【知財法務入門 基礎からわかる知財③ 知財と契約③各論OSS編】

第1 OSSとは

 OSSとはオープンソースソフトウェアといい,無償で使用できるソフトウエアのコードともいえるでしょう。実際のプログラミングではコードを記載していくことになりますが,ソースコード,オブジェクトコード,プログラミングと用語はややこしいですが,しっかり押さえておくことが,そふ「特許権」「著作権」の分野では重要になってきます。

 OSSにはWordPress,Linux,Apache,TensorFLOW(これは機械学習やAIの分野ではよくききますよね!)といろいろあります。オープンソースソフトウェアにはライセンス(利用許諾契約)を締結する必要があります。これは無料で英語なのでスルーしがちなのですが,米国では訴訟にもなりかねない重要な契約といえます。

第2 種類

1 コピーレフト型ライセンス 

 もっとも強力なライセンスで①改変部分のソースコードの開示,②つなげた他のソフトウェアのソースコード開示を義務付けているライセンスです。

 具体的なのはGNU Affero General Public License(AGPL) Version 3 (通称GPLライセンス,GPL3)と言われています。

・ライセンシは、ネットワーク上で OSS を使⽤してサービスを提供する際、対応するソースコ ードをネットワークサーバーからサービス提供先に開⽰しなければならない

・ライセンサが差別的な特許契約を締結した際、ライセンシにも当該特許契約が付与される

・ライセンサは、配布する OSS に⾃⾝の特許が含まれる場合、ライセンシに対して当該特許を 無償でライセンス付与しなければならない。 

といった大量の要求事項が含まれています。(ほかにもいろいろあります)

ちなみに従来のGPLとの違いは1,第 13 条にあるネットワーク経由で実⾏される OSS を対象とした要 件だけでGPLv3 と同じです。

ちなみに準拠法の指定はありませんので,国際私法の解釈によっていくことになると考えられます。これはVrginia 州で Uniform Computer Information Transaction Act(UCITA)と呼ばれる、ソフトウェ アライセンスなど IT 関連の取引のあり⽅を定めた法律が制定され、ライセンサがソフトウェアに関する責任を完 全に放棄することが禁⽌され,多大な影響を与えたことによります。(Python License の事例です。)

 他にもEUPLというのも存在します。

2 準コピーレフト型ライセンス

 これはコピーレフト型,非コピーレフト型タイプの中間的存在で,

・ライセンサに派⽣物にまで同じライセンスの適⽤を要求する点。 

・ライセンサが配布する OSS を、ライセンシが他のソフトウェアと組み合わせた場合、ライセ ンサはライセンシに組み合わせ先のソフトウェアにまでは同じライセンスの適⽤を要求しない 点

が異なることになります。代表的なものとしてMPL,CPL等があります。


3 非コピーレフト型ライセンス

優しい印象のライセンスで,、University of California, Berkeley(以下、UC Berkeley)によ って作成された BSD License と基本的内容が類似する OSS ライセンスのことをさします。

特徴としては

・ライセンシに派⽣物にまで同じライセンスの適⽤を要求しない点。 

・ライセンサが配布する OSS を、ライセンシが他のソフトウェアと組み合わせた場合でも、ラ イセンサはライセンシに組み合わせ先のソフトウェアにまでは同じライセンスの適⽤を要求し ない点

にあります。代表的なものとしてApache License があったりましす。

 しかし注意すべき点がいくつかあります。例えばApache Licenseには,著作権表示や改変時の告知といった一般的に緩い要求事項に加え

ライセンサは、配布する OSS に⾃⾝の特許が含まれる場合、ライセンシに対して当該特許を 無償でライセンス付与しなければならない。 

といった事業リスクを抱えるリスクが含まれていたりします。非コピーレフトだしリスクあんまりないんじゃない?といった油断をしていると,リスクが顕在化しますので,こういったところはしっかり英文を拾ってチェックしたいところですね。

第3 注意点

 基本的にはOSSのライセンスを注意深くみて,どのタイプかを判別した後に用いる必要があると考えられます。特にコピーレフト型の場合,伝播性(ウイルスの伝播性に近いです)をもっていますので,慎重に検討していく必要があるといえるでしょう。

 OS,ライブラリ,ツール,業務サーバーの種類ごとにOSSが存在し,それぞれにタイプに分類できますが若干独特なライセンスが存在するということを頭に入れ,知財リスクを検討していく必要があるといます。

第4 若干の裁判例

 1 米国での訴訟

 Free Software Foundation v. Cisco Systems 

争点:本件は、Cisco Systems 傘下の Linksys 部⾨が開発・提供する製品のうち、少なくとも 10 種類の製品件が、FSF が著作権を保有する 8 件の OSS プログラムのライセンスに違反してい ることが問題

結果:和解

 本件では GPLv2 第 3 条及び LGPLv2 第 4 条で定められたソースコードの開⽰が争点となり,FSF は Cisco Systems による GPL 等の OSS ライセンス 違反は著作権の侵害であるとして、損害賠償及び差⽌め処分を請求していました。法廷が GPL 違反に対しても同様に著作権侵害を認めるかどうかが注⽬をあびましたが和解となりました。

 他にも数件確認できましたが,本格的な裁判例紹介は別に行おうと思います。

2 欧州での訴訟

 欧州での訴訟で有名なのもいろいろありますが,Harald Welte v. Skype 訴訟等が有名かなと思います。これも本格的な裁判例紹介は別に行おうと思います。

3 最近

 最近では国内の事例があまりみつかりませんが,2000-2010年代に多くの紛争を生み,今では実務として定着したかと考えられます。これを機にOSSライセンスを学んでみるのもいいかもしれませんね・・・

第4 小括

 今回は,簡単な解説にとどめましたが,なかなかこういう契約は珍しいかなと思います。しかし,知財と契約はこのようなところにも浸透している1つのいい例なので紹介してみました・・・(少し知財の専門性がでそうなものをやってみたかった。笑)

 次回からは知財の裁判か知財DDの話をしてみようかと思いますが,気が向いたら何か書いていこうと思います・・・




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