「どんとの魂」

ミュージック・マガジン増刊「どんとの魂」

 最近『ボ・ガンボス1989』という貴重ボックスが出たばかりのボ・ガンボスですが、それにあわせ刊行されたフロントマンの故・どんとを回顧する特集号に寄稿しています。ローザ・ルクセンブルグ時代から晩年のソロまで、マガジンのアーカイヴ原稿だけでなく、書き下ろし原稿や最新インタビューなど盛りだくさん。私はレビューを何本かか書いたほか、過去原稿も再録してもらってます。書き手はみな私など足元にも及ばぬ「どんと愛」にあふれていて、私はまさに末席を汚す形となりましたが、本の内容は素晴らしいので、この稀代のヴォーカリスト/パフォーマーの全貌を知りたい方はぜひ。

 生前のどんとにはボ・ガンボス時代に一回だけ取材で会ったことがありますが、「居心地のいいライヴハウスのハコバンをずっと一生やっていたい」という言葉が印象に残っています。当時の私はそういうバンドのあり方がいまいちピンとこなかったんですが、それに気づいたらしいどんとが取材終了後に「どんなバンドが好きなんですか」と訊いてきたので「フリクションとか…」と答えると、「はあ…それはわかりやすい」と返されたのを鮮烈に覚えています。しかしまさかそれから1年もたたずボ・ガンボスが解散するとはまったく想像もしなかったですね。解散したときはかなりびっくりしたし、一生バンドやるんじゃなかったのかよ、と落胆したことも覚えています。それだけにもう一度取材したかったけど。

 私が「マガジン」巻末の日本のロックのレビューを担当していたころがボ・ガンボスの現役時代で、サード以降の数枚のレビューを採点してるんですが、今回再録にあたって読み返してみて、全部8点だったのはちょっとびっくりしました。もちろん当時はそんなこと意識しているはずもありませんが、そういえば別の某バンドのメンバーにも「なんでオレたちのアルバムはいつも8点なんですか?」と詰め寄られたことがありました。その時は適当に言葉を濁したけど、「8点以上の作品も8点以下の作品も作れない/作らないのがあなた方の弱点じゃないの?」と内心で呟いたことを思い出しました。ボ・ガンボスの場合はそのバンドとはちょっと事情が違いますけどね。

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