絶望する”頭のよい”人たち

特に考え方や生き方について言うと、不幸な人が幸せな人に忠告することなどなにもないと思っていたので、これまで僕は人の生き方とか考え方について積極的に口出ししようと思えなかった。アドバイスというのは何かができる人ができない人に対してするもので、自分自身を満足させることもできない人がどんな人生論・幸福論を語っても嘘にしかならないからだ。だけれど、不幸な人が幸せな人に”忠告”する場面というのはしばしば目にしてきた。


僕のまわりには僕よりも本を沢山読んでいて、僕よりも頭のよい人が沢山いる。彼らは人生、愛とか幸福といった多くの人が興味を持っていることに対して往々にしてシニカルで、古今東西の書物を引っ張り出して引用して「かくなる理由で生きることは不毛で空虚で孤独なものなのだ」と主張することができる。なるほど、頭のよい人が書いた文章を頭のよい人が引用しているのだから正しいに決まっている。人生は空虚で孤独なものなのだろうな、と思う。

僕は彼らに対して「考えを変えてほしい」と思っているわけではない。なぜなら彼らは自分たちが考えたいように考えているのだし、そしてそう考えるに値する論拠を僕よりももっと説得力のある、古今東西の賢者たちのソースから継ぎはぎして大成しているからだ。揺るぎない哲学といっても相違ない。

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