画・彫刻など。それらは人間にとって生態学的な意味を持つ。それらをレイアウトすることで意味に文脈のようなものを与えることができるように思う。

■『建築造型論ノート』2004 倉田 康男
この本の内容としてはソシュールなどの言語学を基盤とした造型論である(倉田の講義ノート用の資料を教え子達がまとめたもの)。このような造形論も環境の意味や価値、関り合いの流動的な文脈に置かれることで初めて生きたものになるように思う。

■カタルタ PLAYING STORY CARDS meddo lab
『「カタルタ」は、発想力を高め、コミュニケーションを豊かにするカードセットです。発見を促し、視点を変えるスキルを育てます。[…]“語り” を“ 遊び” に変え、“遊び” を“ インスピレーション” へと導くツールとして開発されました。』(カタルタHP より)
カタルタはトランプのオモテ面に数字とスートとリンクワード( 接続詞、副詞等)がプリントされたものである。以前息子の日記にカタルタを使用させてみた時に、接続詞が文章の組み立てにどれほど大きな力を持ってるかを痛感したことがある(それまでろくに日記を書けなかった息子が急に文章を自発的に展開し出した)。言葉が接続詞によって関係性を持つ一連の文章になったように、設計においても、環境内にあるモノを連続的に関係性を生み出しながらつなげていくような、「何か」が考えられるような気がしている。この建築論も、その何かになればと思いながら書いている。

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