【コラム】引き心地を良くした方法◎

引成りは良かったはず

竹弓の成り・張り顔に注目することは多いですが、引成りにも注目するともっと面白い世界が開けてくると思います。
張り顔がいい弓を引いた姿を動画で撮ると、
「お!この弓の引成りはいいな〜」と惚れ惚れしてました。

過去形です。そう、惚れ惚れしていたのです。
張り顔から想像するに、あそこは真っ直ぐになるな〜とか、反りが深いからあまり曲がらないのか〜と勝手に弓の限界を決めていたのです。
ひとたび気になると、今の引成りでは満足できなくなりました。
今回は引成りを求めた結果、引き心地も良くなったお話をします。


弓の原則

弓は”しなり”で矢を飛ばします。
しなった弓が復元するときの速度が矢飛びに直結します。
円満にしなった時、弓の性能を100%引き出すことができるのです。
あなたの弓、98%くらいで止まってる可能性があります。

さて、弓の原則の話です。
外見でも分かる通り、中心から末弭・本弭にいくほど細くて薄くなっているのが分かります。これは絶対の原則です。

日常生活でも分かると思います。
太さが同じ棒を曲げても”しなり”には限界があります。
しかし、端にいくほど細い棒は上記の棒よりもしなってくれます。
さらには?より少ない力でしならせることができて、”しなり”が大きいほうが復元力もあります。

ほんとに細くなってる?

原則は理解してもらいました。
あなたの竹弓はほんとうに原則通りになってるでしょうか?
見た目じゃ全く分かりません。
弓右衛門は気にしたことすらありませんでした。
まさかそんな!?という衝撃をすら覚えました。

工房から帰宅後、すぐにノギスを取り出しました。
そして、常用してる竹弓の幅を測った結果、衝撃の結果となったのです。
そう、購入した後に何もしていなかった弓右衛門の竹弓は原則通りになっていませんでした。

日頃からやっていたこと

弓右衛門は日頃から竹弓のデータを記録しておりました。
このように内竹の節ごとに幅をまとめておりました。
(もちろん、厚みもまとめてあります。)

どうでしょうか?
一見すると握り節を中心にして、端にいくほど細くなっていることが分かります。
これが完全に油断でした。

※幅や厚みをまとめておくと、次の弓を購入する時の参考になりますので、みなさんもやってみるといいです。意外と面白いですよ。

節だけを見てはいけない

端にいくほど細くなる原則を忘れてはいけません。
握り節からセンチ単位でノギスを動かしていき、値が変化をチェックしていきました。
少しずつ細くなっていってますが、あるところで値がプラス方向に動いたのです。節の部分が広くなっておりました。

節と節の数値を見ると幅は狭くなっている
しかし、節の前後だと幅が広くなっている、という結果だったのです。
節を超えると、また先細りになっていっています。
少しだけ広くなっている部分、ここが気になるようになりました。それからというもの、良い引成りだと思っていた竹弓、、、広くなっている部分だけ良く曲がってくれないことが気になってきました。

「節の部分は削りが甘くなるから、前後の幅を確認する、ヨシ!!」

弓右衛門

記録に残すことの重要性

節の前後で幅が変わっているということは、
今まで記録していた節以外でも幅が違うかもしれません。
そう思って、さっそく全ての節の幅と上下5cmの幅を測りました。
節を挟んで細くなっていない節は黄色セルにしてみると、、衝撃の事実!
ほとんどの節で幅が広いという結果に!?

これは大変よろしくない!
すぐに調整しなければ!!

とある弓での節と節前後の幅の記録

鉋で0.1mm(片面で0.05mm)を削る技術を持ち合わせてはいません。
小刀と紙ヤスリを使って、丁寧に時間をかけて調整していきました。

弭はどうする?
切詰めまで細くしてもダメなんですね。
弭も同様に細くしていかないと、両端に重りがある状態になります。
イメージはモーニングスターです。
関板は特に硬いので、根気よく削るしかないです。

些細な削りが及ぼす影響

上下に向かって細くしていきます。
ここで問題に直面します。
そう、切詰め籐です。
上下の切詰め籐を巻き直すのって面倒ですよね。たかが数センチ、削らなくても大丈夫でしょ!って思ってたら、とんでもない!
そこを削らなかったせいで、全然動かずに引成りが丸くならなかったのです。大三での引き始めが硬いのです。

ここで言及してるのは幅の話では無いです。(幅は細くします。)
村取りで内竹を削るときは切詰め籐に隠れてる部分まで削りましょう。切詰め籐を外して内竹を削って、さぁ終わり!!ではないのが竹弓の奥深い世界。
さらには関板の部分も同じように削らないといけません。ちゃんと削りました。

切詰め籐の下と関板を削ったところ



関板まで削ると削らないとでは引き始めに影響を及ぼします。
あれ?なんか引きやすくなったな〰と感じます。さらには淀みなく曲がってくれるので、途中で強弱の感じ方が小さくなります。
うん、これは結果的には成功でした。

このように、横着をすると悪い方向に反応しちゃいます。
手間をかけてあげると、良い方向に反応してくれます。
ささいな工夫、時間を惜しまずにやってあげてください。




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