波の中にいる

今まで生きてきた中で、一番優しかった人ってどんな人だった?

そんな質問をする時間があった。
とても面白いなあと思ったのは、殆どの回答が自分を叱ってくれた人だったこと。
僕としてはそれはとても意外なことだった。
世の中の雰囲気が強制している優しさとのギャップを感じたからだ。
イメージと個人的な体験とに違いがあるということだろうか。
だからといって安易に人を叱れる世の中ではなくなっているのだけれど。

悩んだりすること。
苦しんだりすること。
そんなものはなければいいと思うけれど。
現実には衣食住満たされていても、どこかに生まれ出てくる。
そして、それは生きることでもあったりする。
悩んでいることはネガティブに捉えられがちだけど。
そうやって生きていくのだと思えば必要なことでもある。
大いに苦しみ、大いに悩む。

生きていれば機嫌が悪い日だってある。
子供の頃は家族にぶーたれて機嫌の悪さをそのまま表現していたけれど。
大人になれば周囲に気を使って見せられなくなる。
仕方のないことだ。
でもだからこそ僕は僕に機嫌の悪さをぶつけてくる人がいれば、心地よくはないけど受け入れる。
ご機嫌な日がまたやってくると知っているし。
何よりも僕以外の前で不機嫌をお披露目できる人なんかそんなにいないこど知っているからさ。

そうやって波があるから面白いんだもの。
僕はとても面白いよ。
僕なりに悩んだりもしているけれど、その波の中にいれば、僕だけにある波ではないこともわかるから。
ああ、そうだよなって。
たぶん、皆がそうなんだろうなって。

ギャップってのはあるのだ。
波があるから人間だもの。
好不調、ご機嫌不機嫌、苦しみ悩み。
いつかどこかで。
ああ、あの人は優しい人だったなってさ。
誰かが思ってくれてたらそれでいいや。

波の中にいる。
うまいこと波に乗ろうなんて思わないことだ。
なんせ、僕自身が波なのだから。

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