ライヴ覚え書き(2024/5)

2024/5/31
ヤマジカズヒデ@阿佐ヶ谷TABASA

 ヤマジのソロ・ライヴで、ギターインストによるアンビエント演奏。こういうコンセプトのライヴは絶対良いはずと思い出向いたら、期待通り素晴らしいライヴだった。最後はギター弾き語りの歌モノになり、なぜかミッシェルガン・エレファントのカヴァーまでやって、一体どういう趣旨のライヴなんだかわかんなくなってたけどw ヤマジはカヴァーもこだわりなくやるのでこれもお楽しみのひとつ。写真家の井上恵美梨さんとお話できて、11日の取材(千川新)の撮影をお願いした。

2024/5/27
ジャングル@o-east

 ロンドンのバンド。メンバー3人とサポート3人。予想を遥かに上回って徹底したダンス・エンタテインメントで非常に楽しかったです。90年代であればアシッド・ジャズとか、ジャミロクワイみたいなことをやってたかもしれないが、昔のアシッドジャズみたいなセッションぽい演奏とかインプロやったりソロ回しをダラダラやったりせず、非常に簡潔な3分間ダンスポップをほとんどメドレーのように立て続けに演奏する。1時間20分弱の演奏で、音が途切れることがほとんどなかったんじゃないか。そしてジャミロクワイのような、フロントマンを前面に出したスターエンタテイメントでもなく、メンバーのキャラクターを前に出すことなく集団戦でダンスエンタテイメントに徹底奉仕する。背面のスクリーンの照明というか映像が後ろから照らすのでメンバーの顔が逆光であまり見えないのはレイヴ時代のロックバンドのライヴのようでもあったが、あんな気取った感じや勿体つけた感じはなし。とにかく気取りとかカッコつけが全然なく、何も考えずただただ踊りまくれる感じが最高だった。アシッドジャズ、ファンク、ディスコ、ハウスからカーズやブラーみたいなシンセポップまで、音楽的にも変化があって全然飽きない。外人客が多かったせいか会場のお祭り騒ぎも最高潮で、オレの前にいた逆ドリカム編成の黒人男女3人とか、ブンブン手をぶん回してノリノリ。あまりに前半に暴れすぎたせいか後半大人しくなってたけどね。

 正直言って来年のフジロック、ホワイトステージのトリでぎゅうぎゅうづめの15000人を踊らせる図がすぐに浮かんでしまった。たぶんo-east規模の会場で見られるのは今回が最後じゃないですかね。いやー最高でした。サポートのどんぐりずも、初期電気グルーヴやアルファみたいでかなり良かったけど、今回ばかりはトリが全部持ってきましたね。

2024/5/21
L'Rain@ビルボード東京

 レコード聴く以外の情報は入れずに見たが、思ってたのと全然違うライヴで、エクスペリメンタルR&B…というよりはジャズ色が強い。ご本人はベース弾いたり機材操作しながら、裸足でペダルを踏んで歌う。歌というよりは演奏に比重がかかっていて、ポストロックとスピリチュアル・ジャズとアンビエント・エレクトロニカの融合というか。一曲目とかシガー・ロスとボーズ・オブ・カナダとファラオ・サンダーズの合体みたいでめちゃくちゃ刺激的。ビルボードの常で演奏中に後ろのカーテンを開けるんだけど、18時からの回でまだ外が明るくて、サウンドと相まってなんだか白昼夢を見てるような、現実と非現実、日常と非日常の狭間でゆらゆら漂うような感覚が非常に面白かった。
 2デイズの2日目の1st Showでガラガラ。ほかの回がどうだったのかわからないけど、これはたくさんの人に見られるべきだった。

2024/5/15
Whatever The Weather @ 渋谷サーカス
2024/5/17
Loraine James @ 渋谷サーカス

 2年前と同じハコで、同じアーティストの公演を見る。2年前はロレイン・ジェイムズ名義の方は何かと重なってて見られなかったけど、今回は両方がっつりと。

 15日はWhatever The Weatherで、サポートがaus。両方とも素晴らしいライヴで、美しく繊細な音の流れに身を任せてるだけで夢見心地になる。音も抜群に良かった。

 そして17日はLoraine James名義。サポートは蓮沼執太。蓮沼フィルとは打って変わって攻撃的かつ実験的なエレクトロニカで攻めまくった演奏は、そうそうこの人は元々こういう人なんだよと膝を打ちたくなるような痛快なライヴ。そしてロレインさんはそれに輪をかけてハードでノイジーでミニマルでインダストリアルでダブステップな演奏で、Whateverと同じアーティストとは思えないぐらい全然違うライブで面白かった。クオリティの差ではなくサウンドの違いに過ぎないわけだが、客の入りはロレイン名義の方がギチギチの満員でwhateverはちょぼちょぼ。一昨年よりは入ってたかなあ、ぐらい。電子音楽家としてのロレインの飛び抜けた才能はどちらにも明らかだけど、もっとWhateverの方にも客が入って然るべきと思った。

 しかしここに来て風邪が本格的に悪化し、ライブの最中は相当辛かった。一昨日の雨が良くなかったかなあ

2024/5/11
マリーザ・モンチ@恵比寿ガーデンホール

 昔の知り合いにやたら会ったライヴ。音源は親しんでいたが、ライヴ見るのは初めて。最初はPAのバランスが良くなくてヴォーカルが埋没して非常に聞きづらく、会場もいろんな意味で騒がしくて落ち着かず、こりゃ最後まで付き合うのはつらいかな、と思っていたら、PAバランスは徐々に良くなって、会場の雰囲気も落ち着いてきて、最終的には楽しめた。

 観客とアーティストの関係が密で、多くの曲では合唱が起こり、終始賑やかでなごやかな空気。じっくり歌を聴くという雰囲気にはならなかったけど、これはこれでいいと思う。めちゃくちゃ声量があるとか、圧倒的な歌唱力でねじ伏せるとか、ものすごくエモーショナルな表現で圧倒するとか、そういうタイプの歌手ではなく、そよ風のような軽やかな歌いぶりが持ち味で、そういう魅力はよく出ていた。投げキッスがよく似合う、華やかな美人歌手が笑顔を振りまきながら、馴染みのヒット曲を次々と披露する。そりゃ楽しいに決まってますよね。

 でもスマホを掲げてる客が本当に多くて参った。それも静止写真じゃなく動画を撮るためにずっと頭上にスマホを掲げてるバカが多い。後ろの方にいたので本当に目障りだった。みんなやってるから自分もいいだろうと思って、後ろの客が迷惑してるなんて想像もできないんだろう。禁止されてないから何やってもいいと思い込む。そのくせ撮影されてる映像は前の客の頭が写り込んで、見るに堪えないようなクオリティなのは後ろから見てるとよくわかる。そんなヒマがあったらじっくりアーティストの歌や仕草や会場の雰囲気を記憶に焼き付けた方がずっと有意義だと思うけど、形に残らないと不安なのかもね。形に残らないのがライヴのいいとこなのに。スマホ撮影を禁止しろとは言わないけど、一定のエリアの中だけ許可にしてほしい。ほんと迷惑。アーティストの演奏関係なくずっとデカい声で雑談してる外人客にも腹が立ったが、スマホ客はそれ以上に最悪だ。

2024/5/8
World's End Girlfriend @ Exシアター六本木

 強烈極まりない圧巻の2時間半。ギター、ベース、ドラムス、キーボード、ヴァイオリン、チェロの6人編成のバンドに、曲によって女性ヴォーカルやポエトリーリーディングが加わる。

 とんでもなく大きな音量、そしてとんでもなく良い音に圧倒される。ラウドでノイジーでヘヴィでロマンチックで、そしてどこまでも美しい。凄まじく情報量が多く、静と動を激しく往還するドラマチックな構成と緻密な音像が圧巻すぎた。とにかく音も演奏も映像も照明も音響も、細部に至るまで絶対におろそかにせず、絶対に妥協せず、とことん納得いくまでやり切る執念が凄まじい。その強固な美意識がエネルギーの粒子になって、聴く者の全身の細胞を活性化するとでもいうか。基本はダークでゴシックでシューゲイズなエレクトロニカだけど、終わったあとはとてつもなくポジティブなパワーをもらった気分だった。今年度のベストライブと言うしかない。

 それにしてもあれだけでかい音なのに全然飽和しておらずどこまでもクリアな音響が凄い。ハコがいいのか、エンジニアの腕か。滅多にライヴはやらないけど、次があるようなら絶対に見逃し厳禁!

2024/5/6 
Serph / 月見ル君ヲ思フ

 気鋭の電子音楽家のソロ・ライヴ。完全独立してインディペンデントになって初のライヴ。もう少し大きな会場でもできる集客力はあるが、ひとりでなにもかもやってるので、とっかかりとしてひとまずこれで、ということらしい。彼らしい繊細でロマンティックな音像は素晴らしかったが、もう少し全体の構成などにメリハリをつけたほうがいいと思ったのと、少し音が小さすぎると感じた。本人があまり大きな音で聴くのは好きではないから、ということだったが、ライヴの場合、本人がやりたいことと同じぐらい、客にどう聴かせるか、どう聴かせれば気持ちよくなってもらえるか、という視点も大事なのでは、という気もした。ひとまず次のライヴを楽しみにしたう。

2024/5/2
Canis Lupus @ 高円寺HIGH

 故北村昌士のバンド、Canis Lupusの再結成ライブ。北村(ヴォーカル、ベース)の代わりはZOAの森川誠一郎。ギターは末期キャニスに参加していたというヤマジカズヒデ。唯一のオリジナルメンバーである箕輪政博(ドラムス)がヤマジに話を持ちかけ、ヤマジが森川を紹介して実現したらしい。ヤマジから再結成の話があると聞いたのは去年の11月ごろだったか。

 といってもかつてのキャニスのライブは数回しか見てないし、それも朧げな記憶しか残ってない。なんなら北村のもうひとつのバンド、YBO2の印象とごっちゃになってたりする。でもいざ見たら、なんだか昔の記憶がまざまざと蘇ってくるようだった。バンドの具体的な音とかよりも、当時の雰囲気とか、自分のその頃の状況とか。なんかみんな黒い格好して、暗い顔して見てたなあと。当時のままにキャニスの音は暗くて重くて陰鬱でややこしくて、別に聞いてて楽しい音楽じゃないし、癒されるわけでもないし、もちろん踊れるわけでもモッシュしたくなるわけでもない。いや、当時はそれなりに楽しんでたはずだが、今となってはよくわからない。そんな楽しくない音楽を聴いていたのはそうせざるを得ない切実さがあったからだが、そういう音を、表現を求めていた頃の自分をまざまざと思い出したというかね。80年代って面白い時代だったんだな。

 「天使」はヤマジがソロでカバーしてたのでヤマジが歌うかと思ったが森川氏が歌う。声とかヴォーカルスタイルは森川氏の方が北村に近いかなあ。でも歌や演奏技術は森川氏の方が上だから、演奏の安定度や鋭さで言ったら今回の方がはるかに上なんでは。天国の北村センセーも、オレがやるより上手いよ、なんて苦笑してるかも。ほぼ昔のままのアレンジで(たぶん)演奏してるはずなのに全く古臭く感じなかったのは、このスタイルや精神性を受け継いでる人がいなくて過去と断ち切れているからか、それとも現役バリバリのヤマジや森川が今の感覚を注入してるからか。

 客層はやはり難儀そうなオヤジが多かったが、かつてのトランスギャルらしき女性もたくさん。さすがに若者は見なかったw

 会場では超久々にフールズメイト石井孝浩にも会ったよ。見た目全然変わってなくて笑った。なんだかんだ言って楽しい夜でした。

よろしければサポートをしていただければ、今後の励みになります。よろしくお願いします。