憂鬱とアンフェア

不公平に対する敏感さとその人の抑うつ傾向には深い関連性があるそうだ。不公平な仕打ちを受けたから憂鬱になるのか、憂鬱な性質を持っているから不公平に敏感になっていくのか、定かではないが、ともかくこの二つの要素を結び付けて考えることは間違っていないということになる。

そうして考えてみると、たしかに憂鬱な人はいつでもアンフェア(不公平や不平等)の話をしていたりする。これにはいくつか理由がありそうだ。


1.アンフェアを自分の置かれている状況の言い訳にしている場合

自分が苦境にあったとき、その原因を自分に求めるならば「悪いのは」対処をしない自分ということになってしまう。だから、自分が苦境に立たされている原因として世の不公平などをあげつらうことで自責の念から逃避しようとする、ということは十分に考えられる。そして、世の中が「実際に」不公平で不条理であるばかりに、この方法で逃避するならその材料を探すことには困らないだろう。


2.弱者に対する共感性が強すぎる場合

「優しい人は冷たいか」の項目では、苦しみ、悲しみや怒りといった他人の負の感情に対して過剰に共感し、自他の境界線が脅かされてしまう人たち、すなわち「優しすぎる人たち」について書いた。この苦しみや悲しみ、怒りの所有者こそがアンフェアの被害者たる弱者にあたり、彼ら・彼女らに共感するということは不平等・不公平について怒り、悲しむことと変わりない。つまり、他人に対する慈善の心が強ければ強いほど憂鬱に陥る危険性がより濃く出るということになる。

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