[映画評] 『オール・シングス・マスト・パス』(2015年 コリン・ハンクス監督)

https://www.youtube.com/watch?v=JuHZUqcdcyU

 こんなのがあったとは全然知らなかったタワーレコードのドキュメンタリー。監督はトム・ハンクスの息子だそうで、1960年の起業から2006年の廃業までを関係者の証言を交え描く。創業者を始め元従業員たちの回顧談にはかなり美化も入ってそうだが、自由で風通しがよくて家族的な社風が語られる。レコード小売りに革命を起こして会社が軌道に乗り全米から海外にも支店を出して……というあたりの描写は勢いがあって楽しい。とはいえ会社が大きくなるにつれ、そんな社風もだんだん失われ組織の硬直化が始まり内紛が起きる、というのはよくある話ではある。映画ではそこまで語られないが、後期タワーの場合、同業他社に比べ時代遅れ感が甚だしく、お買い物するのでもダサくて、あの黄色い袋持って歩くのが恥ずかしい、という感じだったと思う、特にアメリカでは。それが配信時代になってトドメを刺されたという感じか。

 映画のラスト、創業者が、別資本別経営になって存続する日本のタワーを訪れ、従業員たちに拍手で迎えられるシーンはグッときちゃった。

 客として通っていたブルース・スプリングスティーンやエルトン・ジョン、従業員だったデイヴ・グロールがコメント出演。ブルースさんのコメントはこんな映画でもいちいち詩的ですねえ。「あの頃、都会の行き場のない若者たちがタワーに集まっていたんだ」とかねw

 私にとって重要なレコ屋と言えばシスコとエジソンで、量販店ならHMVとユニオンなので、タワーはそこには入ってこない。しかし今まで投下したお金の総額で言えばもしかしたら一番かも。やっぱりレコ屋は<マイホーム>ですね。

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