ライヴ覚え書き(2024/2)

2024/2/28
Oneohtrix Point Never  / Exシアター六本木

 ミニチュアのセットをステージに作り、それをスマホで撮って、実際の演奏風景の代わりにスクリーンに映すというメタ的な、現代アートみたいなヴィジュアル演出は確かにやばかったけど、みんなが言うほどすごいとは思わなかった。なんかサンダーバードみたいで可愛いなーと思ったり。

 やはり凄かったのは音響で、水ももらさぬ緻密かつ完璧な音響構築は、なんかこう、ほかのテクノやエレクトロニカの人とは全く違う、もちろんロックでもポップでもダンスでもなく、やっぱり現代音楽由来なんだろうけど、今まで聴いたことのない体験だった感が強い。なんとなくオウテカの音響アートの世界を思い浮かべたりもしたが、隣の人の顔も見えない真っ暗闇で行われるオウテカのライブとは全然印象が違う…ということは、やはりヴィジュアルのもたらすものは大きいってことなのかな。

 で、オレが思ったのは、これを完璧に再現できるオーディオ環境を整えたいってこと。たとえばエリック・ドルフィーやザ・フーやフェラ・クテイの生演奏を自宅で再現しようと思っても、音源を使う限りは絶対無理だけど、OPNは、かなりその場で加工してるにしても、ラップトップの中の音源である限りは、環境さえ整えればかなり近いところまで再現できるはず。機材、部屋、音量などいろんなファクターが絡んでくるし、この日のexシアターと同じ環境を家庭で完璧に再現するのは全く現実的ではないにしろ、近いところまでは行けるのではないか?ちなみにこれがダンスミュージックだと、踊ってる客の熱気とか踊ってる揺れとか不確定な要素が絡んでくるから、音響的な環境を整えても難しいと思う。でもOPNは、みんなせいぜい体を少し揺らしてるぐらいだし。

 そんなしょうむないことを考えるのは私がオーディオマニアの端くれだからですが、そう考えるといろいろ今後の努力目標ができたような気がするわけです。

2024/2/25
The good Kids @CLUB QUE

  3度目のライブ。最初から完成されてるバンドだったけど、3度目ともなると演奏もショウの進行も非の打ち所がなく、さりげなくメッセージを含むエンタテインメントとして(今日の歌詞引用は岡林信康)、完璧な出来だったと思う。なにより演奏者たちが楽しそうで、それが伝わってくるのがいい。ゲストのTOSHI-LOWの使い方も言うことなし。トシロウさんの座持ちの良さは日本一ですね! あとはなるべく早く音源を出して、もっと大きな会場でのライヴを見たいところですね。

2024/2/11
渋谷クアトロで、5バンド出演のイベント。
Ghost like girlfriend
WOLVEs GROOVY
アツキタケトモ
First Love is Never Returned
ベランダ

   WOLVEsの途中から最後まで見た。始まる前は長丁場で体力気力が持つか心配だったが、面白くて最後まで飽きずに見られた。ヒップランドミュージックがやってるディストリビューター「フレンドシップ」が主催するイベントで、全部フレンドシップ取り扱いのバンド。アツキタケトモだけは事前に音を知っていて、取材もしたことある。ほかは全く予備知識ゼロ。全くの新人というより、インディペンデントとしてある程度実績がある人たちだと思う。

    そのアツキタケトモは、ソロになってからは3度目のライブで、私も観客を相手にした演奏は初めて見た。シンガーソングライターとしてとても才能があって、ポップでキャッチーな良い曲を書き歌も上手い。ライブは手慣れてるという感じではないが、懸命なパフォーマンスは好感が持てる。なによりバンドの演奏がとてつもなく上手くてびっくり。特にドラム。先日の君島大空合奏形態、Qubitの対バン見た時にも思ったが、今の若いミュージシャンは皆ほんとに上手い。こと楽器技術という点では前世代のミュージシャンとははっきり隔絶していて、「新世代の新しい感性」なんて曖昧なものじゃなく、はっきりと数値化できるような技術の高さが、世代の違いを明確に画している気がしたし、それが音楽そのもののあり方やセンスを決定づけているんじゃないか。そしてそれがここ数年の音楽シーンの最も大きな地殻変動だったんじゃないか。古い世代がそれに対抗するにはそれこそ「味」とか、そんな曖昧模糊としたもので勝負するしかなく、ここでも「革命」が進行してるような。

 続くFirst Love〜は、札幌のバンドで、サチモスとかヒゲダンとか、今どきのシティポップスに通じる音楽性。歌がうまいし、曲も書けるし、バンドとしてもよくまとまっていてライブ慣れしてる感じ。非常に完成度の高いバンドで、地元札幌ではかなりの人気だろうと思わせたし、このまま順調にいけばリキッドルームワンマンぐらいはすぐにでも見える感じ。ただこういう音楽をやる人たちは今やいっぱいいるし、これといった強烈な個性や画期的なオリジナリティがあるわけではないので、それ以上大ブレイクするかどうかは、どれだけいい曲を書けて、どれだけ良いライブをやれるかにかかっているだろう。

 最後の「ベランダ」は京都のバンドで2014年結成というからもう10年近いキャリアがあるが、私は全く知らなかった。しかしこれは掘り出しモノ。音楽的にはインディ・ロック〜ギター・ポップ、オルタナティブ、という感じだが、キャラが飄々としてて面白い。なんか下北あたりで地味にやってそうなインディバンドが淡々としたギターロックやってると思ったら、ギターの人が突然大音量でメタルさながらのノイジーでラウドなフレーズを身を捩らせて弾きまくったり、可愛いギターポップのはずがいつのまにかダイナソーJrみたいなやかましいロックになってたり、メインボーカルの男性が、なぜかセンターでなく端っこで歌ってたり、といった感じの、どこかネジの狂ったような、バランスがおかしなロックをやる。それでいて人の良さそうなメンバーはニコニコと楽しそうで、ほんわかのんびりしている。面白い個性だし、見ていて飽きない。このバンドならではのオリジナリティがしっかりあって、次のライブも見てみたい、と思わせるものがあった。先のFirst Love〜が、きっといつも安定したナイスなライブをやってくれるだろうと思わせる、つまりプロなのに対して、ベランダはなんだか得体の知れない、底が見えないところがあるのだ。

 ということで、長丁場で疲れたけど楽しいイベントでした。こういう未知の刺激は大歓迎。ライター講座の旧受講生に久々会ったりして、有意義な時間だった。

2024/2/7
ZEPP新宿でHana Hope、Qubit、君島大空合奏形態

 ミュージックマガジンの2023年ベストアルバムの日本部門のトップになった2バンドの対バン。マガジン社の主催なのか名前貸してるだけなのかは知らない。

 Hana Hopeはあちこちで評判を聞くので楽しみにしていた。ポップだし、柔らかいし、可愛いし、華やかだし、歌もいけるし、声もいいし、ステージでのふるまいも好感持てた。でも「誰にも嫌われない」かもしれないが、誰かに熱狂的に愛されることもないのでは、という気もした。それが持ち味であり美点なのかもしれないが、今日はマガジン読者の前ってことを意識し過ぎたのか、よそ行きな感じもあったので、違う場所ならまた違うのかも。もう少し強烈な個性をみたい。

 Qubitはテストセット(まりんのバンド)やメタファイブみたいな感じかと思ったら全然違って、はるかにマッシヴでフィジカルでダイナミックな、バンドらしいバンドだった。ドラムの人(大井一彌)がやたらテクニカルで手数の多いプレイで、バンド全体の印象を決めていた感がある。それにDAOKOのアニメ声のヴォーカル。DAOKOが真ん中で歌うけど、ステージの前に出てくるんじゃなく、後ろの方に引っ込んで歌うのが、このバンドらしいのだろう。映像が大変によかった。

 君島大空。この人はデビュー時からずっと音源は聴いてたし、取材もしたことあるが、合奏形態(バンド)は初めて見た。もうオレは今まで何をしてたんだろうと後悔するほどすごいライヴだった。音源と全然違います。あれだけハードでラウドで、そこらのマスロックも裸足で逃げ出しそうな複雑なアレンジと強力な演奏なのに、君島のヴォーカルが、繊細な文学性とヒッキーなオタク的内向性を伝えるようなか細く優しい声なのに、全然負けてない。どころか、まろやかでいながら強力なパワーを発していて圧倒された。演奏のすごさ、アンサンブルの見事さ、音像の革新性、楽曲の美しさとクオリティなどトータルでみても、英米のロック・バンドのトップクラスを軽く凌駕すると思う。結果としての表現は全然違うが、根本的なところの感性とか発想が長谷川白紙と共通点が感じられたのも興味深い。

 みなそれぞれ面白く興味深かったけど、最後の君島大空があまりに強烈過ぎて、ほか全部吹っ飛んじゃった感がある。ふと思いましたがザ・スマイル(トム・ヨークの)と対バンしても勝てるんじゃないか。互角の条件なら。

2024/2/2
ケミカル・ブラザーズ@ガーデンシアター

いやーケミカル・ブラザーズってホントにプロフェッショナル。

オレもがんばろ。

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