[日々鑑賞した映画の感想を書く]『日本沈没』(2006年 樋口真嗣監督)(2022年1月9日記)
2本ある「日本沈没」のリメイクの方、「シン・ゴジラ」や「シン・ウルトラマン」の監督で、平成ガメラの特撮監督で名を上げた樋口真嗣の監督作品。Filmarks等の批評サイトではめちゃくちゃ評判が悪くて覚悟を決めて見たが、ハードルを下げたせいか意外と悪くないと思った。特に大地震や火事、噴火、ビル倒壊、津波、洪水など天変地異の特撮シーンはさすがに樋口監督、迫力があるし、今となってはチャチさが気になる1973年版より全然いい。主演の草彅剛(小野寺役)は1973年版の藤岡弘とは全く正反対のキャラクターだが狙いはわかるし悪くない配役。相手役(阿部玲子役)の柴咲コウも原作とは全然設定が違うが健気な感じでいい。
でも芝居の演出が全然なってないというか、会話のシーンがただ単にプロットを進めるためのドライな手続きというか情報伝達の場に過ぎなくなっていて、人間同士が会話している感が全然ないのが残念。複数の人物が同じシーンにいても誰かひとりが一方的に喋って、それに対する他人物のリアクションが全く映されないまま場面が切り替わるシーンが多いので、余計にその思いは強くなる。今作は原作を大きく改変していて政治家やエリートの動向ではなく草彅と柴咲の恋愛や市井の庶民にフォーカスを当てた作品になっているので、この欠点は痛い。今はそんなことないだろうけど、この頃は怪獣やミニチュアセットの扱いは長けていても、人間のお芝居は苦手だったんじゃないか>樋口監督
それでもこないだのドラマ版『日本沈没』よりはよほどマシだけど、全体に暗いシーンが多く、テレビ画面ではディテールがよくわからないのが残念。わずか16年前とはいえ、レンタルDVDの画質は高解像度の現代有機ELテレビで見ると相当につらい。レストアしてブルーレイで出し直せば評価も変わるだろうけど、津波のシーンが頻繁に出てくるのでもうテレビでは流せないだろうし(3.11以降、津波や大災害のシーンは地上波/BSでは流せないらしい)、樋口監督の集大成ボックスでも出ない限りレストアも無理だろう。サブスクに来るのも期待薄なので、レンタルDVDで救出するしかないのがもったいない。
[豆知識]
樋口監督の盟友・庵野秀明と安野モヨコが同じシーンでカメオ出演。平成ガメラと両方出ている俳優は前田愛と手塚とおると松尾貴史。シン・ゴジラと両方出ている俳優はピエール瀧と手塚とおると國村隼。特に瀧は2作品とも自衛隊員役なのが面白い。手塚とおるさんはガメラ、ゴジラ、日本沈没と樋口真嗣肝いりの特撮大作3作品を全制覇。(2022年1月9日記)
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