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[ライヴ評]TESTSET (2023年7月13日 東京・リキッドルーム)

[ライヴ評] TESTSET (2023年7月13日 東京・リキッドルーム)『しんぶん赤旗』2023年8月7日付

『しんぶん赤旗』2023年8月7日付

 日本のロック・バンド、テストセットのライヴを見た。テストセットはYMOの故・高橋幸宏が最後に率いていたバンド、メタファイブのメンバーだったレオ今井(ヴォーカル)と砂原良徳(キーボード)が中心となって結成された4人組だ。発表されたばかりのファースト・アルバム『1STST』のお披露目ライヴだった。

 アルバムでのシャープでモダンで切れ味のいいファンク・サウンドはそのままに、はるかにパワー・アップした演奏は圧巻だった。打ち込み中心だったリズムは白根聖一による人力のドラムに置き換わり逞しい肉体性が加わって、強力なダンス・ビートとなっていや応なく観客を踊らせる。精密かつダイナミックに展開するバンド演奏は、まるで技術の粋を尽くし高度に設計され組み立てられた最新鋭のF1マシーンのごとき機能美がある。「かっこいい」という形容詞をそのまま音像化したような隙のないハイテクでスタイリッシュな演奏は、ともすれば冷たく機械的と受け取られかねないが、そこに人間味を加えていたのがレオ今井だ。荒々しく熱気あふれるヴォーカルと野性的な動きは、砂原の弾くシンセサイザーのクールな音色と見事に調和していた。

 アグレッシヴでエネルギッシュな演奏の中、ギターを担当する永井聖一が唯一歌った曲では、繊細な声で内省的で叙情的な世界が披露され、いいアクセントになっていた。今後の鍵となるかもしれない。(小野島大・音楽評論家)

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