見出し画像

オンライン多めの現代で"お祭り"をアーカイブする

文化庁メディア芸術祭高知展で試みたこと

2022年1月に高知市で開催された「文化庁メディア芸術祭高知展 ニューツナガル」という展覧会イベントに、運営事務局の一員として参加していました。

文化庁メディア芸術祭高知展「ニューツナガル」
会期:2022年1月13日(木)〜1月25日(火)
会場:高知市文化プラザかるぽーと
観覧料:無料
主催:文化庁
運営事務局:株式会社テレビマンユニオン

このイベントは年間1〜2件のペースで文化庁の主催で開催されている「文化庁メディア芸術祭地方展」という枠組みの中で実施されたものです。
今回僕が参加しているチームでこれの運営事務局業務を請け負ったのは4回目です。
こういう仕事をやるときには毎回それなりに新しい試みにもチャレンジするわけですが、今回のイベントの中で特に大きく意識したことをメモしておこうと思います。

あ。
念のためにあらかじめ書いておくと、この仕事はチームでやった仕事なのでその中で試みられた様々な実行はチーム内や発注者と議論して協力し合いながらやったものなので、当然ながら僕一人の成果ではありません。
その上で、このnoteに書いてある文章は僕個人の理解で書かれています。この文章になにか問題があるときはそれは僕の責任なので、そういう点を見つけられた方は僕個人までご連絡ください。

ニューツナガルなオンラインアーカイブ

今回試みた中で重要だと僕が考えているのは、大きく以下の二つです。

  1. イベントの実施だけでなく制作段階でも「オンライン」を多めにする

  2. オンラインで実施した内容やプロセスを面白く「アーカイブ」する

特に「オンライン」という要素がわかりやすいですが、これらはもちろんコロナ禍での色々な状況変化と関係しています。
会場である高知市に事務局社のある東京など(僕の場合は静岡ですが)の遠隔地からそうそう頻繁には行けない状況で、オンラインによる制作方法や発表方法を確立することは制作者にとっても協力者にとっても鑑賞者にとっても重要だと考えました。

かといって、「完全オンラインイベント」ということでもありません。
展覧会やイベントなどに「可能な範囲で」オンライン的な方法を採用し、それらを「可能な範囲で」アーカイブ(=記録)するということが、今回試みたことの主要な関心でした。

で。
その観点で実際に今回残せたオンラインなアーカイブを並べると、以下があります。

公式Webサイト内記事「いま、つながる、を考える」

オンライントークイベントの記録動画

今回のイベントのために作られた作品のメイキング動画

これ以外にももちろんSNSとか公式Webサイト内での展示作品の紹介とかは残っていますがそれらはあくまでも作品の基本情報とか広報告知情報の類で、アーカイブ自体を読み解くことで面白かったり知識を得られたりといった中身があるのは上記くらいです。

改めてこうして並べてみて自分で気がつくのは、「元々アーカイブするつもりで企画したもの以外はアーカイブできていない」ということです。
こうしたイベントを制作する中では当初の予定になかった面白いことや素敵なこともたくさん起こるのですが、それらを記録してあとに残る、それ自体に面白みのあるアーカイブとしてまとめることはできていないなと思いました。

僕も参加している今回の事務局チームは、母体がテレビドキュメンタリーの制作会社です。
この会社の人たちはよく「回した?」というようなことを言います。
回すというのはカメラを回すということを縮めて言っていて、要は「撮影したか?」ということです。
撮影してさえいれば後で編集して面白いアーカイブにすることもできるかもしれないけれど、撮影していないものはどうにもならないぞ。というわけです。

「じゃあ何もかも撮影したらいいじゃないか」と思うでしょうか、事務局員として他のこともやらなければならない中では、それはなかなかに難しいわけです。
元々なんらかの形で編集してアーカイブすることを前提に企画されている部分についてはそのための撮影その他の方法で記録を取ろうとするけれど、そうでない部分については何を撮ればいいかもわからない中で撮影するというのは難しいという、まあ、考えてみれば当たり前のことでもありますね。

オンラインなら、「回っている」よ

一方で、はじめからオンラインで実施した事柄については、オンライン通話アプリなどで録画さえしておけば基本的には「全てを撮影」しておくことができるわけです。
今回実施した中では、オンライントークイベントなどははじめからその想定がありました。リアルタイムに配信したオンライントークなのですけど、そのアーカイブ動画はそのままにしておけば後からだって見返せるわけです。
それから、はじめから外に出すというつもりなわけではないオンライン活動、例えば「オンライン会議」の模様なども、とりあえず録画ボタンを押して撮っておくことは可能です。今回の中では、メイキング動画の中などでその録画素材を使うことができました。

実は僕自身が芸術祭のような「お祭り」をアーカイブしたいと思う動機は、自分が住んでいる島田近辺で地域の活動やイベント、文化活動などをアーカイブする方法を考えたいなと思っているからです。
各地の色々な地域がそうであるように島田にも様々な面白い活動をしている人たちがたくさんいますが、それらはSNS上などで断片的に誰かのつぶやきや告知などが残ることはあっても試み全体やあるいはその一部でも後から見返せて他の人たちが参考にしたりできる形で面白くアーカイブすることは本当に難しいです。

イベント全体をオンライン動画配信したりすることはそれなりに費用もかかるし大変なことですが、それも、ちょっとだけ勉強して小規模なものはイベント実施者の人が自分でカンタンに実行できるようにしたり、またはそこまでいかなくてもイベントのためのオンライン会議の模様を「この会議は面白くなりそうだぞ」と思ったときには会議参加者の許可を得て録画してみたりといったことは、地域の活動の中でもできるところもあるのじゃないかな。

…というようなけっこう当たり前のことに、一年かけた大仕事の果てに改めて気がついたというお話でした。

※追記:

この記事では、意図的に「面白いアーカイブ」という言い方をしています。
「アーカイブ」という単語には人によって色々な捉え方があって、例えば情報学とか文献学とかのアカデミックな領域では「面白い」かどうかは重視せずに淡々と記録された一次情報を重視する場合もあるのだと思います。

それはそれで地域のアーカイブとしても重要な面もあるのですが、今回の記事の中では、編集され、それ自体が「面白いもの」としての側面を持つアーカイブについて、思ったことを書きました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?