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「拗ねた大人」と負のストローク

心理学にはストロークという欠かせない概念がある。ストロークとは、ある人がまた別のある人の存在を認めて、言葉をかけたり、表情や態度で反応したり、精神的・肉体的にはたらきかけることで発生するふれあいの全てをさす。

ストロークには正のストロークと負のストロークが存在する。正のストロークとは他人に対する肯定的な働きかけであり、挨拶したり、その人をほめたり、笑いかけたりといった互いを肯定するふれあいをさす。逆に負のストロークは、相手をけなしたり、叩いたり、怒鳴ったりといったふうに否定的に働きかけるふれあいをさしている。

そして、ストロークについて知っておくべき最も重要な点は、どのような人間もストロークによる存在認知を必要としており、ストロークが枯渇した人間は負のストロークによる否定的な反応や働きかけでさえ必要とする―――つまり、どんなストロークでもないよりはあることを求められるということだ。



負のストロークは抗議


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△正のストロークには正の、負のストロークには負の返答が期待される



負のストロークのはたらきかけ(他者への否定、自己への否定)は存在否認への抗議として行われる。

たとえば幼児のおねしょは、ストローク(ここでは親とのふれあい)が不足していることに抗議する無意識的な行動であると言われる。自分が抵抗しているということ自体を、この幼児は知り得ない。この「おねしょ」のような存在否認への抗議の傾向は、大人になっても変わらず繰り返されるばかりか、ますます激しさを増す。

たとえば、自分の考え方や進路などを親に否定されて抑圧されている子どもが、どうしようもなく反抗的になって、暴力的だったり反社会的な行動に走るのも存在否認への抵抗と解釈することができる。親が子どもを、自分とは違う考えを持った別個の存在であると認めず、自己の延長として干渉しているということは、つまりその子どもの存在を認めていないということである。

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