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その肘が背中に刺さるのは

冷たい雨が降っている。
そういえば後半の三連休は雪なんていつだか見た気がする。
まだまだ令和の天皇誕生日と言われても0223はピンとこない。
まぁ平成の1223も最後までピンと来なかったんだけれども。

昨晩は呑む。
呑むというよりも話す。
馬鹿みたいな話や、懐かしい話。
一週間溜まったガスを抜く。
ストレスで全体的に軋みがあるなぁと感じることがある。
何かで発散できるならそれが一番。

帰宅しようと思ったら、電車が止まっていた。
短い区域だけの運行停止だがそこに該当していた。
一時的なものだろうけれど、再開は未定。
帰れないわけじゃない。
都心部に行けば行くほど迂回経路は網の目のようにある。
久しぶりに振替輸送というものを利用した。
何かの切符を発行してくれるのかと思ったらカードを見せるだけだったんだけど、人数が多い分わりと適当で、はいどうぞーみたいに改札を通してくれる。大変だなぁと思いつつ、混雑した電車に乗り込んだ。

いつもとは違う乗り換え。
それにしても大きな駅ほど少し目を離すと見たこともない景色に変化している。あそこにあった階段はもうなくなって、通れなかった通路が開通している。よく立ち寄ったスタンドコーヒーもない。そもそもそこがどこなのかもわからない。
振替輸送の乗り換えとかハラハラするなあ。
しかもこっちは少しお酒が入っているのだよ。ほほほ。

どこかで時間を潰して待つ手もあった。
それも良かったかもなぁなんて。
連休前だから人は多い。
今が夏場だったらそうしたのかもしれない。
やけに肌寒いから外は無理で、良い喫茶店でもあればとも思った。
一人で酒を呑むのはあんまり考えつかなかった。
わざわざ振替輸送で混雑している電車に乗るよりも喫茶店でぼんやりしてもいいだろう。
そんなことを考えながら気付けば振替輸送の改札に辿り着いていた。

あっちでもいいなぁとなんとなく考えることは出来る。
それでも人込みの中では立ち止まることは出来ないから何も変わらない。
意思を持って自分の進む方向を決めないと人の波に流されていく。
よし、こうしようと決められなければ結局流れに乗っているだけ。
決定的に自分はこうしたいというものがなかったのだろう。
恐らく人はほとんどがそうやって何かに身を任せる。
自分の意思でここにいくと決められなければそうならざるを得ない。
なりゆきまかせ。
立ち止まることが出来ないような場所にいれば個は埋没して、集団の一部になっていく。

いや当初の予定になるべく近い答えを出しただけとも言えるか。
帰宅するという目的がそもそもあって、経路が変わっただけだ。
一度決めたことを自分の中で覆せなかっただけだ。
混雑した電車の中でごりごりと肘を当ててくる奴がいて、肘がたまたま弱い部分に当たっているものだから痛くて体勢を変える。
別に肘をわざと当てているわけではなくてスマフォで少し激しめのゲームをやっていてフリックするたびに肘が動いているだけだった。
も、もうちょっと静かなパズルとかないんすか?と思いつつ。
コーヒー一杯の余裕のない自分が悪いのだと思うようにする。

狭い日本そんなに急いでどこに行く。
帰宅後の予定があるわけでもあるまいに。
寒い日は仕方がない。
誰だって足早になるのだから。

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