[日々鑑賞した映画の感想を書く]『1999年の夏休み』(1988年 金子修介監督)(2021/10/13記)

 レンタルDVDにて鑑賞。萩尾望都「トーマの心臓」を原案として劇作家の岸田理生が脚本を書き、平成ガメラの金子修介が監督した作品。初めて見たが、これは大傑作でしょう。

 自然に閉ざされた寄宿舎での一夏の、愛と葛藤の物語。登場人物は4人の少年のみ。これがデビュー作となった深津絵里を始めとする少女たちが少年を演じ、しかもアテレコで別の声優が吹き替える、という多重構造が現実と幻想の皮膜を縫う。製作年である1988年から見た1999年という近未来、ノストラダムスが世界が破滅すると予言した世紀末を舞台に描かれる「ノスタルジックな近未来」の非日常感が素晴らしいファンタジー。磨き抜かれたセリフ、丁寧で繊細な演出、美しい映像、そして少年(少女)たちの初々しい演技。BLものとカテゴライズするのは簡単だが、それだけで片付けるのはもったいない。音楽も素晴らしいです。音楽監修に柳田ヒロとクレジットされててびっくり。

 金子修介はどんなジャンルの映画もそつなくこなす優秀な職人監督、というイメージだが、こんな壊れそうに繊細で美しい映画も撮るんですね。2018年に30周年記念でデジタルリマスター版が公開されたらしいが、それを見てもう一度改めて評価したい作品。つかデジタルリマスターまでやってなぜブルーレイ出さないんですかね?(2021/10/13記)

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