【弓道教歌】教師の心構え

指導者としての心構えを詠ったものになります。
今では先輩諸氏の背中を見て学ぶことが多いですよね。
参考になるもの、やってはいけないこと、その他もろもろ存命してる方々に教えてもらっています。
歌は今は亡き先達が遺してくれたものであり、”先生”といっても過言ではありません。


1 吉田、大和

数々の 道をきゝおく 師匠こそ
    弓をそたつる 父母(ちちはは)となれ

(歌意)
種々の道をきゝ覚えておく先生こそ、父母は子を育て立派に成人させる様に門弟を教え育てゝ、立派な射手となし、又弓道を発展向上させる父母ともなることができる。

(感想)
いろんな考え方を聞いて勉強する先生は弟子を育てることもできるし、弓道を発展させることもできる。
その通り、立派です。
頑なに昔の考え方や行動から変わらない人もいます。最近ではハラスメント関連も注目されてますね。
子は親を見て育つ、弟子は師を見て育つ。


2 竹林、大和

数々の 道をきゝおく 心こそ
    道を育つる 道となりけれ

(歌意)
種々様々の事の道理など、人の云う事を聴き覚えておく心掛が、やがては人を教え導く方法を扶(たす)ける便法となる、との意。

(感想)
人から聞いたことはいつか誰の役に立つ、そんな内容ですね。
相手の感替えを否定するのではなく、そういう考えもあるのか、と頭に入れておくことも役立つかもしれませんね。


3 竹林

みな人の その師を学ぶ ものなれば
     おのが弓かたち 大事なるべし

(歌意)
師たる者の心構えを訓(おし)えたものである。弟子は、師の射形射法を、善悪の区別なく真似るものであるから、師たる者は、常に自分の射形に注意して善射を行うように益々修行を積まねばならない。

(感想)
グサっときます。初心者さんや後輩には変な射は見せられないから精進します。
昔は師の教えは絶対、の風潮はあったようですから、今とは違いますね。
今は教える人の影響は多少は受けるでしょうが、全部を真似ることは無いような気もします。
むしろ、ここは駄目なとこだから参考にしないで、って言っちゃいます。


4 吉田

人毎に 其師(そのし)をまねぶ 心あり
    己が射形ぞ 大事なるべし

(歌意)
同上


5 竹林

弓はたゞ ならひのまゝを おしへなば
 医書計(ばかり)よむ
  薬師(くすし)なりけり

(歌意)
教師の心得を詠んだものである。弓道について、自分が教えられて習っただけの事を、そのまま受け売り式に後輩や弟子に伝え教えるのは、医師が医書だけを頼りにして病人の診療に当るようなもので、経験に乏しく実力のない教師は極めて心もとないものである。

(感想)
◯◯
先生が言っていたよ、という内容をそのまま伝える人っていますよね。
自分に対しての指導内容が他の人に合ってるのかを判断せずに、そのまま伝達しては駄目ですね。もちろん、共通する内容もあるので、全部自分のところからアウトプットしないのも駄目です。
そこの見極めは難しいところです。
竹弓でも同じことです。原則はあるにしても、弓ごとに扱い方が変わります。
経験は非常に大切ですね。


6 吉田

弓は唯 習ひの侭を 教へなば
医書計見し 薬師なりけり

(歌意)
同上


7 本多

誰人も 出気る射業の 出来ざるは
教ゆる人の 咎にぞありけり

(歌意)
門弟を指導していて、誰でもできるような射業(標準的な進歩)ができない門弟があるとすれば、教師の教え方がまずいと云うべきであって、それは教師の責任である。

(感想)
不甲斐ない弟子ですみません、って謝りたい気分になりました。
この歌は教師が見るものであって、弟子が見てはいけませんね。もし弟子が見て、師への責任転嫁を考えるならば、その考えも駄目でしょうね。
受け取る人によって解釈が変わる、面白い歌だと思いました。


8 吉田

武士(もののふ)の 精兵(せいひょう)なると 仁義禮(※)
信のみたずは 射手にてはなし

(歌意)
※禮・・・礼の旧字
武士は、能く鍛錬して矢継早に弓勢強く中りが精密であり、仁義禮信の人の履行(ふいおこな)うべき道が備わった者を射手と云う意である。

(感想)
練習して、技術もあって、的中もさせて、人格も問題なし、という完璧超人であれ、という武士への教訓ですね。
弓勢はあるとあるが、強い弓を引くとはないので、ここが技術を備えよ、ということでしょうね。


9 大和

難面(つれなく)も 打ねじけつゝ 望むとも
知らぬ心の 奥をよく知れ

(歌意)
難面は強顔(つれなし)であり、気が強く素知らぬ顔をして薄情であることを云う。
打ちねじけはすねること。
弓道の大事は、弟子が1回や2回尋ねても教えず、心の奥底まで知りえない内は薄情であっても教えるな、容易に伝える時は道を粗略にするものである、との意である。

(感想)
大事というのは秘伝やコツのこと?とすると、
大事なことは自分でちゃんと解釈して理解・納得するまでは弟子に教えないようにしましょう。薄情だと思っても我慢するように、という教訓だと思いました。
教えることは簡単ですが、考えさせることも大切です。その塩梅を見極められるようになりたいです。


以上、教師の教えについてでした。
皆さんの感じたことを是非コメントしていってください。


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