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少女革命ウテナ考察2021 第37話

今回は筆者にとっては特に難解だった37話の考察に挑戦します。何度も考察をやり直しました。何度もカンニングの誘惑に負けそうになりましたが、純正培養した考察でなければ意味がないので、ない頭を振り絞って導き出しました。内容が複雑なのでストーリー概略も織り交ぜながら考察を進めることにします。不足の点もまだまだあると思いますが、是非覗いてみて下さい。

第37話 「世界を革命する者」

ー目次ー
①ウテナは王子との約束よりも暁生を選ぼうとする
②ウテナとアンシーの友情が決裂する
③アンシーを信じぬこうと決意する
④ウテナの決意に希望をみるアンシー
⑤二人は革命へと旅立つ

考察 

1.ウテナは王子との約束よりも暁生を選ぼうとする

ウテナの手から薔薇の刻印(指輪)が外され、落とされるシーンから始まる。ウテナは薔薇の刻印は自分には似合わないといって、指輪をつけずに暁生をデートに誘う。暁生とのデート後、アンシーはウテナに「あの城に行けば王子様に会えますよ」と問う。ウテナはそれに「君と出会ってから随分色んなことがあったね」と返す。

冒頭で、ウテナが王子様との約束を放棄し、暁生を選択しようする。デート後の暁生の「今夜の君はなんだかとっても女の子だな」という言葉からもわかるように、この時のウテナは革命者ではなく、王子様に恋する女の子(運命に支配された薔薇の花嫁)として、世界の理に引き込まれてしまっていた。アンシーが「あの城に行けば王子様に会えますよ(ずっと会いたがっていた王子様に会いに行くんでしょう?)」と問うが、ウテナは「君と出会ってから随分色んなことがあった(私は変わってしまったんだよ)」と答え、王子との約束ではなく、暁生との未来を選ぼうとしている様子が表現されている。

2.ウテナとアンシーの友情が決裂する

アンシーがウテナに「お兄様もウテナ様のことが好きなようですね」と話す。ハッとアンシーを見上げるウテナ。加えて「ウテナ様。私たち今の関係がずっと続くといいですよね」と話す。ウテナはアンシーのこの挑発に感情的になり、世界の果てからの手紙を破ってしまう。

なんといってもこの37話で注目しなければならないのが、「アンシーの挑発」である。これは36話で暁生が冬芽にした挑発にも似ていて、「暁生を私から奪えるかしら?」と突然恋敵と化してしまうアンシー。冒頭の暁生をデートに誘うウテナの会話をさえぎって「ごめんなさいね。これは私のものではなくて、あなたのものだったわね」とチュチュと話しているようにして強烈な嫌味の一発をウテナにお見舞いした。そこから攻撃はどんどんエスカレートしていく。そして、この決定的なシーンに続いた。アンシーの「ウテナ様。私たち今の関係がずっと続くといいですよね」という言葉は、(まさか暁生を自分のものにしようなんて思わないでくださいね。あなたは私の王子様を気取っていればいいんですから)を意味していた。ウテナはアンシーのこの挑発に感情的になり、「王子様との約束」を象徴する世界の果てからの手紙を破ってしまう。(私は暁生さんを取る!ということ)このシーンは決定的な友情の決裂を表現している。

3.アンシーを信じぬこうと決意する

アンシーと険悪な関係になってしまったウテナは、バスケットをしながらも、モヤモヤした気持ちを持て余していた。途方にくれていたウテナのもとに幹と樹璃が訪れた。二人は世界を革命するものとして、ウテナがどのような選択をするのかを聞いた。その問いに対してウテナはまったく他人事だった。樹璃はウテナの強さを「自分以外のために命を懸ける点」を挙げて話した。そこにはウテナへの敬意が込められていた。そして「アンシーのこと、すきなんだろう?」と問う。しかし、ウテナは信じていたアンシーに裏切られ、信じられなくなっていた。ウテナがアンシーを諦めかけたその時、七実が「バカじゃないの!?」と会話を遮る。「あなたはお節介すぎるのよ!馬鹿なのよ!」と忠告する。この七海の一言で吹っ切れたようにすがすがしい表情をするウテナ。幹も樹璃も七実も、ウテナに憧れ・惹かれている様子であった。光さす校庭でひとり、気高くたたずむウテナがいた。

ここまでの話を、ウテナの立場で振り返ってみると非常につらいものがある。薔薇の掟によって物のように扱われていたアンシーを守り抜いたつもりでいたが、懸命に守っていたアンシーに裏切られてしまった。そして、アンシーと今まで築いてきた友情や信頼に亀裂が生じてしまったのだ。そんなウテナのもとに訪れた幹と樹璃に、世界を革命するのかと問われるが、目的を見失ったウテナにしてみれば革命など他人事である。そして、アンシーを諦めかけたその時、七実の「バカじゃないの!?」「あなたはお節介すぎるのよ!馬鹿なのよ!」という言葉に心境は一転する。「自分は思い込みが激しく・お節介で馬鹿なところが強みなんだ」と気が付くのだ。吹っ切れたウテナはアンシーを信じ抜くことを決意したのだ。幹も樹璃も七実も、そんなお節介で馬鹿なウテナに憧れ・惹かれているのだった。光さす校庭でひとり、自分が進む道を確信するウテナが印象的である。

4.ウテナの決意に希望をみるアンシー

二人がお茶をするシーンで、ウテナはアンシーに将来何をしたいかと話題にする。するとアンシーが話をさえぎるようにして「カンタレラ」という毒の話題をだし、ウテナの食べたクッキーに毒を入れたように話した。アンシーの挑発に一瞬固まるウテナであったが、ウテナはあっさり挑発を受け流してしまう。そして、逆に将来何をしたいかときかれたウテナは、アンシーと10年後も一緒にお茶をしたいと話した。二人は手を重ね、笑いあっていた。

このシーンは特に筆者が力を入れて考察したところである。まず、アンシーの毒入りクッキーは、険悪になっているはずの二人の関係においては冗談にできないほどたちの悪い発言である。しかし、アンシーを信じぬくと決めたウテナは、それを軽い冗談として受け流してしまう。このとき、画面右上に赤い薔薇のマークが表示されるが、これはアンシーの心を表現している。つまり、これだけの嫌がれせに屈しないウテナに、アンシーは何かしらの動揺を見せているのだ。そして、将来どうしたいのかと聞かれた時、ウテナは即答で「10年後も二人でお茶をしたい」と言った。暁生との未来ではなく、アンシーとの未来を語ったウテナ。アンシーは、度重なる嫌がらせを続けていた自分をなぜ大切にできるのかと動揺し、困惑し、心動かされたのだ。ウテナが「10年後もお茶をしよう」と話したとき、画面右上にはまた赤い薔薇のマークが表示され、アンシーの心が動いていることを表現している。また、その場面に二人の姿がないことに注目したい。これは、アンシーがウテナの言葉から「二人がこの世界から抜け出した未来」を想像したのだ。つまり、「ウテナならこの世界を革命できるかもしれない」と一瞬だけ将来を夢見たのだ。そして、ウテナとアンシーは手をかさね、10年後を約束する。

5.二人は革命へと旅立つ

どんなに傷つけても自分を信じぬこうとするウテナに対する自責の念から、アンシーは身投げ未遂をする。そんなアンシーにウテナは「逃げるのか!」と激怒する。何度もなんどもウテナに謝るアンシー。翌日、ウテナは世界を革命することを決意する。冬芽と西園寺が「そんなに王子様にあいたいのか?」「本当の友達がいると思っている奴は馬鹿だ」といって、ウテナを引き留めようとするが、ウテナは「王子様に会うだけじゃないさ」といって薔薇の門へと歩みを進める。ウテナを待っていたアンシーの手には、以前ウテナによって破り捨てられた世界の果てからの手紙があった。アンシーはその手紙を差し出し、「まだ間に合いますよ?(暁生との未来も選択できますよ?)」とウテナに問う。しかし、ウテナは指にはめた薔薇の刻印をアンシーに見せ「行こう」と言って革命へと旅立ったのだ。

アンシーの身投げ未遂事件は、アンシーの心をウテナが動かしたことを表している。二人の会話や真相については38話で語られるため、このシーンの考察も次回にするが、この夜の出来事が二人の心に何かしらの変化をもたらしたのは間違いない。ウテナは薔薇の門へと歩みを進める理由を「王子様との約束」だけではなく「アンシーを救うため」としていた。アンシーが手にしていたテープでつなぎ合わされた手紙は、ウテナとアンシーの関係を表現している。また、薔薇の刻印を指にしたのは「王子様との(アンシーとの)約束を守る」ことを意味している。

あとがき的なもの

だいぶ長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださってありがとうございました。今回は大変でしたが、純粋に「考察してよかった!」と思いました。少女革命ウテナのすごいところは、表現の意図がよくわからなくても何となくストーリーは見れてしまう点にあります。つまり、意味が分かっていないのに分かった気になって見終われてしまう作品です。しかし、考察するほどに発見があり、感動は大きくなりました。何度もなんども考察を繰り返し、最後に納得いく内容にたどり着くことができて本当に良かったです。

また次回も考察を続けていきたいと思います。

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