[日々鑑賞した映画の感想を書く]『欲しがり奈々ちゃん ひとくち、ちょうだい』(2021年 城定秀夫監督)(2021/10/2記)

 城定監督作品を見るのは『アルプススタンドのはしのほう』『恋の豚』に続き3本目。今回も大変に面白かった。これまで100本以上の作品を撮っている監督だから、これだけをもって監督の作風云々なんてことは言えないが、3本とも悪人とかイヤな奴が全然出てこないという共通点があって、後味が非常にいい。それを象徴するのが『恋の豚』でも好演していた守屋文雄で、元中日・森繁和コーチと寺島進を足して2で割ったような雰囲気ながら、淡々として飄々としたキャラクターが、他の役者にはない個性。「ま、なんとかなるだろ」という楽観性がいい。

 元は監督が1年に2本撮っているエロVシネマのひとつだそうで、70分の映画をわずか3日で録り終えるという点からも、昔でいうプログラム・ピクチャー的なお手軽量産作品であることは確かだが、脚本も演出もソツがなくて楽しめる。男でも食べ物でも、人のものはなんでも欲しくなっちゃう、という設定の主役の女の子もチャーミングだし、脇のキャラクターも光る。気軽に楽しめるお見事なエンターテインメントでした。「エロ」と言ってもそんなにどぎついシーンはないです。ポレポレ東中野で同時公開(一日おきに上映)している同監督の『扉を閉めた女教師』も楽しみ。(2021/10/2記)

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