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「満福神社」公式Twitterアカウントの政治発言は何が問題だったのか

Twitterの一部界隈で、とあるアカウントの政治発言が炎上……という程でもないですが、少々物議を醸しています。

https://www.asahi.com/articles/ASP4N6V01P4NUHBI014.html
すごいな本当に言ってる
「政権批判をする記者がSNSで攻撃されている」
「(菅政権は)報道の自由の雰囲気を改善するために何もしていない」
報道の自由のためと称して
政権に対しSNSでの記者批判を封殺せよと求めてる
なに書いてるのかわかってるのか
すごすぎます朝日新聞


このツイートを投稿したのは東方Projectの二次創作アニメ「幻想万華鏡」の制作で知られる満福神社(@manpuku_jinja)という同人サークルのアカウントです。

東方BGMのアレンジで有名な某サークルとタッグを組んだオリジナルアニメは数ある東方二次創作作品の中でも指折りのクオリティを誇り、東方ファンからの人気や知名度も非常に高い「超大手」サークルの1つ。

その絶大な人気はサークル公式アカウントのフォロワー数が5万人を超えていることからも伺えます。

かく言う自分も東方を知ったきっかけは中学時代に友人から見せられた幻想万華鏡と某東方アレンジサークルのタイアップ作品でした。

その後色々あって東方にハマり、今では新作が発表される度に遠方で開催される即売会に参加して体験版を入手するまでになっています。

正直な話、東方との出会いに幻想万華鏡が深く関わっている者として、思い入れのあるサークルをこういった形で記事にするのは非常に心苦しいものがあります。

ですが、今回の件についてはかなり贔屓目に見ても満福神社公式アカウント側に問題があると判断せざるをえません。


言い訳のようになってしまいますが、自分は満福神社公式アカウントの政治発言の内容そのものを否定的に扱うつもりはありません。

当該ツイートのリプライや引用RTには「記事の内容を正しく理解していない」といった指摘も見られますが、この記事は主張の正誤ではなく、あくまで主張の発信方法についての問題点を指摘するものです。 

以上を理解した上で続きをお読みください。


1.まず、今回の件は何が問題なのか。

既に説明した通り、満福神社は同人サークルです。

一口に同人サークルと言っても千差万別ですが、メンバー数で区別する場合は複数のメンバーが参加するサークルと、一人のメンバーのみで構成される個人サークルの2種類が存在します。

東方Projectを制作する「上海アリス幻樂団」はメンバーが東方の原作者でもあるZUN氏一人で構成されるため後者に分類されますが、満福神社は個人サークルではなく、複数のメンバーが所属しています。

個人サークルであれば「メンバーの考え」はそのまま「サークル全体の考え」になりますから、サークルの公式アカウントの発言もまた「サークル全体の考え」として扱われることになります。

しかし、前述した通り満福神社は個人サークルではないためサークルの公式アカウントが発信する内容はメンバー全員か、もしくは大多数の意向に沿ったものを慎重に選ぶ必要があります。

サークルのアカウントはあくまでもサークル全体の利益ために存在しているのであって、アカウント運営者個人の私的なモノではない、言わばサークル全体の共有物だからです。

ですが、実際にはサークルに限らず企業や団体等のアカウントのほとんどは担当に選出された少人数によって運営されるのが一般的で、たった一人の人物に任せきりというケースも珍しくありません。

そして、このような状況で発生しがちな問題が「アカウントの私物化」です。


その最たる例はTwitterのシャ●プ公式アカウントですが、満福神社も例外ではありません。

プロフィール欄には「中の人は制作・脚本等担当トミー咲。」と書かれていますが、今回の発言は恐らく彼による個人的な主張でしょう。

満福神社に所属しているメンバーの正確な人数は分かりませんが、アニメを制作しているくらいですから少なくとも10人以上は関わっているはずです。

彼がツイートごとにメンバー全員に内容を見せて投稿の是非を確認しているとは考えにくいですし、メンバーにもそれぞれ異なる思想があるはずなのにサークルや作品の広報に利用しているアカウントで政治的な内容を含むツイートを投稿するのは、大問題とまでは言いませんが如何なものかと思います。


アカウント最大の目印となるアイコンはトミー咲氏が描いたものではありませんし、代表作の幻想万華鏡も彼一人で制作したわけではありません。

そもそも、幻想万華鏡という作品自体が東方Projectの「非公式二次創作アニメ」です。

そして、5万人超のフォロワーも、そのほとんどはサークルの活動や作品の情報を得るために満福神社公式アカウントをフォローしているはずです。

言い方は悪いですが、彼の今回の行動は

東方Projectや幻想万華鏡の人気を政治利用した


と受け取られても仕方ない行為だったと思います。



ちなみに、東方Projectには二次創作のガイドラインがありますが「原作コンテンツや二次創作物を利用し、個人の思想を発信する行為」は禁止事項として明記されています。
参考:東方Projectの二次創作ガイドライン


この項目に抵触しそうな二次創作作家や同人誌をいくつも知っているだけにトミー咲氏だけを責めるつもりはありませんが、超大手サークルとしてそれなりの自覚は持って欲しいです……。

ZUN氏にも間違いなく認知されているわけですから。

2.では、どうすれば良かったのか?

この問題の解決策はとても単純です。

トミー咲氏が満福神社公式アカウントとは別に、個人名義でアカウントを開設する。

プロフィール欄に、個人アカウントの発言は満福神社公式アカウントとは無関係である旨を明記する。


たったこれだけのことで全てが丸く収まります。

しつこいようですが、今回最大の問題点は発言内容そのものではなく発信方法です。

本来はサークルと作品の広報に利用すべきアカウントを私的な主張の場として利用したことが問題なのですから、サークルの公式アカウントとは別に「トミー咲氏本人の」アカウントを開設してしまえば、そこで何を発言しようがそれは個人の自由です。


トミー咲氏は件のツイートに対してファンから苦言を呈されたことを「言論の封殺」と強い言葉で表現していますが、これは不適切です。

ファンの方はあくまで「サークルのアカウントでそういう話題を扱うのはやめて欲しい」「自分のアカウントでやって欲しい」といったアカウントの運営方針への問題提起を行っただけであり、発言内容そのものを否定しているわけではないからです。

もしも、彼が個人的なアカウントを開設し、そこで同様の主張をした際にフォロワーや部外者から発言内容を非難されたのであれば、それは立派な「言論の封殺」と言えるでしょう。

つまるところ、彼が誰にも邪魔されずに自由な発言をするには、サークルのしがらみから離れるのが最適解なのです。


今回のまとめ

問題は発言内容ではなく発信方法。


東方Projectの原作コンテンツや二次創作物を利用し、個人の思想を発信する行為は二次創作ガイドラインで禁止されています。


個人的な主張は個人的なアカウントでやろう。

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