[日々鑑賞した映画の感想を書く]「竜とそばかすの姫」(2021年 細田守監督)(2021/7/27記)

 iMax レーザーにて鑑賞。

 最初に断っておくと、私は細田監督の作品は基本的に好きで、「時をかける少女」以降の劇場作品は全部劇場で見ているし、ブルーレイもほぼ持っている。なかでも「時をかける少女」から「おおかみこどもの雨と雪」までの3作品は高く評価している。でも近作の2本はイマイチ。そういう立場からの評価です。

 見終わったばかりの感想として「めっちゃ大がかりな中村佳穂のプロモーション映像」「中村佳穂という巨大な才能を一般層にまで知らしめたのが本作の最大の意義」とTwitterに書きましたが、もっと詳しく言うと「脚本上の不備や欠陥を中村佳穂の歌と演技の才能が補って余りあるが、ラストの展開があまりに酷くてカヴァーしきれず、結果マイナス点」という作品でした。

 「脚本上の不備」については以下の指摘あり。


 私もお話の不自然さや矛盾は気になりつつも、要所で繰り出される中村佳穂の歌、特にベルがアンヴェイルされて素顔のすずが歌うシーンが圧倒的に素晴らしく、細々した脚本の欠点はすべて帳消し、もうこれだけでこの映画には鑑賞する価値があると(一時は)確信しました。心配していた声優としての演技も、もちろんぎこちなさはあるが申し分ない。だが、そのあとの展開があまりにしょぼいうえに現実離れしていて完全に肩透かし。あそこまで盛り上げといてこの終わり方はないだろー、という感じでした。そこらへんはここで厳しく指摘されている。

 この書き手のように「危険」とまでは言わないが、確かに家庭内DVという社会問題への対処としてあまりに杜撰すぎるし現実的でない。大の大人が5人も雁首揃えながら、まだ高校生の主人公がひとりで東京に行くのをただ見送るだけのはおかしいし、あんなことでDVオヤジが逃げ出すのも不自然、少女の行動は現実の何の解決にもなっていない。それまでは圧倒的なヴィジュアルと演出、そして歌の力で素晴らしく壮大で繊細なファンタジーを描いていたのに、現実に着地しようとした瞬間に、現実のちっぽけさにも見劣りするような空虚な絵空事の世界に縮小してしまう。いやー、なんでこうなるかな……

この論考では、「それが細田守の作風、哲学なんだからしょうがない」と言ってますが、擁護としては無理がある気がします。


 中村佳穂の歌や演技、そして声だけながら圧倒的な存在感は素晴らしい。それだけでなく、ちょっとディズニーに寄りすぎている感はあるが、仮想空間内の「美女と野獣」を思わせるファンタジーの描写はヴィジュアルも演出もすごい。それだけにラスト・シーケンスだけが本当に残念です。みなさん指摘してますが、細田監督は原案だけ出して脚本は然るべきプロに任せれば全然違ったと思う。『時をかける少女』から『おおかみこどもの雨と雪』まで手がけた奥寺佐渡子が書いていたらどうだったでしょうか。

 ちなみにヴィジュアルはほんとすごいので、これから見るなら絶対iMaxのほうがいいです。(2021/7/27記)

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