[日々鑑賞した映画の感想を書く]『キャンディマン』(2021年 二ア・ダコスタ監督)(2021/10/16記)

 各映画レビューサイトの評判は決して良くないが、やはり映画は見てみないとわからない。これは傑作です。

1992年オリジナル版『キャンディマン』(バーナード・ローズ監督)のリメイクとかリブートとか言われてますが、これは完全に続編ですね。オリジナル版は、殺人鬼キャンディマンが、暗い差別と暴力の歴史を背負った黒人であること、しかも黒人コミュニティの中で語り継がれる神話的存在と規定されていたのが、ホラーとして画期的だった。ジョーダン・ピールが脚本を書いたこの作品はその設定と世界観を引き継ぎ、さらに深く黒人たちの悲劇の歴史に焦点を当てたような作品になるのは当然と言える。キャンディマンになってしまった、ならざるをえなかった者たちの悲劇。スプラッタ・ホラー映画につきものの凄惨な殺戮シーンは今作ではほとんど描かれず、怖いというよりは突き刺すような悲しみや痛みを強く感じる作品になっている(それは前作でも同じだが)。鏡に向かって5回キャンディマン唱えるとキャンディマンが出てきて殺される、というのは当然の前提で、そこをサスペンスのネタにしてない。なのでただ怖がらせるだけのそこらの普通のホラー映画を期待すると失望することもあるかもしれない。

 オリジナル版で主人公をつとめた白人美女ヴァージニア・マドセンは、今作ではナレーションの一部とモノクロの顔写真で登場。ほかにもオリジナル版の重要要素が本作でも登場する。オリジナル版で印象的だったフィリップ・グラスの音楽も、アレンジされて今作でも使われている。オリジナル版へのリスペクトを込めながら、今の時代にふさわしいアクチュアルなテーマ性をアップデートした本作。これから見る人はオリジナル版を予習したほうが、より理解が進むと思います。(2021/10/16記)


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