[ライヴ評] ウェット・レッグ (2013/2/14 東京・o-east)

[ライヴ評] ウェット・レッグ (2013/2/14 東京・o-east) 『しんぶん赤旗』2013年3月6日付けに掲載。

『しんぶん赤旗』2013年3月6日付け

 英国出身のロック・バンド、ウェット・レッグの公演を見た。デビュー・アルバムにしてグラミー賞、ブリット・アワードという米英の主要音楽賞を総なめした直後というこれ以上ないタイミングでの来日である。

 メンバーはヴォーカル/ギターのリアンとギターのへスターという女性2人。サポート3人がバックアップする5人編成のライヴだ。90年代ロックに通じるざっくりとしたギター・ロックは、奇をてらったところのない正統派だが、予想以上にしっかりとした骨太な演奏で聴き応え十分。ポップで人懐っこい楽曲は時に観客から大合唱も起きる。

 グラミー受賞のずっと前から彼女たちを応援してきた熱心なファンが詰めかけ、初来日ながら会場の雰囲気はとてもいい。友達と話しているようなボソボソとした喋りや、愛嬌のある表情や、時に気恥ずかし気な面持ちからうかがえるのは、今が旬のバンドの勢いというよりは、どこにでもいる女性の飾らぬ等身大の姿だ。その歌はウイットやアイロニーが利いていて、しかもただ楽しいだけでなく、30代手前の不安や孤独や哀しみも微かに滲ませる。だから表現に奥行きがあり、飽きさせない魅力がある。

 演奏時間は1時間にも満たず、アンコールもやらない。ベタつかない潔さが気持ちいい。今後年齢を重ね経験を積んでも、彼女たちのロックは瑞々しい新鮮さを失わずにいられるはずだ。(小野島大・音楽評論家)

よろしければサポートをしていただければ、今後の励みになります。よろしくお願いします。