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頼まないで不機嫌になる人

前提6.全ての感情はその存在を否認されず、自然に表現されることを求める。抑圧を受けた感情は苦痛、歪められた要望の原因になる。



自分の望みに対する関わり方は大まかに二通りに分けられる。ひとつは、望ましい結果を表明し、可能な範囲でそれに協力するよう他人に求める方法であり、もうひとつは願望を隠蔽し、好ましくない結果が訪れてから不満を態度や言動で伝える方法である。

このような傾向を持った人がそれぞれいるとすれば、前者は自然に要望や依頼を他人に預けて協力を受けられる人であり、後者は控えめで、なるべく望んでいることを口にしない代わりに、いつも好ましくない状態にあり、不満を隠し持っている人である。

頼みごとをしない人は、いつでも他人が自分が望むのと違う行動を起こすので、しだいに常に不機嫌でいるようになり、周囲の人間はこの人の要望を察知して機嫌を取らなければならなくなる。この人の中で封殺された要望は、別の場所で不満のはけ口を求める。暴力的な言動や反抗、ハラスメントといった他者に対する迷惑行為は、もはや原型を留めていない歪められた要望である。



「願望を隠す人、頼みごとをしないで不満だけを表明する人」の行動規範についてまず当たるのは、「助けを借りたくない人」の心理で触れたような「他人の厚意や善意を受け取ること、助けを借りることへの無意識的な抵抗」である。私があなたに服を着せ、食事を与えているという事実とひきかえに服従や奉仕を求める「恩着せがましい愛情」を与えられて育った人は、誰かに頼みごとをしたり、借りを作ることに対しても必ず「服従・奉仕」という代償が訪れることを予感しており、この予感は無意識のうちに負担感覚となって願望を表明することを抑止する。

わたしが自分で望んでいることを誰かに頼まないということは、とうぜん、そのことに協力する人はいないということを意味する。他人にはわたしの望みを推測して、勝手に叶えるという能力はないからだ。

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