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右腕に炎を纏った話👾

太陽が不思議と生き生き輝いているように見える夏のある日、中学生の僕は、実験の授業を化学室と呼ばれている部屋で受けていた。

今日の実験には、火を扱う工程があり、
僕達の班は、そこでガスバーナーを扱うことが決まっていた。
アナログ人間の僕からしてみれば、アルコールランプなどの方が嬉しかったが、決まってしまったものは仕方がない。

実験が進み、問題の工程に差しかかった時、
同じ班の人は手が空いておらず、僕がガスバーナーを扱うことになってしまった。
機械に弱く物覚えも悪く鈍臭い僕は、ガスと空気のネジ調整で案の定手こずり、
苦労の末、いよいよだなあと思いつつマッチに火を付けた瞬間、
目の前一面に炎が広がり、その炎が僕の右腕に駆け上って来た。
驚きと共に咄嗟に腕を振るうと、目の前の炎も右腕の炎も消えていた。

不意に訪れた身の危険に、心臓が忙しない訴えを起こしているのを感じつつも、現状を整理しようと思考を巡らせると、
僕の鈍臭いガスバーナーの操作によって空気中にガスがバラ撒かれ、そこに引火した
というのが事の顛末であると気が付いた。
こんなことになるのならば、無理に一人で火を付けずに他の人を頼れば良かったなあと後悔と反省の念を抱きつつも、一つ気になったことがあった。

炎が僕の右腕を駆け上り、腕で燃え上がっていた時に、
僕は右腕から、『サラサラな液体がうごめいているかのような感触』を感じた。
最初これが炎の感触なのかと思ったが、だとすれば僕の右腕は今頃真っ黒焦げである。
なので僕は、一連の現象はひょっとしたら勘違いや錯覚なのかもなあと思い、改めて無事だった自分の右腕を触ったところ、

右腕だけ、産毛が燃えて全て無くなっていた。

もし今日が冬で長袖だったらどうなっていたのであろうか。
夏の暑い日に一人だけ冷や汗をかきつつ、実験の続きに取り掛かる僕なのであった。


動画版はこちら。

真面目でお堅い話や哲学的で重めな話は文章の方が良くて、
笑える小話は身振り手振りや声の強弱でリアクション出来る分動画の方が良い
と考えていたので、面白系エピソードは雑談傑作選という小見出しと共に動画で出していくプランであったが、
読者や視聴者の方々は、一体どちらが好みなのであろう。
てんで分からないので、これからは両方出すことにする。
エピソード話の記述が不慣れ過ぎて、一人称でも三人称でも拙い文章になる予感がするが、これからの改善をお待ち頂けたら幸いである。

イタチ