反中層こそ評価すべき立憲・枝野氏の「北京政府」発言
産経新聞が報じた立憲民主党党首・枝野幸男氏の発言が話題になっています。
立憲民主、枝野氏名義で中国共産党100周年に祝意
枝野氏は「『北京政府』(中国政府)とわが国は物理的に避けられない近い距離にあり、その政権を担う政党に対する儀礼的なメッセージは党国際局で用意している」と語った。
内容は、枝野氏が記者会見で中国共産党100周年に祝意を表す儀礼的なメッセージを送った、というもの。
そして、この記事に対するTwitterの反応は悪い意味で予想通りでした。
案の定「枝野幸男は中国共産党を支持しているんだ!」と勘違いした方々による残念なリプライが並んでいます。
何故かツイート本文では省略されてしまっていますが、記事をしっかり読めば枝野氏が香港やチベットなどへの人権侵害問題にも触れていることが分かるはずなのですが……。
もっとも、産経新聞もそういう層を狙って敢えて勘違いさせるようなタイトルをつけているのでしょうが、与党議員が問題を起こしたことを報じる記事に「全文を読め」「マスコミの偏向が」と口うるさく指摘している方々が今回は全く現れないのが不思議ですね。
そろそろ本題に入りますが、今回の件で最も注目すべき点は産経新聞とその読者の問題ではなく、枝野氏の発言に登場したとある単語です。
もう一度、枝野氏が記者会見で語った内容をおさらいします。
枝野氏は「『北京政府』(中国政府)とわが国は物理的に避けられない近い距離にあり、その政権を担う政党に対する儀礼的なメッセージは党国際局で用意している」と語った。
ここで登場した
『北京政府』
という単語。
これは、産経新聞が意味を分かりやすくするために「(中国政府)」と補記している通り中国政府、より正確には中国共産党政府を指すものです。
中国は中国共産党が一党独裁体制を敷く国家ですから一般的には
中国政府=中国共産党
という認識が広まっています。
では、何故今回の記者会見で枝野氏はあまり聞き慣れない「北京政府」という単語を使用したのでしょうか。
まずは「北京政府」がどのような意味を持つのかを知る必要があります。
みんな大好きWikipediaで調べてみると、こう書かれています。
台湾に中央政府を置く中華民国に対し、北京を首都とする中華人民共和国を指す換喩。
実はこの「北京政府」とは、台湾(中華民国)に対する中国(中華人民共和国)を指す単語なのです。
現在、中国共産党は「一つの中国」という主張を掲げています。
これは、中国共産党が実効支配する中国大陸の大部分のみならず独自の主権を持つ香港やマカオ、そして台湾に
至るまで全てが「中国」という統一国家であるとする考えです。
すなわち「一つの中国」を掲げる現在の中国では、
首都の北京に存在する政府=中国政府
となります。
中国の指導政党は中国共産党唯一つであり、香港や台湾には正式な政府が存在しないという立場をとっているからです。
これは香港・マカオ・台湾の主権と独立を認めないという中国共産党のメッセージでもあります。
例えば、日本では首都東京に存在する政府が国家を代表する正式な政府として「日本政府」を名乗っていますが、これは国内に日本国からの分離独立を主張する政治勢力が存在しないからこそ支持される概念といえます。
仮に、岐阜県が「我こそが正当な日本国である」として既存の日本国からの分離独立もしくは政府転覆を目指して活動を始めれば、自らの政府の正当性を主張するために東京に存在する日本政府を名乗る勢力は「東京政府」と呼ばれることになるでしょう。
話が逸れてしまいましたが、要するに今回の枝野氏の発言には中国共産党が主張する「一つの中国」に関わる重大なメッセージが込められているのです。
普通なら中国共産党を中国(香港・マカオ・台湾を含む)の代表として無難に「中国政府」と表現すれば済むところを枝野氏は敢えて「北京政府」という単語を使って
「中国共産党はあくまで北京に存在する政府でしかない」
ことを明確に示しました。
これは「一つの中国」に対する挑戦であり、同時に台湾等に独自の主権、すなわち北京政府とは別の政府が存在することを表します。
この姿勢のどこが「中国共産党を支持している」のでしょうか。
むしろ、中国共産党の一党独裁を非難し、香港の主権や台湾の独立を支持する層ほど今回の枝野氏の発言を評価すべきなのです。
党派性を最優先して真の敵から目を逸し「野党は反日だから中共の味方に違いない」という偏見を信じ続ける彼らの姿勢は、中国共産党による抑圧と弾圧を助長させることにも繋がります。
どの政党を支持し、嫌うかは個人の自由ですが、党派性に拘り過ぎて盲目になってしまっては世の中を良くすることは出来ません。
彼らが一日も早くそれに気付くことを願うばかりです。
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