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[ライヴ評] Rina Sawayama (2023/1/20 東京・ガーデンシアター)

[ライヴ評] Rina Sawayama (2023/1/20 東京・ガーデンシアター) 『しんぶん赤旗』2023年2月10日付けに掲載。

『しんぶん赤旗』2023年2月10日付

 新潟に生まれ、英国で育った音楽家、リナ・サワヤマの来日公演を見た。昨年発表したアルバム『ホールド・ザ・ガール』が全英チャート3位の大ヒットを記録するなど、今注目を集める日本人シンガー・ソングライターである。

 基本は電子楽器を駆使したダンス・ポップ。ふたりのダンサーを従え、卓越した歌唱力とキレのあるダンスを披露する。しなやかに躍動する身体表現も含め、観客を飽きさせずに引っ張っていくパフォーマーとしての動きは水際だっている。緻密に作り込んだショーの完成度も見事。

 彼女はポップ音楽家の社会的責任に対して自覚的であり、自分が持つ影響力によって社会が良い方向に向かうことを願う、と公言する。あなたがあなたらしくいられるように、相手が政府だろうが社会だろうが貫いて、と呼びかけていたが、彼女自身がアジア人として、また性的マイノリティとして差別・疎外され続けてきたからこそ強い説得力を持つ。言葉だけでなく歌で、全身の躍動でそうしたメッセージを伝えるところに彼女の非凡がある。

 この人の歌に出会ったから音楽を始めた、と語り、この日初めて日本語で歌った宇多田ヒカルのカヴァー「ファースト・ラヴ」は感動的だった。次はさらに大きなステージが用意されているはずだ。(小野島大・音楽評論家)

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