『連続殺人鬼カエル男』を見ていたら、今のコロナウイルスの問題にも通じるものがあった話

突然だが、私は今U-NEXTで『連続殺人鬼カエル男』というドラマを見ている。
立て続けに起こる猟奇的な殺人事件と、その犯人を逮捕すべく奮闘する刑事たちの姿を描いた物語だ。

犯人は、まるでカエルの実験をするかのように次々と猟奇的な殺人事件を起こしていき、人々から「カエル男」と呼ばれるようになる。そのため、かなりグロテスクな描写も多い。私はそういう類いのものがめちゃくちゃ苦手なので、本来であれば見ないジャンルのドラマだ。
しかし、それでも私がこのドラマを見ようと思ったのは、主演が工藤阿須加という私の大好きな俳優だからだ。
顔良し、性格良し、演技良し。こんなこと言ったら各方面から怒られそうだが、彼は私の理想の結婚相手なのである。
そんなもんだから、そのドラマも心臓をバクバクさせながらなんとか見ている。
ちなみに、私はかなり遅れてドラマを見始めたので、今テレビで放送されている内容には到達できていない。U-NEXTを使って頑張って追いつくつもりだ。そのため、私が知っている物語の内容には不足している点もあるかもしれないが、そこはご了承いただきたい。

さて、なぜ今回この記事を書こうと思ったかというと、私がこのドラマを見ていて、現在世界的に大きな問題となっているコロナウイルスの件と似ているな、と思ったことがあったからだ。

ドラマの中で、犯人(「カエル男」)は常人には理解できないほど残酷な方法で次々と人を殺していく。そのため、「犯人は普通の精神状態ではない、精神異常者なのではないか」という憶測が飛び交うようになり、人々は不安と恐怖を募らせていく。
そして、犯人の手がかりが掴めず苦戦する警察に、人々は怒りをぶつけるようになる。
警察署に直接来て訴えかける人がいたり、警察の車にカエルの死骸を置く嫌がらせがあったりする、という場面があった。
そこで工藤阿須加演じる古手川の上司、渡瀬(鶴見辰吾さん)はこんなことを言う。

「怒りは恐怖や不安の裏返しだからな。犯人に対する恐怖を、それを捕まえられない警察に怒りとしてぶつけたんだ。よくあることだ。」

さらに、犯人が精神異常者ではないかという憶測が原因で、ひきこもりの人や、精神疾患を持っている人の個人情報がネットで晒される、という事態にまで発展してしまう。

この内容を見て、「もしかしたら、コロナウイルスが原因で起こっている問題も、これに近いものがあるかもしれない」と私は思った。

コロナウイルスという得体の知れないものによって、次々と感染者が出て、亡くなる人も後を絶たない。明確な治療法もない中で、人々は「自分もいつ感染するか分からない」という不安と恐怖を抱いている。
そんな状況の中で、人々はその感情をどこにぶつけるのか。きっとそれが、武漢の人や中国人、さらにはアジア人になるのだ。
人々の恐怖や不安は、「コロナウイルスは奴らのせいで蔓延したんだ」という怒りになり、そして直接的な攻撃へと変化する。実際に欧米では、中国人やアジア人への差別的な言動もあるようだ。

しかし、よく考えてほしい。ウイルスに感染した人がむやみに動くことで、さらに感染が広まってしまったことは否めないが、だからといって全ての中国人やアジア人が感染しているわけではもちろんないし、攻撃していい理由にもならない。
コロナウイルスの感染が武漢から始まったという、ただそれだけの理由で、武漢に住む人、中国人、さらには日本人や韓国人なども含めたアジア人が差別の対象となってしまったのだ。
もともと欧米ではアジア人に対する差別意識も少なからずあるし、それが今回のことに拍車をかけたのかもしれない。

それはドラマでも同じで、「ひきこもり」や「精神疾患を持つ人」という、いわゆる「普通ではない人」に対して、人々は常日頃からどこかで差別意識を持っており、「カエル男」の事件をきっかけにそれが一気に爆発したのだ。

また、ドラマでは「カエル男」を捕まえられない警察も攻撃の対象となるが、それは今回の場合、「コロナウイルスへの行政の対応」にあたるのだろうか。
もちろん、多くの人が命がけで患者の対応にあたっていることや、なんとかこの事態を変えようと知恵を絞っていることは理解しているが、明確な治療法がない中でどうしたらいいか分からない人々は、様々なところに「対応が悪い」「どうしてくれるんだ」という攻撃の言葉を投げつける。
確かに、海外旅行客の受け入れを完全にストップしなかったことも、今回の感染拡大の原因になっていることは否めないし、私も正直「何やってんだ」と呆れてしまったが、それを関係ない人にまでぶつけるのは違うんじゃないか。

例えば、マスクが不足しているという状況の中、ドラッグストアの店員さんに文句を言う
人がいたようだが、これは明らかに相手を間違えているし、そんなの店員さんにどうにかできる問題ではない。マスクを大量に買い占めて高値で転売する一部の不届き者のせいで、何も悪くない人たちが攻撃されなければならないのはあまりにも理不尽だ。

こんな風に、得体の知れないものに対する不安や恐怖は、やがて怒りへと変わり、特定のグループに対する差別や攻撃を助長するのだ。

人は冷静さを失うと正常な判断ができなくなり、普段ならやらないことも平気でできてしまう。そしてそれを正当化してしまうのだから、本当に恐ろしい。
不安になる気持ちは十分分かるし、私もニュースを見るたびに、「自分もいつ感染するか分からないな、怖いな」と思う。
しかし、それを理由に誰かを攻撃することは許されるべきではない。私たちに今できることは限られているけど、とにかく自分の身を守ることに努めて、正しい情報を収集し、そして何より最前線で頑張っている人たちを応援することが大事なのではないだろうか。
そして、自分の中で膨らんでいく恐怖や不安をコントロールして、それが他者への攻撃に変わらないように冷静さを保つということも忘れてはいけない。

突如として現れた得体の知れない恐ろしいものによって、人間の本性がむき出しになり、ぶつかり合うことにつながってしまったのは本当に悲しいけど、その一方で温かい言葉や物資の支援など、人間だからこそできる助け合いの場面も多くあった。
私自身も人間としてこの世に生まれて25年経つけど、正直人間ってめんどくさいなって思うし、先の見えない人生に絶望することもある。
それでも、人間として生まれてきたのだから、それなりに生きなければならないのかな、しゃあないけど、っていう感じで生きてる。
人間として生まれてきたからこそ得た能力を、誰かを傷つけたり攻撃したりすることに使うのと、誰かを励ましたり救ったりすることに使うのと、どちらがいいか。
こんな大変な時だからこそ、人間が本性をむき出しにしてしまうような状況だからこそ、私は人間が持つ優しさや温かさを信じたい。自分もいつ危険な状況になるか分からないけど、いつか必ず事態が改善することを信じて、この文章を終わりにしたいと思う。

最後になりますが、感染によって亡くなられた全ての方に心からお悔やみ申し上げます。また、現場で必死に戦っている医療関係者の方々、ワクチン開発に奮闘する方々など、頑張ってくださっている全ての方に心から感謝します。
そして、不安を募らせる世界中の人が、一刻も早く平穏な日々を取り戻せますように。その不安が怒りとなって、誰かを傷つけることがなくなりますように、心から願っています。

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