中毒とは、好きなものを失うこと
アルコール中毒は遺伝するそうである。遺伝すると言っても、文字通り遺伝子を介して子々孫々に伝わるということではなくて、アル中の父親に育てられた娘が結婚し、夫が呑まないように強く抑制した結果、本当に中毒になってしまうというふうに行動を介してのことだ。
中毒、というものについて考えるとき、僕は人間にもともと「自己破壊欲求」と呼ぶべきものでも備わっているのではないかと邪推してしまうほど、人間を負の方向に走らせる強いエネルギーを感じることがある。
しかし、この問題についてもこれまでと同じ方法で考えてみよう。
あなたは何かの中毒、あるいは依存状態になったことがあるだろうか。アルコール、ギャンブル、ネット、ゲーム、薬物、人間、何でもいい。人が何かに拘泥し、もはやそれ自体で自分を苦しめんとするばかりに依存しているさまを見ると、よそからやってきた得意顔の人が、「あなたは甘えている」とか「欲望を制御できない未熟な人間だ」などと言われる。
だが、本当にそうだろうか?己の胸に問いかけてほしい。中毒になって何かをしているとき、もはや止めたい、なんで続けるのか自分でも分からない、と思いながら続けているとき、あなたは心から楽しいと思っていただろうか?
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