[日々鑑賞した映画の感想を書く]『ユダ&ブラック・メシア 裏切りの代償』(2021年 シャカ・キング監督)(2022年1月9日記)

 第93回アカデミー賞で助演男優賞(ダニエル・カルーヤ)と歌曲賞(H.E.R.「Fight for You」)を受賞した佳作ながら、日本では結局劇場公開もDVD発売もなく、日本語字幕付きはレンタルとセル配信のみで鑑賞可能。私はつい先日レンタルの存在に気付き、iTunes(Apple TV)で購入しました。4K版で1500円程度だったから、レンタル(500円ぐらい)よりオトク。

 60年代のブラック・パンサー党の党首フレッド・ハンプソン虐殺事件を巡るお話で、FBIのスパイとしてブラック・パンサー党に潜り込んだ黒人ウィリアム・オニール(これも実在の人物)の話と並行して、その死の真相を描く。いわゆるBLM運動と不可分の人種差別告発映画で、この手の映画の後味はいつもそうだが、白人たちのやり口のあまりの卑劣さにムカムカしっぱなしだった。監督も俳優もたぶんスパイク・リーの傑作『マルコムX』(1992)を強く意識していて、フレッド・ハンプソンを演じたダニエル・カルーヤの教会での説教師のスピーチのような、リズムに乗ったライムのような演説シーンはデンゼル・ワシントン=マルコムXを上回るような迫力とカリスマ性で素晴らしかった。

「解放者を殺せても解放運動は殺せない。革命家を殺せても革命は殺せない。たとえ自由の戦士を殺せても自由は殺せない! I am Revolutionaly!」

 裏切り者ユダ=オニールの葛藤を演じたラキース・スタンフィールドの演技も素晴らしい。

 黒人たちの60年代ファッションや使われる音楽などもかっこ良く、ブラック・ムーヴィーに興味あるなら必見。これを機に日本では古いDVDしか売ってない『マルコムX』の最新マスターによるブルーレイを、無理なら同マスターのレンタルで出してほしいけど無理ですかねえ。(2022年1月9日記)


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