『弓ごよみ』を読んで思ったこと

敢行されてる竹弓関連の書籍で人気TOP3は以下の3冊といっても差し支えないでしょう。

『弓に生きる』
『弓ごよみ』各編含む
『紅葉重ね・離れの時機・弓具の見方と扱い方』

これら3冊はどれも素晴らしい内容ではありますが、昨今では入手難易度が高く、読む機会が少ない書籍もあります。

今回は入手しやすく読みやすい、最初の1冊にぴったりな『弓ごよみ』について紹介します。

基礎知識

松永重宣氏(次男)は松永重児氏を父に持つ弓師です。
父も弓師で、肥後三郎を世に生み出しました。
弓師として「松永重宣」「松永宣斎」の銘の弓を残しております。

書籍の紹介

『松永宣斎 弓ごよみ 増補編』著 松永重宣
『松永宣斎 弓ごよみ 余滴編』著 松永重宣
の2冊があります。
弓具店でも購入できますが、公平にアマゾンのリンクを貼っておきます。
※増補編の前に初版がありましたが、加筆されてるのみになります。

増補編

弓師 松永重宣先生が今後の日本弓道会の発展のため、弓つくりのやり方や弓の取扱いについてを詳しく説明している書籍になります。
弓打ち・弓の材料や道具など竹弓を使われている方はもちろん、今後使いたいと思っている弓道家へ向けた竹弓の参考書です。

余滴編

弓師 松永重宣先生が今後の日本弓道会の発展のため、弓ごよみを刊行してから10年、増補版で伝えきれていなかった分を「余滴編」として先生が伝えたい事をまとめた書籍となります。 弓打ち・弓の材料や道具など竹弓を使われている方はもちろん、今後使いたいと思っている弓道家へ向けた竹弓の参考書です。

肌に染み渡る先生の言葉

竹弓の扱いをお店経由でしか知らなかった弓右衛門にとって、この書籍の言葉の一言一句がすんなり入ってきました。
かなり以前に『弓に生きる』を購入していましたが、導入部分から読む気がおきずに積本状態でした。
当時は肥後三郎の凄さを知らなかったのが原因だと思います。

時が経ちまして、運良く肥後三郎(といっても弱い&貰い物)を弓を入手してからしばらくして、先生より松永重宣銘の弓もあれば購入しておいで、と言われました。
なかなか手に入りません。諦めてかけていました。
本書籍とはそんな時に出会いました。

当時はそこそこ竹弓の扱いと見方に詳しくなってきたと自負しておりましたので、読み進めるのに苦労はありませんでした。
言葉の意味が理解できれば、内容も理解できるのです。

そう、この本を読み進めるためには単語の意味を知っていることが必要なのです。
最初の一文はこうなっています。
「新年が来ると、2日にニベ弓の初打ちをする。・・・」
次の文はこうです。
「正月からの寒い間は、竹の油抜きとヒゴ竹焼きが主な作業だ。・・・」

ニベ弓ってなんだろう?油抜きってなんだろう?ヒゴ竹焼きとは?
これが分からないと、どんな作業を行うのかが全く想像できないから、読み進めることを困難と感じるかもしれないな、と感じました。

書籍の構成

いきなり分からない単語があっても諦めずに読み進めると、そのうち解説がやってきます。
最初は新年からの文章でスタートして、弓を打つ工程を一通り説明しています。
その後に材料、道具、扱い方と読み進めるごとに理解が進んでいき、内容がすっと入ってくる構成になっている。
あたかも映画のような最初に謎が展開されて後から謎が解き明かされていくような、「ああ、そういう意味だったのか!」というスッキリとした気持ちにさせてくれるような構成になっているのです。
最初でグッとお客さんの心を掴む、つい時間を忘れて読み進めてしまう魔力があります。
文量もちょうどよく、2時間もあれば読めるページ数というのもありがたい点です。

身につく知識

竹弓に対する考え方を学べたことが非常によかったです。
幸い、弓右衛門は良きお店と出会えましたので、扱い方については使っていけばある程度は知識があり”全く知らなかった!”ということはなかったです。

竹弓デビューしてから日が浅い人にとっては扱い方の参考になるかもしれません。
弓具店でも教えてくれない内容がありますので、まずは真似てみることですかね。

あまり興味のない人にとっては扱い方と張り方くらいしか参考になる部分がないです。
作り方や矯正の仕方、出木になる仕組みだと、そういった知識欲を満たすような内容を興味がない人には刺さらないだろうな、と感じてます。
反対に、知らないことがあるとモヤモヤする、新しいことを知りたい人にとってはスポンジを水を吸うかの如く知識を吸収できるので、世界が広がる感覚があります。

ただ、矯正をするにしても矯正する弓がなければ実践できません。
張り方にしても、成りに問題がないならば、わざわざ試すこともありません。
知識は増えるけど、実践経験を増やす機会がないのです。
そうなるとどうですか?新しい弓が欲しくなってきますよね?

決意を新たに

ああ、弓師さんは
こんなことを考えながら弓を打っていたのか、
こんなことを考えながら修理をしていたのか、
こんなことを考えながら自分の弓の使われ方を見ていたのか、、
これらを知ることで、竹弓をもっと大切に扱おう、もっと知識を吸収しよう、もっとふさわしい射手になろう、と決意を新たにすることができました。


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