腹が減っているのに米が炊けていない。

 腹が減っているのに米が炊けていない。冷蔵庫には刺し身と肉が入っている。たしか鰻も入っているはずだ。鰻の産地は覚えていない。鰻は甘いタレを身体に入れるための当たり判定に過ぎない。よって、現時点において産地は問題ではない。米はあと10分ほどで炊きあがる。お腹がぐうとなっては、呼応するようにおならももぶうと出る始末。一体何なんだ、この状況は。私は断じて面白い音がなる楽器などではない。ただお腹が空いているだけなのだ。そしておならがくさい。少しだけ開けた窓から空気が入り込みカーテンの形をふわりと変化させた。これにより室内の気体が撹拌され、くさい状況はいくらか改善された。空腹は満たされないままだ。さあ、私は米を何で食べようかと考える。「何で」と問うたら箸とか、口になってしまう。早急に質問を改めることにする。私は米と一緒に何を食べよう。素晴らしい問いを立てることができた。あとは逡巡してから決断するだけで良い。簡単だ。肉は焼かないといけないので却下した。しかしお腹的には肉が食べたい。正確には米と一緒に肉を食べたい。――果たして、本当にそうなのか。私は焼き肉のタレを身体に入れたいのではないだろうか。そして米は当たり判定にすぎない。米が炊きあがりピーという音が聞こえた。お腹がぐうとなり、おならがぶうと出る。面白い楽器から発せられた音色は美しく織り上げられ、宴はいつまでも続いた。

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